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今あえて「持ち家」より「賃貸」がいい、これだけの理由

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 夏休みが終わり、9月に入ると繁忙期を迎えるのがマンション販売。企業の決算期や人事異動、転勤などで住み替えが進むからだという。折しも住宅ローンは史上空前の低金利を更新し、マイホーム購入を検討している人にとっては“追い風”が吹いているかに見える。

 しかし、「買わないで賃貸に引っ越す選択肢もしっかりと比較検討すべき」と話すのは、建築検査のプロで総合検査株式会社代表取締役の船津欣弘氏だ。その根拠とは──。

 * * *
 横浜のマンション問題を契機に『新築マンションは9割が欠陥』(幻冬舎新書)という、少し刺激的なタイトルの著作を出版させていただきましたが、〈第二章、新築信仰が貴方を不幸にする〉の中で新築マンション購入と賃貸の場合のコスト比較をしています。

 新築マンションを購入し、万が一、大きな欠陥や施工不備があった場合のリスクは、かなり大きな問題です。現実問題として、出版後、全国各地のマンション管理組合の方からお問い合わせを頂きました。

 つい先日(8月17日)、明らかに施工瑕疵があり、デベロッパー・ゼネコンと10年以上も争っている案件の管理組合の方々のお話をお伺いしましたが、大きく報道されることはないものの、潜在的に問題となっている事実を改めて認識しました。

 大きな欠陥や施工不備が「ない」と仮定したとしても、やはり一般の方々の大きな関心は「購入か賃貸か」という、ある意味根源的なところにあるとの編集担当者さんからのリクエストにより著した第二章でしたが、ここでは、「購入か賃貸か」の部分をクローズアップします。

 まず「購入」の場合ですが、購入時に必要なコスト(イニシャルコスト)は物件価格以外に、不動産取得税や登記費用などの租税公課や修繕積立基金などの「諸費用」が必要になってきますが、目安はおおよそ物件価格の4%程度と言われています。

 そして入居後必要なコスト(ランニングコスト)は月々のローン以外に、管理費・修繕積立金など毎月支払いが必要な費用と、固定資産税や火災保険など年払いの費用があります。

 対して「賃貸」の場合は、「敷金」と呼ばれる保証金のようなものと「礼金」とよばれる家主に対して支払うお金、そして仲介業者に支払う手数料や火災保険などがあります。関西方面では敷金の代わりに「保証金」とされる場合が多いようです。敷金制は退去の際の修繕費用を差し引き返還、保証金制は最初から敷引きとして○万円差し引くと決められていることがほとんどです。

 首都圏の分譲マンション販売価格は一例として2016年7月調べで1戸あたり5656万円、平米単価は80.6万円という調査結果(株式会社不動産経済研究所調べ、同社公開資料及び平成28年8月17日付日本経済新聞記事より)がでています。

 一般的なファミリータイプである3LDKの場合、約75平米として計算すると6045万円になります。この価格はバブルの頃以上ともいわれていますし、一般のサラリーマンには到底手が出せる金額ではありません。

 首都圏では販売戸数も月間契約率も下落傾向にあるようですが、それはさておき、私がいいたいのは「購入」と「賃貸」を損得で考えるのではなく、あくまでこれからの生活を金銭的に管理しましょうということです。

 著作の中で4300万円のマンションを購入した場合と、同程度の立地条件や広さのマンションを賃貸した場合の比較を行いました。要点を再掲すると

【購入】
・物件価格/4300万円
・頭金/500万円、借入金/3800万円
・諸費用/172万円(物件価格の4%と仮定)、
・借入期間/25年、固定金利1.55%
・管理費1万8000円、修繕積立金8000円
・月々支払額/17万8900円(管理費・修繕積立金込、総支払額約:4587万円)

【賃貸】
・賃料/15万円(共益費込み)
・更新費用引当(2年毎に1ヶ月分)15万円÷24ヶ月=6250円
・月々15万6250円

 購入した場合との差額が、月あたり2万2650円あります。賃貸の場合、これを毎月すべて貯蓄に回したとすると1年で27万1800円、25年で679万5000円です。これに購入時の頭金500万円から賃貸時の敷金・礼金(敷金3ヶ月、礼金1ヶ月と仮定)を差し引く金額(500-(15×4)=440万円)を加えると1119万5000円になります。

 貯金したとして現在の利率はあってないようなものですが、マイナスになることはありません。25年後にこれだけの「貯金」があることになります。

 購入の場合は毎年必要な固定資産税が加わりますが、所得税減税があるので、紙面の都合上ほぼ相殺できると仮定し、著作では考慮から省きました。ただ、所得税減税は10年間ですので本来はしっかりと計算に入れる必要があります。また火災保険等も必要です。もちろん賃貸であっても火災保険は必要ですが、掛け金の額は当然違いますので、ここもしっかりと比較する必要があります。

 また、金利動向や頭金の金額、つまりローン借入額(月々の返済額)や支払い年数によっても変動します。現在はマイナス金利の影響で固定金利のほうが変動金利より利率が低いという逆転現象も発生していますが、総支払額は変動することを考慮に入れる必要があります。その結果、賃貸より購入のほうが総支払額が低いことも考えられます。

 よって単純に比較することは無理があると思いますが、大事な事は前に述べたように「これからの生活を金銭的に管理する」という視点で考えることの重要性を感じて頂きたいと思っています。

 転勤や家族構成の変化つまりライフプランの変化は必ずあると言ってよいと思います。また、失職などの支払い不能リスクも絶対にないとは言い切れないはずです。賃貸であれば、状況に応じて柔軟に対応できる自由度が高いのも魅力です。家族が増えたらより広い物件に引っ越すこともできますし、逆のパターンも考えられるでしょう。

 現在私は首都圏の賃貸マンション暮らしです。マンションであれ戸建てであれ首都圏での取得費用は、大阪圏や名古屋圏とは大きく異なります。子供も高校生と中学生で、今後教育費も増えていきます。子供たちが就職したら夫婦2人だけの生活がずっと続くかもしれません。

 仮に現状の家族構成でマンションを購入したとしても持て余す可能性があるということになりますし、ローンを支払い終わっても固定資産税はずっと発生します。修繕積立金が不足した場合、臨時の出費も考えられます。著作に詳しく書きましたが、毎月の修繕積立金が十分足りているという物件はほとんどないといっても過言ではないのです。

 万が一、自分の身に何かあったとしても残された家族に、せめて「住まい」だけは残してあげたい(または残してほしい)という思いもわかりますし、私もそう考えることもあります。しかし、生命保険で子供たちが成人するまでの学費を含めた生活費をカバーできるかもしれません。

 重要な事は、人生で一番大きな額の買い物ともいえるマイホームについても、子供の学校や自分の仕事など自分や家族にとって重要なことと同様にしっかりと比較検討し決定すべきだと私は考えますが、読者の皆様はどう思われますか?

●ふなつ・よしひろ/1965年福岡県生まれ。2001年GAO建築工房設立。阪神・淡路大震災の被災経験から2003年より欠陥住宅問題に取り組み始め、構造計算偽装事件をきっかけに建築検査業務を専業に。2011年4月、総合検査株式会社代表取締役に就任し、現在に至る。

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