この写真が示す「ガリガリ君」が子供にウケた勝因。女心も掴む巧みな戦略とは?

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この写真が示す「ガリガリ君」が子供にウケた勝因。女心も掴む巧みな戦略とは?

コンビニやスーパーで手に入る、定番の人気アイス「ガリガリ君」。

およそ2ヶ月おきに新フレーバーを発売する企画力や、「コーンポタージュ味」「ナポリタン味」など、斬新な試みにも挑戦する攻めの姿勢が人気を後押ししている。

「ガリガリ君」の開発者で、現在、発売元である赤城乳業・監査役の鈴木政次氏は 『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』(ワニブックス刊)の中で、ガリガリ君を今日のようなロングヒット商品に育て上げた販売戦略を公開している。

その秘密を紐解くために、まずは次の写真を見てほしい。

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■「片手で食べられるかき氷」を作る

「ガリガリ君」の開発は、「片手で食べられるかき氷を作ろう!」というコンセプトから始まったという。当時、氷菓子のトレンドは「カップアイス」であったが、片手にカップを持ち、もう一方の手で木製のスプーンを持って食べる姿に鈴木氏は注目した。

当時、子どもたちを夢中にしていたのは、マンガ本や、コンピューターゲームといった手を使う遊びだ。

「両手がふさがっていると、子どもたちはアイスを食べながら、本を読んだり、ゲームを楽しんだりすることができない。そういう問題点を発見したから、ワンハンドで食べられるガリガリ君を創造することができた」

(『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』68ページより引用)

大人の感覚なら、「テーブルに置けるカップアイスの方が、ゲームがしやすいじゃないか」と考えるかもしれない。しかし、子どもからしてみれば「アイスを食べる数分でさえ、片時も遊びを中断したくない」のだろう。

鈴木氏の読みは当たり、ガリガリ君は大ヒットした。

■ロングヒット商品に育てる上での“大きな欠点”

鈴木氏は、「ガリガリ君」をロングヒット商品に育てた秘訣を次のように語っている。

「理由はいろいろあるでしょう。(中略)ただ、あえて私なりに分析し、人気のいちばんの秘密を上げるとするなら、ポジショニングがうまくいっている点だと思います」

(同書 105ページより引用)

「ガリガリ君」の売上が伸び悩んでいた90年後半に、原因究明のために3万人規模の市場調査を行ったという。そこで発見したのが、「女性から受け入れられない理由」だ。

高校生、大学生、OL、主婦で構成される女性だけのグループが「ガリガリ君」を試食する様子をマジックミラー越しに目視して、ありのままの感想を聞き出す調査を行ったところ、次のようなコメントが得られた。

「味はいいけど私は買わない」

「(キャラクターの)歯茎が見えて汚い。食品に合わない」

「汗が泥臭く、汚い」

当時の「ガリガリ君」のキャラクターは、「昭和30年代のガキ大将」がイメージとされていた。イガグリ頭と大きな口がトレードマークとなっており、ゴリラっぽい風貌だ。

<発売当時の「ガリガリ君」のパッケージ>

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子どもの間で評判はよくとも、世代を超えて選ばれる商品としては「失格」だったのだ。鈴木氏は、多くの世代に受け入れられるイメージキャラクターの刷新と、商品のリニューアルを決意した。そうしてできたのが現在のパッケージだ。

<現在の「ガリガリ君」のパッケージ>

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「ガリガリ君」は、現代アニメ風の3Dタッチに生まれ変わり、キャラ設定も「ガキ大将」から、「おっちょこちょいで、時には失敗もする」という“愛されキャラ”に変更された。

リニューアルに合わせてテレビCMを放送したことで、新しい「ガリガリ君」は全国に知れわたり、2000年の販売本数は初めて1億本を突破したという。

鈴木氏は次のように振り返っている。

キャラクターのリニューアルによって『ガリガリ君』の販売本数が伸びたことで、商品開発に置いて、キャラクターのポジショニングがいかに大切かをあらためて思い知りました。

「その商品は暮らしの中でどんなポジションなのか」「お客さまにとってどんなポジションなら、飽きずに買ってもらえるのか」「今のままのポジションで本当にいいのか」

そんな問いかけをしながら「ガリガリ君」の「ポジション」を意識し続けてきたことが、今のロングヒットにつながっている」

(同書 P114より引用)

◇ ◇ ◇

誕生から35年経った今もなお、幅広い世代から愛されているガリガリ君。その裏には赤城乳業の絶え間ない改良があった。

本書には、その紆余曲折や開発者である鈴木政次氏の仕事術が書かれている。定番商品を作りあげたプロフェッショナルの意見は参考になるだろう。

(新刊JP編集部)

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