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農協から離反のJA越前たけふ 恫喝めいた批判受けた

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 組合員数約1000万人の巨大組織・農協。政府は「JA改革」を打ち出しているが、それ以前から、JAは内部崩壊が始まりつつある。

 JAグループは農業だけではなく、金融、共済保険、病院、介護施設まで経営するコングロマリットで、その頂点に立つのが全国659の地域農協を指導監督してきたJA全中(全国農業協同組合中央会)と肥料や農機具などの仕入れから農産物の販売まで一手に仕切る「JA全農」(全国農業協同組合連合会)の両組織だ。ところが、安倍政権のJA改革で全中の指導権限が廃止され、地域農協の離反の動きが始まった。

 その先駆けが福井県の地域農協・JA越前たけふ(組合員約1万人)だ。2011年から全農を通さないコメの自主販売に乗り出し、経済部門(農産物販売など)を分社化、肥料の仕入れも全農から買わずにメーカーと自主開発することで3割安くなった。現在では、コメは全量、スーパーや外食チェーンとの複数年契約や消費者などに直接販売しており、収益は拡大した。

 JA越前たけふの冨田隆・組合長が語る。

「うちは中山間地域が多く、農業に手間はかかるが、高品質のコメが取れるんです。しかし、全農のコメの集荷・販売は、品質を問わず一律価格が前提。それでは農家にいいコメを作ろうというインセンティブが働かない。

 自前で販売ルートを開拓し、29年度米まで完売しています。販売を拡大するため、組合員には30年度米からは大麦や大豆などに転作している分も、コメを作ってほしいとお願いしています」

 自主路線には激しい圧力もかかった。同組合はJAグループを抜けたわけではないが、上部団体から情報が入らなくなった。冨田組合長への風当たりも強く、恫喝めいた批判も浴びた。障壁はまだ高い。

「農家の経営にとって一番重要なのはコスト削減です。肥料は3割安くなりましたが、農機具や部品は組織の力が強く、メーカーに50台一括発注してもなかなか値段が下がらない。農薬も明治以来の代理店制度が張り巡らされていて直接仕入れが難しい。健全な競争が阻害されていると感じる」

 一方のJA全農広報部では「JA越前たけふについてはコメントを控えたい」というのが公式見解。現在、JA越前たけふに続こうという動きが地域農協の間で活発化し、農産物の直販が増えている。「中央離れ」が広がることにナーバスになっていることがうかがえるが、全農関係者はこう主張する。

「地域農協の9割は農業事業が赤字でそれを金融部門などの黒字で補っているのが現実。いまは越前たけふなど一部の農協だけが自主販売しているから黒字になっているが、他の農協にも広がれば価格競争でいずれ経営が苦しくなる。農家と農業を守るためには全国的な組織力が必要。地域農協の自主路線は将来的に自分たちのクビを絞めることになるのをわかっていない」

 針路が真っ向から対立しているのだ。

※SAPIO2016年9月号

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