もはや政治は「投資」対象 米大統領選で見える「金で買える民主主義」の姿

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もはや政治は「投資」対象 米大統領選で見える「金で買える民主主義」の姿

世の中、カネである。

そう言い切ってしまうのは心情的に苦しいところがあるが、実際そうなのかもしれない。

リオデジャネイロオリンピックが閉幕し、次に世界がフォーカスする話題の一つはアメリカ大統領選、民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補の戦いだろう。

現在はヒラリー優勢と言われているとはいえ、政治家ではないトランプがなぜここまで支持を受けているのか疑問に思う人もいるはずだ。

彼はアメリカンドリームの象徴であり、リアリティ番組のホストで培った話術はとても分かりやすく耳に残る。一般大衆は難しい話を嫌う傾向にあるので、トランプくらい言い切ってしまったほうが感覚的に盛り上がることができる。

また、トランプは外に敵を作り、徹底的に批判する。まさにトランプは大衆の「代弁者」ともいえるのだ。

■トランプは「貧乏」? 選挙資金でヒラリーに差をつけられていたのはなぜ

ところが、いくらトランプが大富豪であっても、「選挙資金」の点からいうとヒラリーには大きく差をつけられていたのは事実だ。

ロイターが6月に報じたところでは、トランプの5月の個人献金が約300万ドルにとどまり、5月末の選挙資金残高はわずか100万ドル程度だったという。一方で、ヒラリーは献金額約2600万ドル、残高4200万ドルとなっている。(*1)

また、その記事では、オバマ現大統領が2012年に再選を果たした際に、6月から11月の間で約6億ドルを費やしたことを記しており、トランプ側の資金面での決定的な劣勢は明らかだった。

ジャーナリスト・堤未果氏による『政府はもう嘘をつけない』(KADOKAWA刊)によれば、トランプは上位1%のスーパーリッチ層から選挙資金を受け取っていないという。つまり、選挙資金の大半を自分の財産でまかなってきたのだ。

しかし、さすがにこれではいけないと思ったのか、報道に寄れば6月から資金集めに本格着手したようで(*2)、アメリカの投資家がトランプに接近しているというニュースもある。

では、これは一体何を示しているというのか?

■ヒラリーは「政治とカネ」の問題を抜け出せない

ヒラリーは4月14日、アイオワ州モンティセロで「政治とカネの問題」に真っ先に手を付けることを公言した。

しかし、これは皮肉としか言いようがない。

というのも、アメリカにおける政治とカネ問題は、上位1%の超富裕層や利益団体の政治献金が政治を動かしているということに他ならない。そして、その恩恵を最も受けているのがヒラリーなのである。

オバマも当初は「政治とカネ」の問題に着手すると表明していたものの、うやむやになってしまった。そして、2期目の大統領就任式の最前列には、「大口スポンサーたち」がずらりと並んでいた。

その契機となったのが、2010年1月、アメリカの最高裁判所で下された「シティズンズ・ユナイテッド」と呼ばれる判決だ。

アメリカでは選挙資金規正法によって、個人が1人の候補者に対してできる選挙の献金は2年で5200ドルまで(本選、予備選ともに2600ドルまで)と決まっていた。

この判決においても、その部分は変わらない。しかし、支持する候補者や政党とは直接的な協力関係にない政治活動であれば、上限なく献金できるようになったのである。

■一部の超富裕層によって牛耳られるアメリカの政治

候補者から独立した政治活動団体は「スーパーパック」(特別政治活動委員会)と呼ばれるようになり、2012年の選挙では、登録数1360団体、集金額6億9000万ドルに膨れ上がることになる。

これを元手に、インターネットやテレビCMにおける激しいバッシング広告など、さまざまな政治キャンペーンが展開されるわけだ。

ここで問題なのはその額だけではない。堤氏によれば、2010年の選挙におけるスーパーパックの集金総額は8917万ドル(約90億円)だったが、その6割にあたる約5400万ドルはたった132人の財布から出ていたという。

選挙に勝つには資金が必要であり、その資金は上位1%の富裕層が提供している。では、実際にその候補者が選挙で勝利したときに、実利を得られるのは一体誰になるのだろうか?

堤氏の取材に対して、アメリカ人投資アナリストは次のように答えている。

「所得格差の拡大が選挙献金格差を広げるのは自然な作用でしょう。所得が多いからといって腹黒いとは限らない。それは金持ちへの偏見ですよ。」(P52より引用)

■どこにでもカネはついてくる

アメリカの富裕層にとって、政治は「投資」の対象なのだろうか。

誰が、どの企業が、どの候補者に、どの団体に「投資」をしようとしているのか。その視点からアメリカ大統領選挙を見てみると、選挙後のアメリカの舵の取り方が見えてくるかもしれない。

(新刊JP編集部)

*1/アングル:トランプ氏の「無限の富」、選挙資金不足に直面か(ロイター)

http://jp.reuters.com/article/angle-trump-unlimited-wealth-idJPKCN0ZE067

*2/トランプ氏の献金大幅増、資金調達力の不安払拭か(産経新聞)

http://www.sankei.com/world/news/160707/wor1607070027-n1.html

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