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「自分の人生を他人に預けるな」──元nanapi CTO和田修一氏のプロアクティブ・エンジニア論 #engineer_moshi

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CTOが守るべきものは、プロダクトとしての正義

CTOの役割はビジネスモデルによっても変わってくる。

「例えばBtoBですでに一定の市場性があるビジネスであれば、CTOは組織を管理することを優先させてもいいと思うんです。反対にBtoC領域で、市場性が皆目見えないという状況では、CTOのクリエイティビティが重要になる。ときにはCEOと対立しても、自分が思うところを貫く必要もありますね」

和田氏にとって理想のCTOが率いる、究極のエンジニア組織とは何だろうか。

「エンジニアなのですから、技術やプロダクトとしての“正義”や“筋”といったものを最優先することがまず重要。もちろん、ビジネスですから売上げも大切。それは当たり前のことだけれど、それを振りかざしすぎるとプロダクトが前に進まない。あくまでもプロダクトとしてはどうなのかということを、エンジニアやデザイナーが議論できる環境。これは絶対になくしてはならないと思います」

技術やプロダクトの論理を優先させる。それは必ずしも、「エンジニアの独りよがり」を意味しない。

「俺はこうやりたい、私はそれをやりたくないというのではなく、このプロダクトはこうあるべきだという論理で議論し合えば、必ず着地点は見えてくるはずです」

組織が拡大するにつれて、CTOの役割が変わるのは当然だ。

「4~5人規模の組織が一番動きやすいと思います。チームが10人以上になると中間管理職のような立場の人が必要となってくる。しかし、十分に人を育てないままマネージャーに引き上げてしまうと、いろいろと問題が生じる。これは私にも失敗の経験があります」

マネージャーは一種の専門職。誰にもできる仕事ではない。その見極めが重要なのだ。エンジニア系と非エンジニア系の職種が混在する組織の場合、両者の職種の壁をどう超えるか、超えさせるかも、CTOの重要な役割だ。

「例えば情報共有ツール。IT/Web業界ではエンジニアが使うそれが最も進んでいると、私は思います。とすれば、非エンジニアの人たちにも、GitHubやQiita:TeamやSlackを使ってもらう。

ちょっとした文章を書くときも、Markdown記法を意識させる。文系出身の社員も簡単なコードが書けるように研修プログラムを作る。一言で言えばエンジニアのやり方に全員が引き寄せるということ。この方が結果的にうまくいく、というのが私の経験則です」

CTOはエンジニアキャリアのゴールなのか?

昨今は、エンジニアの間ではCTOの人気が絶大だ。エンジニアを何年か続けて技術を磨き、やがて社内のトップエンジニアになって、そこからCTOを目指す──そのようにエンジニアのキャリアの最終形=ゴールにCTOという職種を設定する人もいる。

「若いエンジニアがCTOを目指すというのは決して悪いことではない」と前置きしつつ、和田氏はCTOという仕事についてこう語る。

「CTOというのは、経営陣の中で一番技術がわかっている人にすぎない。言い替えれば社内で一番技術がわかっている人ではない、ということ。なぜなら技術の進化は早く、その幅もどんどん広がるので、CTOが常にテクノロジー全体をリードすることなど不可能なのです。

むしろ、自分にはできないことをしてもらうために、自分より優れた人材を採用・育成・活用することができる人、それこそが理想のCTOだろうと思います」

「CTOはもっと採用に関わるべきだ」というのは、和田氏の以前からの持論だ。

「会社の成長フェイズに合わせて、今どんなエンジニアを採用すべきか、採用基準を確立するのはCTOの仕事です。採用時点でのスキルの優劣ではなく、今後、スキルをどれだけ伸ばせるか、その伸びしろを判断するのもCTOの役割になります」

エンジニアの技術的専門性と、優れたエンジニアを採用するための判断は別のスキルだ。従って「CTOはエンジニアの専門性の延長にあるわけでもないし、誰もが惰性でなれるものでもない」。

むしろ一般のエンジニアには求められず、ひとえにCTOに求められるのは、経営へのコミットメントだ。

「CTOである以上、当然のことながら経営の責任を持つべき。経営を意識するひとつのきっかけとして自社株を保有しているかどうかだったりもあります。先日行われた“CTOだったNight”イベントでは、何%持つべきという数字まで提示されました。それはおいておくとしても、日本では自分の仕事のステイタスに応じて、自社株を持つCTOが少ない。そもそも株式の知識が豊富なCTOもそう多くはない。投資家と会うのは自分の仕事ではないと思い込んでいるCTOも多い。これが経営意識の欠如につながっている一つの要因かもしれません」

「自分の人生なんだから、年収交渉ぐらい自分でしなさい」

エンジニア採用の現場を数多く経験した和田氏は、最近のエンジニアの仕事選びについてこう苦言を呈する。

「なんとなく転職する人が多すぎるような気がします。転職エージェントの利用はたしかに選択肢を広げるという意味ではいいのですが、そこに預けすぎちゃう人が多くないですか。自分の人生なんだから、年収交渉ぐらい自分でしなさいと言いたい(笑)。面接は自分の人生を賭ける場なんだから、質問しすぎるぐらい質問してもいいし、もっと議論をしたらいいと思うんです」

一方で、転職は年収を上げる手段であることもたしかだ。

「市場で自分を売るという努力は必要。同時に、自分が市場の“商品”であるという意識も持つ必要あると思います」

最近のエンジニアに見られるもう一つの傾向、勉強会の隆盛についても聞いた。連日どこかで勉強会が開催されている。果たしてエンジニアに勉強会は必要か。

「勉強会で勉強したことが今の仕事に直結し、その人のアウトプットがグンと上がるということはまずありえません。勉強会はあくまでも趣味の延長線上、ぐらいに考えたほうがいいと思います。

行くのはいいし、応援もするけれど、単に勉強会に参加することと、自分から情報を取りに行くことは別のこと。参加者がいずれ発表者になろうとする意思くらいないと、いくら勉強会に出ても、その人のスキルがアップすることはないんじゃないでしょうか。

もちろん、私自身、勉強会を企画することがありますが、他で得られない情報を出そうとは意識している。どこでも聞ける内容を馴れ合いでやるのは意味がない」と手厳しい。

「あなたの20年後はどうなっていると思いますか」

このように、和田氏がエンジニアに求めるのは、能動性(プロアクティビティ)だ。その能動性は、究極のところ、その人のキャリア設計にも関わってくる。

「よく、面接に来る人に聞くんです。あなたの20年後はどうなっていると思いますかって。ほとんどの人は今の仕事の延長線上でしか、将来を考えていない。ただ、実際のところ、いま100人エンジニアがいたとして、20年後も同じ仕事をしている人って、何人いるでしょうか。10人もいないんじゃないかと思うんです。

エンジニアとして仕事を続けることは素晴らしいことですが、これだけ変化が激しい時代ですし、現在エンジニアとしての仕事をしている人がこれから先もずっとエンジニアの仕事を本当にしていきたいのかはちゃんと向き合ったほうが良いと思います。

今の仕事の延長線上から一旦離れて、もっと大きく人生全体をキャリア設計していくということが求められていると思います。現在の延長線ではない、あなた自身の人生計画ってなんですか。私はそう聞いてみたいです」

どちらが本業なのか副業なのか。ロックギタリストとしての別の顔を持ち、週4~5日は10kmを走り、オフの日にはフルマラソンやロードバイクのレース、そしてトライアスロンにまで参戦する、和田氏ならではのコメントだった。

(執筆:広重隆樹 撮影:平山諭)

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