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りりこ、17歳。孤高な日常と妄想の交差点~Vol.2~【高校生ノベル】

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ーりりこ、高3、9月。

太陽はでしゃばりなのだろうか、9月の残暑がまだまだ厳しく夏服を着ていても制服のブラウスに汗がにじむ。自分の出番を最大限に活用している姿勢は見習いたいものだけれど、日本でビジネスするならそれはちょっといただけないね。

今年は俗に言う “受験生” なので、夏休みはほぼ皆無だった。家と予備校の往復っていう最高にクールな毎日…を過ごしつつ、社会人セミナーや、紀伊国屋さんとか青山ブックセンターで開催しているワークショップには足を運んだ。やっぱり私は、政治とか経済とか時事問題に関心があるから、そういうのには興味あるんだよね。そこでも、高校生と言うととても驚かれた。そして、それがまた嬉しい。新書を読むのが好きなんだけど、それを話し合う友達も学校にはいないし、定期的なアウトプットとしても、そこは有効活用している。

あとはスピーチコンテストにも出た。結果は悔しくも2位に終わったけど、意外にも日本の英語レベルが高くてびっくりした。日本の英語教育は色んな意味で “ヤバい” って聞いてたけど、みんなベースの知識とかがしっかりしてるから内容もブレがなかったし英語の発音もイントネーションも綺麗で聞きやすかった。

そんな夏休みも週1~2くらいのペースで “あの場所” に通った。いつも混み合っているのに集中できるのはなんでだろう。

入った瞬間、私めがけて勢い良く香ってくるコーヒーの香ばしい匂いに謎の安心感を覚えつつ混み合う店内を進んでいくと、そこは洗練された大人の空間。とても落ち着いている。みんなそれぞれが本を読んだり、パソコンに向かって仕事をしていたり。そこにいるだけで私までキャリアウーマンの仲間入りをしたかのような錯覚を起こす。

その日は、予備校の夏期講習の帰りだった、夜7時。まっすぐ家に帰る気分じゃなかった。お気に入りのカウンター席に座り、読みかけの『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』を開く。カフェの雰囲気に合う幸せの哲学とかじゃないあたりが私流ね。何事も語る前にはその分野の歴史を知らないとダメだって思ってるから『現代の経済状況が丸わかり!』みたいなのは、入門以降は読まずに根本を理解するようにしてる。これを読み終えたら『FREAKONOMICS』が読みたいな。日本では『ヤバい経済学』って名前らしいね。シンガポールで見かけてそのタイトルに惹かれたんだけど読めずじまいだったし受験間近になる前に読むか。

読書に集中していると、いつの間にか向かい座っている人が若い女の人に変わっていた。顔が小さくて、黒髪ボブの綺麗な人だった。その人も本を読んでいたので辺りを見回す振りをしてさりげなくカバーのタイトルをチラ見すると、

「……ケインズの逆…すごい同じ本…」

女性が顔を上げこちらを向いた。ああ、しまった。声に出ていた。女性は素敵に笑って、小さな声で「すごい偶然だね」と言った。

いわゆる “デキる女”。…かっこいい。

その人は外資系金融で働く26歳で名前はマミさんという。マミさんは、高校生の私がなぜこんな本を読んでいるかということに、とても興味を持ったみたい。初対面だったけど、20分は話したと思う。

マミさんも仕事柄金融経済の新書はよく読むらしく、久しぶりにパパ以外の人とアツく話せた。しかしマミさんは実際に世界経済の渦中にいるので私とは持論の深みが違った。私ってまだまだ未熟なんだな…と。この圧倒的な経験面での差に私はショックを感じるとともに、彼女への憧れを抱いた。とても充実した気持ちになった。

その日は素敵な出会いに感謝してfacebookを交換し、マミさんは仕事の続きがあるからといって去っていった。そろそろまたマミさんと話したいな。でも、忙しいのに連絡したら迷惑かな。そう思いながらfacebook のメッセンジャーで「お久しぶりです。また是非お話したいのですが」まで打ちかけたが、消した。

今は、自分の時間を過ごすことが心地よい。きっとマミさんも同じだ。

とりあえず今はスマホを閉じることにする。

(~Vol.3~につづく)

バックナンバー りりこ、17歳。孤高な日常と妄想の交差点~Vol.1~

大学生ライター

あぐり

アメリカの大学に9月から入学する新大学1年生。着物や歌舞伎などの日本の伝統文化とサブカルチャーが大好き。多趣味でハマったらどっぷりハマる性格なので本当に色んなジャンルの「オタク」界隈を通り抜けてきました。

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