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トレタ、ツクルバ、ターミナルが語った「衣・食・住にIT技術を活かすエンジニアの働き方」──T3Meetupイベントレポート

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「衣・食・住」分野とIT技術

扱うものがリアルな「衣・食・住」は、これまであまりITが進出していなかった分野だ。デジタルに実際のモノがのらないということもあるし、すでに産業構造が確立され過ぎているという要因もある。しかし、人の暮らしに不可欠なものだからこそ、もっとIT技術で便利になっていいはず。

そもそも今回のイベントの企画は、にファッションブランドの展示会・卸事業向けのオーダーシステムを提供し、従来のスキームをオンライン化した「ターミナル」、に飲食店向けの予約/顧客台帳サービスを提供する「トレタ」、に実空間+情報空間という形で場作りを手掛ける「ツクルバ」という、共通する課題の多い分野でチャレンジするスタートアップ3社がそろったことで始まった。

▲会場はツバクルが運営する会員制シェアードワークプレイス「co-ba library」
▲イベント開始時にはおしゃれなケータリングもすでに用意されていた

まずは各社から、ライフスタイルに直結するサービス作りについて、プレゼンが行われた。

1千万を超える予約件数をさばくトレタの予約/顧客台帳サービス

トレタが提供しているのは、飲食店の予約を簡単に管理ができる予約/顧客台帳サービスだ。進藤さんは、自社のサービスを「飲食店の予約/顧客管理を効率化して、より高度な接客を実現するためのツール」とした上で、現場を効率化してより楽にしていきたいという。

従来、紙ベースで顧客の予約を管理していたが、それをアプリに置き換えることで予約管理業務にかかるコストを削減することができる。また、ネット予約システムと連動することで、顧客側はネット予約が簡単にでき、お店側は予約管理業務がより効率化できる。

提供するサービスは予約管理、顧客管理、テーブル管理。これにより、お店側にとってはWebメディアなど複数に対応する手間が省けるという業務の効率化だけではなく、売上アップにも貢献しているという。

▲株式会社トレタ 事業開発室 マネージャー 進藤学さん

導入店のなかでは、トレタのサービスを利用することで電話が鳴り止まない状態を解消し、手離れよく予約/顧客管理が可能になった事例もあるという。これは、予約の流れがうまくオンライン化に移行できたということなのだ。

現在、競合が20社程という状況の中でシェアNo1、6千店舗以上がトレタの予約/顧客台帳サービスを利用している。また、シンガポール版トレタもリリースしている。

今後は顧客管理を軸に、さらに「飲食店体験」を根本的に変えていきたいという。Yahoo!、LINEなどのメディア連携、商品マスター・売上情報の活用など、トレタを経由して、顧客にはより条件に合うお店を選択・予約できるという利便性を、飲食店側には集客・収益への貢献が提供できる仕組みを構築していく予定だ。

例えば顧客情報と来店時のデータ(日付、注文の履歴、支払いなど)を組み合わせることで、どの媒体から来た顧客がどのくらいの利益をもたらしたかなど、広告の費用対効果などより厳密に数値化できる。もちろん、そうした顧客情報により、飲食店側は顧客に合わせた接客も可能になる。

サービスを開始し2年半、いまや1千万を超える予約件数、予約人数も延べ5千万人以上という規模、これを自社のエンジニアが支えている。

住のストックを活用する、ツクルバのリノベーション住宅特化のオンラインマーケット

ツクルバのミッションは「場を発明を通じて、欲しい未来を作る」。

もともと不動産ポータルサイト「HOME’S」などを提供するネクストで新規事業を開発していた村上さんは、東日本大震災のあと、何かアクションしたいと、建築を専門とする共同代表と2011年8月にツクルバを設立。

最初はリノベーション、空間プロデュースを手掛けていた。そこにテクノロジーを加え、ビジネスとテクノロジーとデザインの3つを掛けあわせ、今のツクルバになったという。33名の社員はほとんどがクリエイターだ。

▲株式会社ツクルバ 代表取締役CEO 村上浩輝さん

まず始めたのは、CAMPFIREで支援を募集した「co-ba」プロジェクトだ。co-baプロジェクトは話題を呼び、そこから「co-ba SHIBUYA」が誕生した。場所を共有するだけではなく、お互いのアイディアやスキルも共有できるワークプレイスとして、多くのIT系スタートアップが集まる場所になっている。

そこから空間デザイン、空間プロデュースができる会社として、オフィステザインの受託を受けるようになった。DMM.makeなどのデザインも手掛けている。こうして、リアルな分野を軸にデザインファームとして成長してきた。

そこに、新しい事業としてリノベーション住宅特化のオンラインマーケット「cowcamo」をリリースしたのが1年前のこと。従来からあったデザイン、不動産のチームに加え、テクノロジーのチームを強化しているところだ。

cowcamoのきっかけは、リノベーション住宅の市場性。データもそう示しているし、住まいを探すというとき、新築だけではなくリノベーション物件が選ばれることが増えてきたという実感があったという。

ちょうどメルカリが世界的にも席巻し、セカンダリーECマーケットがトレンドになってきていた。cowcamoでは、メディアを作り中古物件を流通させ、購入する前後のリノベーションの提案といった、複合的なサービスを提供している。

村上さんは、世界的に見てもこれだけ中古物件が流通していないのは日本くらい、そこを是正したいという。住のストック活用の前進が目標だ。

ファッション業界向けBtoBマーケットプレイス「TERMINAL ORDER」

ファッションには以前から興味があったという瀬戸さんが、ブランド品の2次流通サービス「ザ・リアルリアル」に携わる中でファッション業界にある種の課題を感じて、2014年に立ち上げたのが「TERMINAL ORDER」だ。

▲ターミナル株式会社 代表取締役 瀬戸恵介さん

TERMINAL ORDERは、日本で唯一のファッションブランド向けBtoBマーケットプレイス。マーケットプレイスといっても、最初はアパレルブランドとセレクトショップのバイヤーをつなぐものだった。

服の流通がどんな仕組みかというと、ブランドの新作をリリースすると各バイヤーが展示会にて買い付け、それが店舗に並び、消費者の手に届くというのが従来の流れだ。TERMINAL ORDERは、この展示会をベースとするオーダー業務を効率化しましょうというもの。現在、180ブランドが導入、5000バイヤーが利用している。

当時、ファッション業界はIT化がまったく進んでいなかったという。一方、アメリカではニューヨークで発祥した「Joor」というサービスが大きく発展していた。それをヒントに、うまく日本にローカライズさせようということだ。

そもそも展示会ではブランドがオーダーシートを用意する。それは1ブランドで200から1000という数になり、すごい束だ。バイヤーはオーダーシートを元にFAXなどで発注する。ブランドは受注した数をもとに工場に製造を依頼する。

これをシステム化することで、ブランド側はオーダーシートを作らずに済むし、バイヤーは注文をアプリ経由で行うことができる。デジタル化された注文は、管理も集計も容易(人的ミスを排することも可能)だし、蓄積したデータはオンラインマーケティングにも活用できる。

これは業務の効率化だけではなく、小さなブランドにとってもチャンスの拡大につながるだろう。情報発信で新たな取引を獲得できる。新規のバイヤーにとっては参入障壁を下げるという機能を果たす。

今後、日本のブランドを海外へ、海外のブランドを日本のバイヤーに紹介というような海外展開、また雑貨や家具といった分野への展開も計画しているという。

ライフスタイルに直結するサービスを作るということ

後半では、各社で直接サービスを支えているエンジニアが登場し、開発の裏側を語る座談会へ。

▲中村圭佐さん(ツクルバ)、谷拓樹さん(ツクルバ)、芹沢和洋さん(トレタ)、堀見宗一郎さん(トレタ)、山下博巨さん(ターミナル)、進行の小島芳樹さん(トレタ)

特にこうしたスタートアップのサービスでは、「何が課題なのか?」「その優先順位の見極めは何か?」が気になるところ。何を指標とするのか、サービス開発におけるKPIをどう定めているのかについて。各社の経営者層も含めての議論となった。

ツクルバの村上さんは、従来のポータルサイトは送客数(問い合わせが何件あったか)となりがちだが、それは本質ではない。cowcamoの場合、いかにユーザーをホットな状態にさせているか、ホットな状態でリアルな接客チームに送り込めるかを指標にしているという。

トレタの進藤さんは独自の指標で明確に定めた上で、そこにいかにリーチし、導入していくかを指標にしているという。

ターミナルではブランドを探すという行為に対し、細かくアクティビティを設定したり、バイヤーについて質と量をどう数値化していくかというlpとをKPIに落としこんで管理しているという。

こうした回答を受け、小島さんは「いままでのWeb業界はインターネット人口の増加に乗ってきたため、とにかく数を追う傾向があった。しかし、こうしたスタートアップのサービスにとっては数よりも”質”なのではないか」とする。

実際、既存の業務の流れにある非効率性であったり、サービスの発想の原点は、実は3社とも似ている。

既存の業務フローをIT化する際、ツクルバの中村さんが重要だと考えているのは、変えられるところと変えることができないところの見極めだという。法的なことで変えられない場合もあるし、どうしても、最後のリアルな接客で変えられなかったりする。

業務フローの中でどこが変えられて、どこが変えられないのか。変えられるところはどうやって変えていくか、というのが最初のスタートになる。そこがわかっていないとアイデア出しもできないし、議論にもならない。「僕らのように既存産業にアタックしていく人は、既存産業の理解が非常に重要」(中村さん)ということ。

トレタの場合も、代表が飲食店経営を10年近くしていたことから業務知識は非常に深いという。

つまり、衣食住など、長い歴史を持つ産業に新しいサービスでチャレンジするには、まず既存産業を理解することと、そこでの課題の発見から始まるのだ。

それに対し、ツクルバの中村さんは「既存産業の課題がいっぱいある、変えられるところもたくさんあるというとき、その中の優先順位をどう考えるかということになる。そのとき、KPIがあればそれに一番近いものからとすることができる。やらなければならないこと、やりたいことがたくさんある中で優先順位を決めましょうというとき、開発メンバーの間でそれが一致していないとうまくいかない。経営層も含め、”何が効くのか”が共有できることが重要」と言う。

ターミナルの山下さんは「B to Bでお客さんと接する場合、課題を直接、聞くことはできる。しかし、その場合でも、本当にそれが課題なのか、その解決が必要なのかをかみくだくところからがエンジニアの仕事だ」と語った。

では、衣食住というテーマでサービス開発に携わっているエンジニアに何が必要なのか?

まずトレタの芹沢さんがエンジニア全般の話として、「いまエンジニアに求められているものとして、ここ数年フルスタックエンジニアが求められてきた流れから、最近は大量のデータに対応するとかリッチなUIを作るとか、特化してきた。自分中でコアを持つこと、何かの強みを持つことが必要なのではないか」と述べた。

それに対し、「衣食住というライフスタイルに直接的にかかわるサービスを扱っているエンジニアとしては、日々のライフスタイルをどう楽しめるかというのがある。日々の暮らしの中で感度を上げるというより、自然にライフスタイルを楽しむ。それが重要なのではないか」とツクルバの谷さん。

ツクルバの中村さんは、だから衣食住に関わる技術者はラッキーなのだと言う。

「エンジニアとして現役でいるためには、毎日何らかのキャッチアップをしていくことになる。現役でいるために刺激を受け続ける。刺激を受け続けられるように、自分自身をメンテナンスし続ける必要がある。その点で、衣食住はわかりやすい。生きることで”エンジニアとして必須なキャッチアップを常に得られる面”もある」と。

これはおもしろい視点だなと感じた。日常生活により近いところにIT技術が入っていくことで、サービスを受ける側だけではない、作る側にも変化がある。そうなって初めて、テクノロジーと寄り添って生きるということになるのかもしれない。

▲座談会終了後の乾杯!

(取材・文・撮影:大内孝子)

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