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VOL.28 森岡龍さん(俳優)&前野朋哉さん(俳優)

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『エミアビのはじまりとはじまり』。「死」と「笑い」という相反する要素を溶け合わせた、ちょっと不思議な映画が9月に公開されます。『舟を編む』の脚本家としても知られる渡辺謙作監督が手がけた本作で、漫才コンビ役としてW主演を務めた森岡龍さんと前野朋哉さんにインタビュー! ちなみに森岡さんは「あまちゃん」の若き日の黒川正宗役(アキのお父さんの青年時代)、前野朋哉さんは『桐島、部活やめるってよ』の「おまた〜」もしくはau「三太郎」シリーズの一寸法師と言ったら10割わかるはず! というわけで、よろしくお願いします。

—-おふたりが演じる漫才コンビ「エミアビ」。前野さん演じる海野(うんの)は、冒頭すぐに死んでしまいます。そこからおふたり一緒のシーンは数えるほどしかありませんが、スクリーンに映らない部分でつながりの大きさを感じられる仕上がりになっていました。どのように役作りをしていったのですか?

森岡龍さん(以下、敬称略)「クランクインするまでは、ふたりでずっと漫才の練習をしていました。意外と声を出せる場所が少なくて、渋谷の路地で警備員に怒られたりと練習は大変でした。あ、そういえばカラオケにも練習しに行ってました。そこで『浅草キッド』歌って、歌いながらなんか泣けてきちゃって。あの時に、俺らコンビだ!ってしみじみ思いましたね」

前野朋哉さん(以下、敬称略)「それ、けっこう序盤のほうじゃない?」

森岡「そうか。序盤だったか(笑)」

前野「森岡くんとは事務所が同じでけっこう会ってはいたんですが、密にずっと一緒にいるのは今回が初めてだったよね。朝から晩まで、というのは」

森岡「仲のいい時期もあったんですが、お互いに忙しくなっちゃって最近はずっと会っていなかったから、最初はどう話していいかわからなかったんです。昔の同級生と再会した時のような感じで。それで、CDの貸し借りから始めたんです。HIPHOP好きだったよねって」

前野「うん、最初は探り合いのような感じでしたね。ただ、とにかくなるべく多くの時間を共にしようとは心がけていました。漫才を一緒に見に行ったり、カラオケに行って、飲みに行って、喫茶店に行って……」

—-撮影は過酷だったそうですね。特に森岡さんは、監督が「映画の中で森岡龍を壊す」を一つのテーマにしていたことで、かなり追い込まれた中での撮影だったとか。

前野「森岡くん、追い込まれてたよね」

森岡「ほんとに追い込まれてた。俺、この映画通して性格変わった気がするもの。改造されちゃった、謙作さん(渡辺謙作監督)に。かなりつらかったです」

前野「役的にも追い込まなきゃいけない役だったもんね。ちょっとやそっとやできない役だと思います。森岡くんの実道(じつどう)という役は」

森岡龍さん(左)と前野朋哉さん(右)。

—-転機になるような作品だとも感じましたか?

森岡「間違いなくこの映画は、自分にとってすごく大きなものになっています。俳優にさせられちゃったんですよ。僕、俳優なのに、まだ俳優ですって言えない自分がどこかにいたんですが、この映画を経た今、俳優ですとちゃんと言えるようになりました。覚悟のようなものができたのかもしれません」

前野「いろいろあったもんね(笑)。でも、スクリーンで観た時、覚悟を決めた顔が映ってるなと思ったよ」

森岡「自分にも実道のような時代がちょっとだけあったんです。芝居に専念するのか映画を作るのか、みたいなところで悩んでいた。今回、そんな実人生と映画の中のストーリーがシンクロしてくるような感覚を、自分の中で感じていました。で、前野くんとの関係もそうなんですが、人に対してドライなところもあって。そういう性格も、この映画を通して変わったように思います」

前野「よりドライに(笑)」

森岡「よりドライに……なってない(笑)」

新井浩文さん演じる先輩芸人の黒沢。

—-ところで、おふたりとも監督業と俳優業を両立されていますが、覚悟を決められた森岡さんは、今後は俳優の道一本で?

森岡「その質問はけっこう難しいですね(笑)。俳優として現場に臨む覚悟は強くなっているんですが、映画はもう作りません、というのも……。未来のことはわかりませんから」

前野「どっちどっち?」

森岡「えぇ〜でもそれはさぁ。じゃあ前野くんはどっちなの?」

前野「俺、両方両方」

森岡「笑。まあ僕も、両方っていう言い方でいいのかな」

前野「まだ覚悟が決まってないな(笑)」

森岡「まあ、両方ですね(笑)」

—-では話題を変えまして(笑)。漫才シーンはどんな笑いに落としていくかなど、とても難しいものだと思いますが、どのように作っていったのですか?

森岡「漫才のシーンはすごく難しかったですね。ただ、一つの到達点としては、映画を観ているお客さんにウケるかどうかではなく、僕たち自身が面白いと思える漫才をやることが大事だということ。エミアビの漫才を見て笑えるというより、すべっているのも含めて、このふたりがエミアビとしてそこにいることの方が大事じゃないかと思ったんです」

(薄笑いを浮かべる前野さん)

森岡「もちろん、めっちゃお客さんがウケる笑いも目指してたんですけど、すごく難しくて!!!!」

前野「(爆笑)。言っちゃったぁ(笑)。いや、うまく言うなぁって思ってたんですよ」

森岡「いあでも、それはほんとに重要なんだって。俺はそこ、腹くくってたよ」

前野「いろいろくくってんな(笑)」

森岡「漫才の映画だから、面白いの? 面白くないの?ってことは、周りはやっぱり気になるじゃないですか。ふたりの漫才、そもそも面白いの?って。我々にとってそれは一番のプレッシャーではあったんだけど……」

前野「ところで最初の質問、漫才シーンをどう作っていったか、でしたよね。映画の中には、初舞台と、売れてからという、2つの時間軸での漫才シーンが出てくるんです。初舞台の方は実際にお客さんを入れてワンカットで撮影しました。だから、ウケ具合もわかるし、練習の手応えもつかみやすかった。反対に、難しかったのが売れてからの漫才です。小道具を使い、カットを割った見せ方をしているんですが、監督も入って内容を詰めていく中で、本も毎日のように変わっていきました。とにかく着地点が見えなかった。森岡くんはどうだった? いまだに自分もどう受け止めていいのかわからないんですよ」

森岡「でも俺、漫才やってて楽しかったよ。むしろ演技が何かわかんなくなってた(笑)。漫才シーンの方が自信満々で」

前野「あれはほんとに芝居に行くんじゃなくて、漫才しに行ってたよね。実際に、そういう気持ちで臨んでいたし」

森岡「だから漫才がないシーンがすごく不安で。演技って、なんすか……みたいな(笑)」

黒木華さんがマネージャーの夏海役を演じています。

—-参考にした芸人さんはいますか?

森岡「もともと目指していたのが正統派の漫才だったので、ふたりで最初に見たDVDはタカ&トシさんでした。あとは、ナイツさんとか、ツービートとか。ところで僕、中学時代に漫才ブームがあって、文化祭で漫才をやったり、M-1に出たりもしていたんですよ」

前野「なんてコンビ名だったの?」

森岡「baby fat。生まれた時にふたりとも4000グラムあったから、太った赤ちゃんっていう意味」

前野「なるほどかわいい由来。baby fatのはじまりとはじまり」

森岡「ゴロが悪いね」

—-今回の作品は、大切な人の死からの再生がテーマになっていますが、普段の日常の中でも、死ほど辛くはないけどけっこう落ち込む出来事って、よくあると思います。おふたりは、落ち込んだ時にどう再生していますか?

前野「映画を観ることです。とりあえず映画館に行って、その時やっているものを観るというのはたまにしますね。映画のことですごく悩んで凹んでいるのに、また映画を観に行って再生するという。永遠に抜け出せないループの中に入っちゃってる感じはあるんですが」

森岡「僕は、メンタルが凹んだ時は体を動かすようにしています。ジョギングしたり旅行したり。あとは、部屋で好きな音楽をガンガンかけてめっちゃ踊ったりもします。HIPHOPとかを聴きながら、ひとりでフリースタイルダンスを踊るんです。アホですよ(笑)」

—-最後に、おふたりが最近観て面白かった映画を教えてください!

前野「『デッドプール』です。それこそ、ちょっと落ち込んでいた時に京都で観ました。最高でしたね。笑ってすっきりしました。アメコミ系映画はひと通り観てます。これを観た方がよりこれがわかるという策略にハマろうと思って」

森岡「『ズートピア』がテンションあがりました。僕、けっこうアニメが好きなんです。『ひつじのショーン』とか。大人も子どもも関係なく楽しめるのがいいんですよね、アニメって。この間名画座で観た『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』もよかったなぁ」

森岡さんが突っ走って、前野さんが生暖かい目で薄笑いを浮かべる。絶妙な掛け合いが心地よくて、いつまでも話を聞いていたくなってしまうおふたりのトーク。映画の中では、果たしてどんな漫才を見せてくれるのか? 乞うご期待デス!
(取材・文/根本美保子)

***

『エミアビのはじまりとはじまり』
9月3日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

監督・脚本:渡辺謙作
出演:森岡龍、前野朋哉、黒木華、新井浩文、山地まり ほか
配給:ビターズ・エンド

2016/日本映画/87分
公式サイト:http://bitters.co.jp/emiabi/
©2016『エミアビのはじまりとはじまり』製作委員会

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