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ラテンロックやフュージョンを創成したサンタナの名作『天の守護神』

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60年代後半、サイケデリックロックやブルースロックが全盛のサンフランシスコで、複雑なラテンのリズムとロックのグルーブ感を混ぜ合わせ、まったく新しいロックのスタイルを作り上げたグループがサンタナだ。メキシコ生まれのカルロス・サンタナはポール・バタフィールドに憧れてブルースバンドをスタートさせるが、自身のルーツであるラテン音楽をロックに組み込むことに成功し、69年から現在に至るまで驚くほどのメンバーチェンジを繰り返しながらも活動を続けている。今回はサンタナの代表曲「ブラック・マジック・ウーマン」を収録した彼らの2ndアルバム『天の守護神(原題:Abraxas)』を紹介する。
SANTANA『Abraxas』のジャケット写真 (okmusic UP's)

70年代初頭のロックシーン
1950年代後半にロックが生まれてすでに60年ほどになるが、ポピュラー音楽史的に言えば、ロックの最高の時期は間違いなく60年代後半から70年代中頃までだろう。そう言い切ってしまうと、その時代を知らない人からは反感を買うかもしれない。しかし、本当に当時の勢いはすごかったのだ。新しいグループやシンガーが毎月のように登場し、そのどれもがまったく新しいサウンドを引っ提げくるのだから、ヘヴィリスナーとしてはお金と時間がいくらあっても足りなかった。
僕が中学生になった1970年、すでにビートルズは解散間近であったが、エルトン・ジョン、CCR、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、ザ・ローリング・ストーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ディープ・パープル、ジャニス・ジョプリン、ザ・バンド…等々、このへんのミュージシャンの新譜が出ると、友だちと手分けしてダブらないように買って、あとで貸し合うというシステムを取っていた。そんな中、友人の誰かが選んだサンタナの『天の守護神』もセレクトされていて、他のロックとはまったく違う熱いサウンドに僕は惹かれていった。しばらくすると、本作収録の「ブラック・マジック・ウーマン」が日本でも大ヒットし、アッと言う間にサンタナは人気グループとなっていた。
当時は、まだインターネットやパソコンがないので、情報源は音楽雑誌とラジオのみであったが、サンタナについての情報収集をマメに行ない、「ブラック・マジック・ウーマン」はフリートウッド・マックのカバーであること、レコードデビューは『フィルモアの奇跡』(‘69)でサンタナ・ブルース・バンド名義であったこと、本作がサンタナとしての2ndアルバムであること、サンタナの音楽がラテンのリズムを取り入れていること…などを知ることになる。今ではインターネットを使えば1時間以内で分かることも、当時は何カ月もかけないと分からなかった。70年代初頭はそういう時代でもある。

カルロス・サンタナのギター
当時、注目を集めていたのがカルロス・サンタナのギターワークで、ロングサステインの効いたドラマチックなギターソロは、エリック・クラプトンやデュアン・オールマンに負けないぐらい人気があった。子供ながらにサンタナのギターがマイク・ブルームフィールドとデュアン・オールマンに影響されていることぐらいは理解していたが、その後、ディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」(‘72)で、リッチー・ブラックモアのソロの部分にカルロス・サンタナのフレーズが使われているのを聴いて“ミュージシャン同士の相互影響でロックは進化する”ということを体感したものだ。

サンタナのデビュー
さて、サンタナは1969年にアルバム『サンタナ』でデビューするのだが、それまでに『フィルモア』への出演や『ウッドストック・フェス』への参加も果たしており、アメリカではすでによく知られていただけに、発売直後から大きな反響を呼んだ。サンタナの魅力は、何と言ってもライヴ時の圧倒的なノリである。複数パーカッションとドラムのコンビネーションは身体が自然に動きだすほどだし、それに加えてカルロス・サンタナの熱気を帯びたギターソロが煽るのだから、どうにも止まらないのだ。その熱気は『ウッドストック・フェス』や『サンタナ』のラストに収録されている「ソウル・サクリファイス」を聴いてもらえれば納得していただけるはずだ。
デビューアルバムのメンバーは、カルロス・サンタナ:ギター、グレッグ・ローリー:キーボード、マイク・シュリーヴ:ドラムス、デイブ・ブラウン:ベース、ホセ・チェピート・アレアス&マイケル・カラベロ:パーカッションの6人で、アルバム収録曲9曲のうち4曲がインストという内容。このデビュー作で、すでにサンタナのラテンロックは完成しているのだから、すごいグループである。デビュー作ながら全米チャート4位まで上昇、未だに古びない名盤だと思う。

本作『天の守護神』について
デビュー作ではライヴステージさながらの構成で大成功を収めたサンタナであったが、2枚目ではさらにサウンドに磨きがかけられ、圧巻のラテンロックサウンドが展開されている。メンバーはデビュー作の6人に加えて、パーカッション(3人目!)とピアノをゲストに迎えている。収録曲は全9曲、今回はうち5曲がインストだ。
本作は、冒頭で述べたシングル「ブラック・マジック・ウーマン」の大ヒット(全米4位)や、続く「僕のリズムを聞いとくれ(原題:Oye Como Va)」のヒットもあって6週間チャート1位を独走し、世界中で空前のヒットとなった。もちろん日本でもこのアルバムは売れまくり、貸し借りが原則の僕の友だちたちも、気付けば全員が入手していたぐらいだ。
アルバム全編を通してラテン色が豊かなのは当然だが、インストナンバー「君に捧げるサンバ」では数年後に登場するフュージョンの先駆けとなる音作りが見られるなど、デビュー盤と比べるとラテンロックというジャンルだけにとどまらない拡がりが魅力でもある。サンタナ・ブルース・バンド時代からのオリジナルメンバーでカルロス・サンタナの右腕、グレッグ・ローリーのハモンドオルガンも素晴らしく、この頃グループとしてのサンタナが最高の状態にあったことがよく分かる。
サンタナの代表作品は、活動した時代によって音楽性が変わるだけに一概にどれとは言えないが、少なくとも『サンタナ』『天の守護神』『サンタナIII』の3枚(要するにデビュー盤から3枚目までのラテンロック時代)に関しては、どれも満点に近い出来栄えである。これらのアルバムを味わうには、できれば個々の曲を聴くのではなく、アルバムを通して聴いてもらいたい。そして、できれば大音量で聴いてほしい。

本作以降の活動
本作で大成功を収めたサンタナ、次作の『サンタナIII』(‘71)ではセカンドギタリストに17歳の天才ニール・ショーンが参加、ゲストにホーンセクションなどを迎えるなど、これまた傑作となり全米1位を獲得する。ただ、このあたりからカルロス・サンタナはフュージョン志向(当時。まだジャンルとしてのフュージョンはないから新たな試みであった)が強くなり、他のメンバーとの確執を生むことになる。結局、アルバムをリリース後、ふたりのオリジナルメンバー、デイブ・ブラウンとマイケル・カラベロがグループを脱退する。
4作目の『キャラバンサライ』(‘72)はフュージョン志向が強く出た作品となり、全10曲中インストナンバーが7曲を占めている。ラテン色が弱まり、これまでの3作を愛聴してきたファンは離れ、このアルバムからは新生サンタナと呼んでもいいだろう。以降のサンタナについては別稿に譲りたいと思う。
ずっとカルロス・サンタナを支えてきたグレッグ・ローリーとニール・ショーンも、もはやカルロスについていけなくなり脱退する。そして、彼らはジャーニーを結成し、80年代のロック界を牽引していくことになる。
最後に、サンタナがいかにすごいグループであったかが分かるエピソードを紹介しておこう。下記はロックの殿堂として名高いフィルモア・イーストとフィルモア・ウエストのオーナー、ビル・グレアムの言葉だ。

「レコードを出さずに『フィルモア』のトリをとったバンドは、あとにも先にもサンタナだけだ」(『ビル・グレアム ーロックを創った男ー』ビル・グレアム&ロバート・グリーンフィールド著、大栄出版刊、1994年)

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