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【教育×IT】障がいを持つ子どもたちに向けた、PC・タブレットを活用する授業がすごかった

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ICT教育のモデル校、春日学園を見学

こんにちは。ヨッピーです。

本日はつくば市立春日学園義務教育学校にお邪魔しております。

低IQの皆さま方におかれましては「あれ?いきなり漢字が多いぞ?」って面くらうかもしれませんが、「義務教育学校」っていうのは要するに公立の小中一貫校のことです。その中でも春日学園は教育にITを活用した、いわゆるICT教育のモデル校として有名な学校でもあります。

ここにMicrosoft Showcase Schoolsとあるように、春日学園はMicrosoftと提携をして様々な施策を行っているそうだ。例えばMicrosoftのタブレット端末「Surface」をたくさん導入していたり、デジタルノートソフト「One Note」を活用した授業の取り組みなんかも行われているらしい。

そもそも、なんで今日こちらにお邪魔したかというと、以前Microsoftにお邪魔した時に特別支援学級におけるIT活用の話なんかを聞いたからであります。

考えてみればこれだけIT全盛の世の中、最近のIT教育ってどういうかんじなのか実際に見てみようと思ったわけです。

ちなみに小学校に来たのはたぶん25年ぶりとかなので、懐かしさの感情があふれてきてビビります。

そしてこちらが春日学園で特別支援学級の担任をされている山口先生!

今日は先生にいろいろ話を聞いてみよう!

発達障害って?


「山口先生は特別支援学級で発達障害の子供を多く受け持っているって聞いたんですけれども、そもそも発達障害について教えていただければ!」


「発達障害って、一言で片づけるのはものすごく難しいんですね。10人子供がいれば10通りの症状があるので、一概に『これが発達障害です!』って言えないんですよ。
例えば私が受け持っている児童でも、普通に読み書きはできるのに、人前に出ると固まってしまって意思疎通ができなくなる子供や、文章を目で読むのは苦手なのに、読み上げてあげるとちゃんと理解できる子供なんかがいるんですね。
一律で『発達障害の子供にはこう教えましょう』っていうことができないんですよ。だからこそ一人一人に合わせたカリキュラムを組んであげる必要があるんです」


「なるほど」


「普通の学級だと定員が40人いるんですが、その40人を相手に、それぞれ違った勉強の進め方で教えるのはさすがに不可能ですよね。
だから特別支援学級という制度がありまして、そこで一人一人に対してそれぞれ合うやり方で教育するというような仕組みになってます。
特別支援学級は定員が8人なので、それだけ手厚く子供たち一人ひとりに向き合えるということですね」


「ふむ。最近だとITを駆使した教育なんかに取り組んでらっしゃるって聞いたのですが」


「そうなんです。例えばこれなんですけれども」


「これ、画面にスピーカーのアイコンがありますよね?
これをタップすると問題を読み上げてくれるんです。文字をWordの文章にすれば、読み上げてくれるソフトもあるのですが、これでテストを受けている子が、みんなと同じテストの形にこだわっているので、テストの形は変えずに音声を私自身で吹き込んでいます


「おお。すごい。すごいけどめっちゃ大変!」


「なんでこれを教育に取り入れるかと言いますと、さっき言った通り『文字は頭に入ってこないけど、音声は頭に入る』という子供がいるからなんですね。
目から入った情報を理解するのは難しいのに、耳から入った情報は普通に理解できる、というような」


「あーなるほど。その感覚わかりますよ。僕、脳炎でぶっ倒れて失語症になったことがあるんですが、それが治っていく過程で、『人とは普通に話せるのに、文章が全く頭に入ってこない』っていう時期がありましたもん。脳の回路のどこかが上手くつながってなかったんだと思います。今思い返してもすごく不思議な感覚なんですけど」


「そうですね。メカニズムについてはまだわかってないことも多いんですが、耳からだと勉強できる子供に、普通にペーパーテストを受けさせてもやっぱり理解できないじゃないですか。でもこういうデバイスを持ち込むことで、同じようにテストを受けることができる、と」


「なーるほーどねーーー」


「この、テストにパソコンを持ち込む、ということについては親御さんや児童本人の抵抗があったりすることもあるんですね。
子供の中には『みんなと違うのは恥ずかしい』って思うし子もいるし、『普通の教育をしてほしい』っていう親御さんもいるし」


「えー。子供が『恥ずかしい』っていう気持ちを持つのはわかるんですけど、ご両親の理解が得られないのは辛いですね」


「そうですね。でもこういうケースでパソコンを持ち込むのって、目が悪い人がメガネをかけるのと同じじゃないかって思うんですよね
パソコンで明らかなズルをすることはもちろんダメですれども、フォローしてくれるものを活用するのは何も恥ずかしいことじゃないんです」


「完全に正論」

パワーポイントを利用した漢字学習も進められている。

例えばこれも発達障害の子供に合わせて作った漢字の書き取り勉強ツール。この「拾う」という文字なら部首ごとに色分けをし、「手を 合わせて 拾う」など、ひとつのストーリーとして覚えるようにすることで漢字の書き取りテストの点数が飛躍的に上がったらしい。

子供に合わせてやり方をフレキシブルに変えるのは、教室の掃除にも表れている。
例えば「掃除をしましょう」と指示を出しても理解できなかった子供が、こんな風に教室の床を細かくエリアごとに番号を振り「1の床を拭いたら2の床のものを1の床に移動させ、2の床を拭きましょう」といった具合に順序立てて細かく指示をすることで掃除がちゃんとできるようになったんだとか。


「いやーーー、でもこれめっちゃ大変な作業ですね。子供一人ひとりにオーダーメイドスーツ作るようなものですし」


「そうなんです。さっきも言った通り子供たちの個性がそれぞれ違うので、『これが正解!』っていうものがないんですよ。以前よりは研究も進んでますし、体系化された教育法も少しづつ出てきていますが、まだまだですね」

※授業を見学させていただきました


「なんだろうこのかんじ。懐かしすぎて涙出そう。ノスタルジーよ……!」

そしてこちらのタブレットを手にしてる彬斗(あきと)くんは、書き取りが苦手なので、こうやって黒板をタブレットで撮影し、

印刷してファイルしておくことで後から復習できるようにしているらしい。

そしてこちらの大地くんは、人前に出てしまうと緊張して話せなくなってしまうため、タブレットに事前にスピーチの内容を録音し、

それを人前で発表することによってクラスの他の児童とコミュニケーションを取れるようになったそうだ。

後は普通学級でもパソコンを使った授業が行われている。


「ざっとこんなかんじですね。我々も試行錯誤しながらなので結構大変です」


「でも、これだけ細かく子供たちに合わせてやっているのに、親御さんの中には子供を特別支援学級に入れたがらない人もいるって聞きますけど……」


「それはね、たしかにいらっしゃいますよ」


「それについてはどう思いますか?」


「発達障害の子やその疑いがあるような子たちには、授業中に大きな声をあげてしまうとか、立ち歩いてしまうような子もいるんですね。それは一斉での学習にすごくストレスを感じてるからなんです。例えばヨッピーさんが、全然理解できないアラビア語の授業を黙って座って聞いてなさいって言われたら絶対にストレス感じますよね?」


「おっしゃる通りです。はじまって10分で家に帰ると思います」


「でしょう。それを毎日毎日やらせるのは、本人の教育にとってもよくないんですよ。それぞれに合わせたやり方で教えてあげないと。実際、教室でじっとしていられなかった子供が特別支援学級に入って、自分なりにできるやり方で勉強をするとやっぱり学力が向上しますし、情緒も安定したりするケースが多いですから。世間体とかいろいろあるのかもしれませんが、世間体と子供の将来どっちが大事なんだ、って思いますね」


「なるほどね。ちゃんと周りが理解することが大事なんですね」

子供達の情緒を随時確認しながら教育を行っていく。ここまで手厚い教育をするのは、やはり40人学級では難しいらしい。


「こういった取り組みについては国も自治体も頑張ってますが、現状ではまだまだ十分とは言えないと思います。私がさっき音声を吹き込んでいたのも、例えば教科書が全部デジタル化されていて、読み上げソフトで対応できるようになれば必要ない作業のはずなんです。でも教科書のデジタル化は2020年って言われていて、まだちょっと先の話ですね……」


「いやーほんとそうですね。体系化しないと現場の先生が大変ですもんね。今先生の話を聞いてて『マンパワーで押し切ってる感すごいな』って思いましたもん」


「そうですね。各自でなんとかやってるかんじなので、自治体ごとの格差なんかも大きいと思いますよ。この春日学園のあるつくば市は学研都市ということもあって、いろいろ先進的な取り組みができるんですが、ほかの地域だと難しいかもしれません」


「なるほど。たしかにつくばなら保護者の理解を得るのがそれほど難しくなさそう」

身体障碍者向けのデバイスを見に行こう

▲テクノツール株式会社 取締役 島田 真太郎氏

さあそんなわけで、続いては身体障碍者向けのPC操作支援ツールをたくさん作っていらっしゃる「テクノツール」さんにお邪魔しました。


「今日はよろしくお願いします!早速見せていただければ!」


「はい!こちらなんかがそうです!」


「これは指先でパソコンを操作するデバイスですね。マウスの代わりのようなものです。想像していただきたいんですけど、マウスって使う時は手首を動かして操作するんですね。これを使うことで、事故や病気で筋力が落ちてて手首が動かない方でも、パソコンが操作できるようになってます」


「おお。確かに。軽く動きますね」


「指で動かす以外にも、例えば顎を使って操作している人もいます」


「こういうことですね」


「そうですそうです。身体障碍者の方って、『体のどこの部位が使えるのか』によってできることがかなり変わるんですね。そこで障害の度合いによってツールを使い分けるようなイメージです」


「例えば指先が自由に動かせない、というのであれば、この緑のボタンを脚や頭なんかで押すことでパソコンを操作する、といった具合に」


「おーー。すごい!」

この画面の右上に出ているのが操作パネルで、時間経過とともにカーソルが動くので、自分が操作したい場所に来た時にボタンを押すことで使いたい機能が使えるようになっているそうだ。同じ仕組みで文字入力もブラウジングもできる。


「なるほど。でもこれで入力するのってめちゃくちゃ時間がかかりますね」


「慣れるともう少し早くはなりますが、それでもやっぱり大変だし時間もかかりますね。ただ、例えば寝たきりになっていて体は自由に動かせないし話すこともできない。でも脳には何の不具合もない、といった方がいらっしゃった時に、こういうデバイスを駆使してでも他人とコミュニケーションを取れるようになるのはかなり大きいですよ」


「それは確かにそうだろうなぁ」


「あとはこの、変な形をしているものも入力デバイスなんですね。さっきのボタンですら押す力がない、というような時でも、この先端がセンサーになっているので触れるだけで入力できるようになってます」


「あ、本当だ。軽く触れるだけで反応しますね」


「これをどうやって使うかといいますと、例えばもう手足が全く動かせないような状態でも、顔の筋肉が使えるのであれば頬に装着して、頬の筋肉を動かすことでスイッチを入れるような使い方をします」


「なるほど。ここに装着したら唇でも操作できますね」


「そうです。なので動かせる場所に合わせて使えるように、自由に曲げて使えるようになってるんですよ」

こちらは腕の筋力が衰えた人をサポートする機械。マウスやキーボード操作に使っている人も。
たしかにこれを装着してると全然力を入れなくても腕が動く!すげぇ!


「そもそも、なんでこういうものを作ろうと思ったんですか?」


「この会社は元々私の父が作った会社なんですが、父の身内に身体障碍者がいまして、その時に使えるデバイスがなかったので『作らなきゃ』と思ってはじめたんですよ。残念ながらその方はもう亡くなってしまったんですが、事業はそのまま続けております」


「やっぱり大変ですか……?」


「そうですね。いろいろ課題はあります。こういうデバイスって、当然たくさん売れるような性格のものではないので、一個あたりのコストが高くなるんですね。国からの補助金もあるとはいえ、購入者の負担も大きいですし」


「でも、今後の需要は絶対に増えていきますよね。僕が思うに、ですけど。普段パソコン使ってなかった人が、いざ入院してこういうもののお世話になろうとしても、たぶん覚えるの大変すぎてやらないんじゃないかな、って思うんですよ。
でも元々パソコンをばりばり使ってて、何かしらの事故とかでこういうデバイスを使うようになったら、使い方を意地でも覚えると思うんです。パソコンの便利さとかメリットを知ってるから」


「そうなんですよね。高齢化社会を迎えるにあたって、パソコンを使ってる世代の方が高齢者になっていくことを考えると、需要は絶対に増えていくはずなんですよね」


「いやー、頑張ってほしいなぁ。なぜかって、僕が将来こういうもののお世話になる可能性は全然あるな、って思うんですよ。僕じゃなくても、誰でも等しくそうなんですけど。ひょっとしたら事故に遭うかも知れないし、病気でぶっ倒れるかも知れないじゃないですか。
そういう時に、こういうデバイスがどんどん進化してて使いやすくなってたらめちゃくちゃ助かるだろうなって思いますもん。僕の親ももういい歳なんで、身近な人がそういうことになるかもしれない。この記事読んでる人も決して他人事ではないはずなんですよ」


「そうですね。社会との接点が持てないのはやっぱりつらいですよ」


「そうそう。僕ね、昔から『高齢者こそインターネットをどんどん使え』って思ってるんですよ。ITとかインターネットって、特に高齢者にとってはなんとなく『怖いもの』みたいなイメージがあると思うんですけれども、今回の企画の特別支援学級の例や、この身体障碍者向けのデバイスなんかが代表するように、ITって弱者のためのものっていう側面も絶対あると思うんです」


「ええ、そうですね。例えば高齢者の一人暮らし世帯でも、離れた子供の家族とテレビ電話でコミュニケーションを取るとか、足腰が弱って買い物に行けなくてもネット通販でモノが買えるとか。車の自動運転も、いざはじまったら一番助かるのってやっぱり過疎地に住む高齢者たちだと思いますし」


「そうそう。だからね、『ITの進化によってコミュニケーションが希薄になる』みたいなことを言う評論家とか、SNSが絡んだ事件があるとすぐ『インターネットは怖い』みたいな論調になる報道を見ると『何言ってんだこいつ』って思います。
変に怖がらせて苦手意識を持たせちゃダメなんじゃないかって思うんですよ。実際、元気な時にパソコンとかネットとかに触れてなかったら、仮に寝たきりになった時にこういうデバイスを使おうとはたぶん思わないじゃないですか」


「実際それはありますね。イチから新しく、手足の自由が利かない状態で覚えるのは難しいので、こういうのを使ってでもパソコンを動かそう、というモチベーションを持ってるのは元々使ってた人が多いですから」


「でしょう。それなのに無闇に怖がらせて、そこから距離取らせてどうするの?って思います。特に、日本なんて世界にさきがけて超高齢者社会に突入するわけですから、そこで上手くこういうITを活用した先例を作れば世界のスタンダートになるサービスを展開できるかもしれない。すいません、長く話しすぎました


「いや、でも私どものような取り組みを取り上げていただけるのはありがたいですよ。なかなかスポットが当たる業界ではないので……!」


「僕みたいなゴミカス人間がなんとか生きてられるのも全部インターネットのおかげだと思ってますし、僕は『インターネット最高!IT最高!』的なインターネット原理主義の人間なのでこういう『インターネット、ええやん?』みたいな話は積極的に拡散していく所存です!」

そんなわけで今回の記事はいかがだったでしょうか!

「ビジネス!ビジネス!」みたいなかんじがわりと強い気がするインターネットとITですが、今回の事例のように、目立たなくてもいろんな場所でもうなくてはならないインフラツールになりつつあるのがうかがえると思います!

例えば脊髄性筋萎縮症という難病をわずらった19歳の男性が、今回ご紹介したようなITツールを駆使してなんと東大に合格したという事例もあります。

ITを活用することでハンデを跳ね除け、本来の能力を発揮できるようになるというのは、もちろん本人の努力があってこそのことではあるのだけど、「インターネット」とか「IT」っていうものを変に怖がるのではなく、社会に対してポジティブなインパクトを与えることも数多くあるのだと、なるべく多くの人に知ってほしいな、と思います!

またそのうち、いろんな場所にお邪魔したいので引き続きよろしくね~~~!

(撮影:延原優樹・馬場美由紀)

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