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美しいデザインと音楽が融合した鉄道シミュレーション『Mini Metro』レビュー

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難解な現代音楽のひとつだった電子音楽をポピュラーにしたことで有名なドイツのテクノグループ・クラフトワークの代表的なアルバムに『アウトバーン(ドイツの高速道路)』『ヨーロッパ特急』がある。シンプルな交通インフラをタイトルにするという思い切った背景には、彼らが当時ツアーで移動していたドイツの高速道路を走行する音や、鉄道が線路を走る音そのものを音楽として再現しようとしたことがある。そのアイディアは電子音楽の持つ無機質さと一致し、今日に至るまでの名盤となっている。

クラフトワークの代表作の発表からすでに数十年が経過した。その間に無機質なはずの機械の音やノイズも音楽として使われることは当たり前になり、この文章をキーボードで打ち込む音さえも音楽となりうることも当たり前のようにわかっている。

鉄道運営シミュレーション『Mini Metro』の一番最初のマップ、ロンドンの路線図をクリアして思い出したのはそれだ。これは単なる運営シミュレーションに留まらない、デザインと音楽の美しさをも体感できるものになっている。完成した路線図に電車が走り、乗客が乗り込み、駅で降りる。それらの無機質な行動それぞれがリズムとメロディとなり、音楽となっているのだ。

路線を引く。駅を繋ぐ。乗客を降ろす。

『Mini Metro』はシンプルなゲームだ。ゲームを開始すると上の画像みたいに無造作に○△□の記号が現れる。これが駅だ。時間が経つと電車を待つ乗客が各駅の右側に集まる。乗客は降りたい駅の記号で描かれている。

路線を引くのはマウスで駅から駅へとドラッグするだけでいい。繋いでしまえば電車が走り出し、乗客を乗せて目的の駅へと降ろしていく。乗客や駅の状況を見て、路線を繋ぎ直したりすることもできる。

基本的なゲームの目的は、どんどん駅が増えていく中でどれだけ効率よく乗客を目的の駅に送りこむ路線図を敷き、駅のどこかで客が集まり過ぎて運行が停止してしまうまでにスコアをどれだけ伸ばせるかを競うのだ。

時間が経過するごとにランダムで新たな駅が出てくる。最初の○△□だけではなく、☆や◇型のマイナーな駅まで登場してくるため、それらに乗客を送り届けるように路線を組まなければならない。ほうっておくとどんどん乗客が駅に集まってしまう。

使える列車の数や、海や川を通り抜けて路線を敷くためのトンネルの数は限られる。

路線運営から一週間ごとに新たに使える電車や、より多くの乗客を乗せる後続車両や川や海を通って路線を敷くトンネルの数などを選ぶことができる。与えられた選択肢から状況に合わせてどんな戦略を立て、拡大していく路線を運営し続けられるのかがカギだ。

どうしても駅に乗客を貯めすぎてしまい、ゲームオーバーになってスコアが伸びない場合は
ゲームオーバーの無い『エンドレスモード』で最適な路線図を敷く練習を行うのがおすすめ。
ここでは右上のスコアは「どれだけ効率よく乗客を運ぶ路線なのか」を示す指数だ。

 
ワンプレイはおよそ10分から20分ほど。特定のスコアをクリアしていくごとに新たな都市のマップがアンロックされるのだが、都市ごとに特色が違う。

たとえば大阪のマップでは新幹線が使えるようになるし、カイロのマップでは列車に乗客を乗せられる人数が少ないなど、攻略が違ってくる。とてもシンプルな操作で短時間で遊べることも相まって、スコアを伸ばそうと何回も遊んでしまう。

特定条件をクリアすると、路線の引き直しなどができない、さらに難しい『エクストリームモード』もアンロックされる。初心者にとってはルールが理解しやすく敷居が低く、突き詰めれば高難易度へのチャレンジも用意されているなど万全だ。

気がつけば出来上がる路線図のデザイン

しかし最終的な目的こそ「いかにスコアを上げるのか?」というシンプルなものなのだが、一番の体験は適当に路線を繋いでいても、駅の構内で見かけるあのお馴染の路線図が出来上がり、しかもそれが音楽を奏でるように稼働しているのを眺める感動である。

ゲームスタート時は静かだ。何もない地図に、ほんの少しの駅が建っているだけだ。しかしそこに路線を引き、列車が走り出したときに音が響きだす。やがて駅が徐々に現れ、乗客が駅に集まり出す。乗客が列車に乗り込み、目的の駅へ降りていくのに合わせエレクトロニックなメロディが流れる。路線図が拡大していくごとに音楽も拡張していくのだ。

今日の路線図のデザインを定義した、ハリー・ベックの路線図
本作でもこの図を参考に路線図を敷くと普通にスコアが稼げる

 
最後に本作の最大のモデルについて触れておこう。今日までの路線図のデザインを作り上げたのはイギリスのデザイナーのハリー・ベックだ。彼はロンドンの路線図を現在のようなデザインにし直した仕事で有名だ。かつての路線図は通常の地図にそのまま上書きしていたのだが、凡雑で見辛いものだった。そこで一目でどの駅へと移動したのかを理解しやすいものへと路線図をデザインし、今日の券売機の真上で確認できる路線図のデザインのひな形となった。 

『Mini Metro』では最適な路線図を組み、長く運営していこうとすればするほど原点のハリー・ベックのデザインが姿を現していくことがすばらしい。ちょうど『Mini Metro』のマップ選択で最初にカーソルが当たっているのは、まさにこのデザインのひな形となったロンドンなのだ。

ハリー・バックとクラフトワークが結婚したかのような、美しい路線図のデザインと電車が稼働する音を模したエレクトロニカの音楽が混ざり合うとき、シンプルながらゲームプレイの中で音とグラフィックを構築していく醍醐味がそこにある。

[基本情報]
タイトル 『Mini Metro』(公式サイトはこちらから)
クリア時間 ワンプレイ20分程度 全路線図を出すまでは2時間ほど
全てのモードをやりこむならば20~30時間
対応OS PC
価格 980円

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