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移転問題で紛糾する築地市場。もし、是が非でも移転を食い止めたかったら?

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 小池知事へと変わり、一旦、豊洲への移転延期が決まった築地市場。報道を見る限りでは、仲卸しの関係者などさまざまな市場関係者の意見を聴取し、土壌汚染について改善されたかどうかをきちんと確認した後に移転をするのではないかという予測が立っています。

 しかし、ウイング車といって、荷台部分がめくれ上がるように開くトラックでの搬出入ができなかったり、築地市場では伝統的に活用されていた海水による市場内の清掃ができなかったり、果てはマグロを捌くためのスペース確保が困難だったりと課題は山積しています。

 仮に、土壌汚染の問題が解決されたとしても、移転について反対の立場を維持する人は多くいるのではないかとも見られています。
 となれば、いったん延期となったものの行政側がシビレを切らして移転に踏み切るという公算もなくはないでしょう。
 その場合、法的手段として移転を食い止めることはできないのでしょうか?

 築地や豊洲を含め、卸売市場の開設および運営はさまざまな法令によって規律されています。卸売市場の整備や適正な運営について規律する卸売市場法、およびその具体的な内容を定めた卸売市場法施行令卸売市場法施行規則などです。
 東京都としては、卸売市場の整備や運営を規律する東京都中央卸売市場条例などがあります。

 例えば、条例の88条などにおいて、知事が使用条件を指定したり、知事が市場施設の使用を誰に許可するかなどの権限をもっているなど、行政のトップ(行政法上は行政庁と言います)が判断する旨が定められています。

 このように法令に根拠があって、それをもとにして行われる行政の活動については、一定の要件を満たせば差し止め請求ということは想定できます(行政事件訴訟法3条7項37条の4各項などを参照)。

 もっとも、行政庁が豊洲移転を強行したとしても、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる」という厳格な要件があり、これを充足しないと差し止めが認められません。

 今回の移転問題で言えば、「重大な損害」が認められるかが鍵になるでしょう。例えば、土壌汚染がまったく解決されておらず、移転すると健康被害が生じることが明白であるというような主張をすることが考えられます。
 しかし、報道を見ると、当初は土壌汚染の問題が懸念されたものの最近の検査結果では環境基準以下の数値となっているため、(仮に差し止め訴訟となれば)認められるかはあやしいものがあると思われます。

 差し止めが叶わず、移転せざるをえない状況となった場合は、移転の決定をひとつの行政処分と捉えて、「処分の取消しの訴え」を提起するということも考えられます(行政事件訴訟法3条2項)。
 もっとも、この手法を選択する場合、「そもそも条例に基づく行政庁の行為が行政処分と言えるかどうか」という行政法学上の問題も生じます。
 さらに重大な課題として、かりに行政処分だとして取消しが認められたとしても、裁判の結果が出るのは訴訟提起から何年も経過した後になります。となれば、行政処分(豊洲移転)後に移転が取り消されたとしても、「どこで市場を運営するのか?」という現実的問題に直面してしまうことになります。

 こうした点から考えると、徹底的に議論した上で市場関係者が納得のいく形で(場合によっては豊洲を改築などして)移転するのが現実的な対応となるのではないかと思われます。

 しかしながら、築地跡地には東京五輪に向けての施設や道路などの整備が控えており、時間的猶予はあまりありません。
 仲卸しを中心に、これまで行政が声を拾い上げることを怠ってきた市場関係者全体との合意形成が図れるか、小池知事のリーダーシップが試されているといっても過言ではありません。

元記事

移転問題で紛糾する築地市場。もし、是が非でも移転を食い止めたかったら?

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