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江口洋介、向井理ら「イケメン俳優イジリ」 制作側の狙い

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 リオ五輪が終わって、再び連ドラを見ようという人も多いのではないだろうか。今クールは、視聴率的には低調な作品が多いが、話題作はけっこうある。中でも、イケメン俳優たちが意外な姿を見せている作品が目立つ。制作サイドによる「イケメン俳優イジリ」とも言うべきその演出の狙いについて、テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 夏ドラマがいよいよ佳境を迎えようとしていますが、イケメンの主演俳優たちがかつてないほどイジられていることに、「アレッ?」と思った人は多いのではないでしょうか。

『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)では、滝沢秀明さんが恥ずかしいセリフと脈絡のないエアギターを連発。『神の舌を持つ男』(TBS系)では、向井理さんが舌をペロペロしたり死体をなめたりする変人。『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)では、江口洋介さんがアラフィフの今、なぜか「あんちゃん」とほぼ同じキャラクターに。『遺産相続弁護士 柿崎真一』(日本テレビ系読売テレビ)では、三上博史さんがボサボヘアーで、金に汚く女グセの悪い、バツ2のダメ男を演じています。

 もちろんすべて制作サイドの意図があり、これまでも変人やダメ男の主人公は多かったのですが、今回はもはや罰ゲームに近いレベル。持ち前のカッコよさは影を潜め、「笑わせる」よりも「笑われる」に近い印象すらあります。たとえば、滝沢さん本人も、視聴者も、「なぜエアギターが必要なの?」「このセリフはさすがにやりすぎでは?」「これってコントじゃないの?」と何度も思ったのではないでしょうか。

 なぜここまでイジられているのか? その理由はそれぞれで考えられます。

『せいせいするほど、愛してる』は、明かなSNS対策。このところ恋愛ドラマは、胸キュンシーンを連発してSNSの反応を増やし、視聴率につながるリアルタイム視聴を狙っていましたが、今作はその傾向をさらに加速させています。「胸キュンも笑いも一緒くた」のところまで振り切ったことが、“タッキーイジリ”になっているのでしょう。

『神の舌を持つ男』は、自ら「構想20年」と話しているように、堤幸彦監督の強烈なこだわりによるもの。堤監督の名作『ケイゾク』(TBS系)、『TRICK』(テレビ朝日系)よりも前から頭の中でイメージしてきたものだけに、その思い入れの強さが強烈なイジリに表れている気がします。

『はじめまして、愛しています。』も、江口さんが演じるキャラを「僕が尊いと思う人間の愚直さを投影した、この作品の中でも好きな役」と語る脚本家・遊川和彦さんの思い入れによるもの。そのキャラクター造形が「たまたま『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)のあんちゃんと似ていた」ということでしょう。遊川さんは「敵であり味方でもあるのが、作り手と役者の関係」ともコメントしていたので、もしかしたら確信犯かもしれません。

『遺産相続弁護士 柿崎真一』は、むしろ三上さんの魅力を最大限に生かすためにイジっているように見えます。このところ三上さんは民放連ドラの主演がなく、WOWOWのシリアスな作品が主戦場となっていたため、「もう1つの顔であるコミカルさを引き出そう」という意図があったのでしょう。どんなダメ男を演じても様になるのが三上さんであり、かつて『あなただけ見えない』(フジテレビ系)で女性を含む1人3役でイジられまくった姿を思い出します。

 4人に共通しているのは、「制作サイドにとってイジリ甲斐のある俳優」ということ。ふだんマジメな役やピュアな役が多いだけに、「ギャップ狙いも含めて、ついイジリたくなってしまう」のでしょう。実際、4作のプロデューサー、脚本家、演出家は、自分の思い描く世界観を楽しそうに作っているように見えます。

 ただ、イジられる側のイケメン俳優が「持ち味を発揮」、あるいは「新境地を開いた」と言えば、必ずしもそうとは言えません。特に序盤は、悩みながら、迷いながら演じているように見えましたし、俳優・制作サイドともに、いまだ手探りの部分を残すようなシーンが散見されます。

 終盤に向けてイジリはエスカレートしていくのか? それとも一転してシリアスモードに切り替えさせるのか? 連ドラのセオリーとしては後者の可能性大ですが、『せいせいするほど、愛してる』は、最後までイジリを貫き、伝説になるまでやり切ることが、視聴者を喜ばせるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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