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阪神・藤川球児の「火の玉ストレート」誕生秘話

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 プロ野球の世界では「野茂英雄のフォーク」や「堀内恒夫のカーブ」など、数々の「決め球」が存在する。しかし、取材を進めると「変化球が決め球とは限らない」という複数の証言にも突き当たった。“カネやん”こと金田正一氏(国鉄→巨人、1950~1969年、通算400勝)も決め球は、伝説の“天井カーブ”ではなく、ストレートだと強調する。

「ワシはピンチになると、ど真ん中に速球を3つ投げ込んだものじゃよ。コースを狙うとボールになるから、ど真ん中を狙って思い切り腕を振って投げる。すると球が手元でグッと伸びる」

「フォークの元祖」といわれる杉下茂氏も“決め球ナンバーワン候補”と呼ぶにふさわしい球は、

「ベーやん(=別所毅彦、南海→巨人、1942~1960年、通算310勝)のカーブ、大友工(巨人ほか、1950~1960年、通算130勝)のスライダーもすごかったが、カネやんのストレートは天下一品だった」

 と証言する。金田氏はこう続ける。

「カーブはカウントを稼ぐ球。何種類も投げ分けたが、たい焼きと同じで、型に流し込むように全部ストライクゾーンを通った。天井カーブは真上からストライクゾーンを通るので、キャッチャーはミットを上に向けて捕ったんじゃ。

 杉下さんのフォークもよく落ちたが、やはりストレートがすごかった。速い球が決め球だからこそ、変化球が威力を増すんじゃ」

 その杉下氏は星野仙一氏が阪神監督に就任した時、“藤川にフォークを教えてほしい”と頼まれたという。

「でも、見ると真っすぐが走ってない。“まずはストレートを磨いてこい”といったんです。それで藤川は直球を3年磨いてからボクのもとに来た」(杉下氏)

 安易に変化球に走らなかったことで、「火の玉ストレート」が生まれたというのである。杉下氏は最近の投手に物足りなさを感じるともいう。

「ストレートを決め球にするには、バッターの手元でボールが伸びて、バットがボールの下を通るようにならないといけない。163キロを投げる大谷翔平君(日ハム、2013年~)にしても、球速は十分でもストレート自体の伸びや制球力が甘い。もう少し手首で引っぱたくイメージで投げると、もっと素晴らしい投手になる」

 コントロールの重要性は350勝投手・米田哲也氏も指摘する。稲尾和久(西鉄、1956~1969年、通算276勝)のスライダーを絶賛した米田氏は、スピードとコントロールの調和をポイントに挙げた。

「サイちゃん(稲尾)の高速スライダーは、本当にすごかった。高目で誘うようなことはせず、低目にしか投げなかった。フォアボールも少ないし、少しの曲がりでバットの芯を外すから、長打を打たれない。スライダーはコントロールが良くないと、ホームランボールになってしまうからね」

※週刊ポスト2016年9月2日号

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