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有料老人ホーム入るには65歳で1500万~2000万円の貯金必要

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「十分に長く生きた。あとはせめて穏やかに逝ければ」──そんな、ささやかな願いも、カネがなければ叶えられない。「死に方格差」は拡大する一方で、現役引退後の収入や貯金額によって、入ることのできる施設、受けられるケア、家族との関係性まで大きく変わってしまう。

 本当は特養(特別養護老人ホーム)に入れればいいんだが……。都内に住む70代のYさんは、昨年冬に一人暮らしの自宅で転倒し、大腿骨を骨折して都内の総合病院に入院した。

 手術を受け、リハビリを続けて症状が安定すると、病院を出なければならなくなった。しかし自宅へ戻ろうにも、面倒を見てくれる人はいない。妻には数年前に先立たれ、離れて暮らす息子夫婦も時間的・経済的な余裕はない。

 当然ながら、施設への入所が選択肢として挙がったが、民間の有料老人ホームは軒並み月額20万円以上。年金とわずかな貯金ではとても賄えないし、子供からの援助も期待できそうにない。一体、どこが終の棲家になるのか──。

 収入や貯蓄がどれだけあるかで、その人の「死に方」が大きく変わる。そうした現実が目の前にある。

 本来であれば、公的補助によって整備された特養が死に場所を見つけられない人にとっての“セーフティネット”として機能すべき存在のはずだ。月額8万円程度から利用できる特養であれば、冒頭のYさんのケースでも入居費用はなんとか捻出できる。

 ところが、現実には特養に入りたいと申請をしたのに、入居できずにいる「待機老人」が52万人もいる。入居申請を出さずに諦めてしまった高齢者も少なくない。実際には特養に入りたくても入れない人がさらに数万から数十万規模でいると指摘する専門家もいる。

 さらに昨年4月には厚労省が「原則として要介護度3以上でなければ特養に入所できない」との通達を出し、ただでさえ狭き門はさらに狭まった。

 総務省「家計調査年報」(2015年)によれば60歳以上の高齢者(単身無職)の平均収入は毎月約11万5000円。月額約8万円の特養が順番待ちで入れないからといって、月額約20万円以上の民間の有料老人ホームは入居先として現実的ではない。

 逆にいえば、手元に十分な資金があれば、選択肢は大きく広がるということでもある。

 前出の「家計調査年報」の示す平均額で見ると、定年退職後は毎月3万円程度の貯蓄を取り崩す生活となる。そうした貯金を取り崩す生活が10年程度続いた後に要介護になるという前提で試算してみると、Yさんのように行き場に困る事態に陥らないためには、民間の有料老人ホームに入れる水準、つまり少なくとも1500万~2000万円の貯金が65歳時点で必要という結果になった。介護ジャーナリストの栗原道子氏が指摘する。

「持ち家に住んでいる人の場合、有料老人ホームに入るために、住み慣れた自宅を売る人も少なくありません。長年住んだ建物にほとんど価値がなく、土地にしか値段がつかないケースも多いですが、それでも不動産を持っていない人よりは恵まれています。老後の資金を捻出するために、皆さん苦心しています」

※週刊ポスト2016年9月9日号

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