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東京五輪に向けて スポーツ中継にタレントは必要なのか

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 4年に1度の祭典のバトンは日本に託された。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、浮き彫りになった課題について指摘する。

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 お祭り騒ぎの中で幕を閉じたリオ五輪。メダル数は過去最高という快挙。と同時に、東京五輪にむけてさまざまな課題も見えてきました。

 メディア界でいえば、時間帯が深夜から早朝に亘る競技も多く、テレビという媒体で扱う難しさが浮き彫りになった大会。NHKと民放で大きく差がついたという指摘もあり、視聴率、満足度を見ると、両方ともに高い中継といえば圧倒的にNHKだったようです。

 伝え方についても課題が。

 例えば、批判的な声が高まった一例がレスリング女子53キロ級、吉田沙保里選手の決勝試合。中継を担当したのは日本テレビ・河村亮アナウンサー。

「父親に教え込まれたタックルでいくか!」「父とともに戦う6分間になるんでしょうか」などと亡くなった吉田選手の父の話をくどく繰り返し、「実況がひどすぎる」「ポエム調」「あんなのスポーツ実況じゃない」「感動押し売り」という批判が噴出しました。

 これまでスポーツを扱うメディアがどんな切口を多用してきたのか、が浮き彫りになった形。今後、家族愛といったベタな話題にズレることなく、スポーツの魅力そのものを、いかに正面からきちんと伝えていくのか。課題がはっきりしたという意味で、この中継は興味深いものがありました。

「だから民放は見ていられない、NHKの方がずっと落ち着いている」と評価が高まった面もあるかもしれません。

 しかし、NHKだからといって手放しで賞賛はできない。

 驚かされたのが、看板番組である『ニュースウォッチ9』。キャスターの鈴木菜穂子さんが、卓球団体銀メダルを獲得した直後の水谷隼選手に対して投げた質問。いわば、日本のメディア&日本人を代表して行ったインタビューが、「お笑い芸人・波田陽区さんと似ていると言われていますがどう思いますか」。

「民放のように話が脱線しないNHK」といった言説はもろくも消え去っていきました。

「誰々と顔が似ている」的な話題はあまりに安易。種目について何も勉強せずスポーツについて知らなくても、何となく相手と話をつなげていけそうと安直に考えた時に繰り出される禁じ手。こうした安直に走らないためにどうしたらいいのか。東京五輪のスポーツ報道に向けて考えなくてはならないメディアの課題でしょう。

「顔が似ている」というどうでもいい話題を、とんでもない方向でメダリストにふった元メダリストもいました。加藤綾子さんが司会を担当するフジテレビ『スポーツLIFE HERO’S』。

 柔道で銅メダルをとった近藤亜美選手を相手に、「顔がカトパンに似ている」とスタジオで大盛り上がり。それを聞いていたコメンテーター、元柔道銀メダリストの篠原信一氏が、なんと近藤選手にむかってこう言い放った。

「金メダルとったらカトパンになれる」

 もう目が点です。まったく意味がわからない。メダリストをいったい何だと思っている? カトパンの方が上かい? 元メダリストで柔道の先輩がそんなことを口にしてしまうなんて……画面を観ていて頭を抱えました。

 元選手といえば、懲りることなく「熱い男」として声を張りあげる松岡修造氏。テレビ朝日の五輪番組メインキャスターとして出演していたけれど、妙な空回り感が。一緒に出演したスペシャルサポーターの福山雅治氏に気を遣ったせいという指摘もあったけれど、それもどうだか。

 そもそも五輪の試合はすでに熱い。手に汗握るギリギリ勝負に満ちている。選手たちの心も熱い。そこへしゃしゃり出てきて「日本一熱い応援」「絶叫」は、余分。「熱い」を通り越して「熱苦しい」。

 タレントたちの存在意義も、問われ始めた五輪でした。開会式でカンボジア代表の猫ひろし選手が画面に映った時、「銀座でばったり猫さんと会ったことがある」と個人的なコメントを発露した福山氏。「わざわざタレントを現地派遣するのはなぜ」「番組に出てくる意味がわからない」という声も多く聞かれました。

 視聴者は、「人気タレントが出ているからスポーツの試合を観る」のではなくて、「試合が面白いから観る」。スポーツを観る純粋な楽しさに多くの人が気付き、それが深まってきている。そこにテレビ局もきちんと向き合うべきでしょう。東京五輪にむけて、スポーツジャーナリズムが日本にきちんと根付くかどうか。問われています。

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