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第74回 刑務所の一日(大相撲他)

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 部屋に帰ってきて、4時50分の点呼を受け、食事が終了して6時になるとラジオが入る。さらに7時にはテレビのスイッチが入ることは前に書いた。
 ところが、例外的に早くからテレビを見ることができる場合がある。奇数月に行われる大相撲のテレビ中継のときである。大相撲が国技だからなのだろうか、それとも楽しみのない我々に少しでも潤いをという配慮からかもしれない。

 大相撲が開催されるときに、早い時間からテレビを見ることができるのは、拘置所における大相撲ラジオ実況の場合と同じである。点検が終了するとすぐにテレビのスイッチが入る。5時前ということだ。休日には4時から入る。
 もちろん、チャンネルはNHKにしか合わせられず、他のチャンネルを見ることは厳禁である。

 このように早い時間にテレビのスイッチが入るのであるが、たまに刑務官がスイッチを入れ忘れることもある。おそらくまだ若い刑務官だと思う。
 担当の刑務官の「○○!相撲入れんかい!」と怒鳴る声、それに答える「すみません」という声が聞こえてくる。その物言いは、刑務官同士の完全な上下関係を認識することができるものである。

 さて、受刑者は、強制的に大相撲を見せられるせいか、大相撲に詳しいし、もちろん、それぞれ贔屓のお相撲さんがいて、毎日その結果に一喜一憂している。
 私は、もともと、それほど大相撲に興味はなかったが、やはり他に楽しみもないし、強制的に見せられているうちに、楽しみにはなった。だからといって、出所後も見るというほどではなかったが。
 ちなみに、引退してしまったが、豊真将が好きであった。勝っても負けても、あの礼儀正しさが好きだった。

 昔はテレビに映る真正面に暴力団関係者の偉いさんが陣取り、塀の中にいる組員に顔見せをして、「俺は元気だ。お前も頑張れよ」ということを黙示的に伝えていたようだ。
 服役する前に「きちんと大相撲を見るように、親分が顔を見せるから」という指示も出されていたというような話まである。
 しかし、これが世間の知るところとなり、暴力団関係者は大相撲から締め出されることになった。それだけが原因ではないかもしれないが。

 大相撲は大方6時には終了する。そのように取組間の時間などを調節しているからである。ところが、そのような調節をしても6時を過ぎてしまうことがたまにある。しかし、あと少しで終わるというときであっても、無情にも6時ちょうどにテレビは切られてしまう。
 最後の取組が残るのだから、当然横綱戦である。優勝争いがからんでいるときなどは、各居室からいっせいに「あ~」というため息がもれる。融通が聞かないというか何とかして欲しかった。特別に5時前から見られることだけでもよしとすべきなのか。

 7時から始まったテレビ番組は、おおむね9時5分前くらいには終了する。このころから、あちこちでトイレの水を流す音が聞こえてくる。
 私は、トイレに行くついでに、テレビのスイッチを切り、ラジオのスイッチを入れておいた。テレビとラジオの同時視聴は許されていないからである。
また、ラジオのスイッチを入れるのは、朝の「おはようございます」という放送が目覚まし代わりとなるから、それを聞き逃さないためである。
 もっとも、5時30分ころから、炊場受刑者が台車を押して朝食を持ってくるので、その音で、もうすぐ起床時間だなと分かる。

 9時2~3分前にテレビとラジオが切れ、「本日の放送は終了です」との女性の声でのアナウンスが流れて、電灯の光量がぐっと落ちて就寝となり、一日が終わる。(つづく)

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第74回 刑務所の一日(大相撲他)

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