不思議なネーミングの名物丼ぶり、「A丼」とは!?【博多】

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オイサッ オイサッ、オイサッ オイサッ。

勇ましい声が響き渡っております。

770余年の伝統を誇る「博多祇園山笠」。

そんな博多の夏の風物詩的お祭りの真っただ中に、博多の町にやって参りました。

厳密に言えば「博多っ子」ではなくて、「福岡っ子」のメシ通レポーターマツータケシです。

それにしてもこの季節、博多の総鎮守「櫛田神社」一帯はお祭りムード一色です。町中が熱気ムンムンです。

雄壮な舁き山(かきやま)に絢爛豪華な飾り山、そして水法被(みずはっぴ)&締め込み姿の男衆と、見所が満載。特に最終日の早朝4時59分に始まる「追い山」の迫力は圧巻です。血気盛んな男衆が一丸となって“ヤマ”を担ぎ、町を駆け抜ける姿には、いくつになっても胸が熱くなります。

みなさん“山笠があるけん博多たい” の名言はご存知でしょうか? そのうたい文句に間違いはないです。一度は見てってみらんね! ってことで、一度はこの時季の博多へ、ぜひ足を運んでみてください。

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▲「飾り山」博多の総鎮守・櫛田神社境内

ということで、今回はそんな「博多祇園山笠」の流れの一つ・土居流で、町総代(※町の代表者)を何度も努めたご経験をもつ生粋の博多っ子・田中五郎さんが営むそば店「古式生そば ひさや」を訪れてみました。

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「古式生そば ひさや」の創業は昭和21年。終戦後間もない食糧難の時代に「少しでも質の良いものを食べてもらいたい」と暖簾をかかげたそうです。

現在は御年85歳の二代目大将・田中五郎さんが現役で陣頭指揮をとっており、「味の追求に終わりはなかです。上を目指して努力を続けるのが面白かとです」と、志高らかに店を守り続けています。

そば一筋65年。「味を守るだけでなく、味を進化させることが料理人としての醍醐味」と語る大将が打つそばは、地元の人たちが“博多そば”と呼んで愛する逸品。正式にそんなジャンルは無いのでしょうが、そう言いたくなるほど唯一無二の味わいとの噂で、期待が高まります。

それでは中に入ってみましょう。

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お店の玄関口。老舗の風情が感じられる佇まいです。

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照明を抑えていて、落ち着いた雰囲気。座敷、小上がり、テーブル席といろんなタイプの座席が選べます。

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席に着いたら早速注文です。

取材日は、7月上旬。

通り雨が降って少し涼しかったとはいえ、気温は30度超え。

ここは、迷わず冷たいそばから頼むとしましょう。

「天ざる(1,350円)」を、お願いします!

と、お品書きを見ると、「A丼(650円)」なるメニュー を発見。

気になる名前に、かなり惹かれています。

注文する前にお腹の減り具合を確認すると、かなり食べられそう。

よし、お腹もエネルギー満タン補給を求めているということで、

「すいませ~ん。『A丼』もお願いします」と、追加注文しました。

技の結晶ともいえる、古式そば

さてさて、ここで「古式生そば ひさや」のそばについて少し語ってみます。

まずは店名にもある「古式そば」という聞き慣れない言葉ですが、これはつまり「手打ちそば」のことだそうです。

打ち方・切り方・茹で方・盛り方ひとつひとつを極限まで追求し、ほぼ独力で味を磨きあげてきた大将。その際に培った「手打ち」の技を総称して「古式」とネーミングしたのだそうです。つまり、大将の体に染みついた長年の経験が生み出す芸術的な逸品こそ「古式そば」であり、その唯一無二の味わいに敬意を払って博多の人たちは“博多そば”と呼んでいるのです。

ちなみに、おいしさの極意は「均等な大きさで、均一に茹であげること」だそうです。一本一本が同じ状態で器に盛り付けられることがそばの理想。それを65年、絶え間なくそばを打ち続けてきた、年季の入った職人の手で実現し続けているのです。

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見てください、この力強い職人の手を。

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「そばを均一に茹でるには、鍋に入れる時が一番肝心」と、神経を集中する大将。

絶妙のタイミングを見計らって、そばをほどくようにお湯の中に入れていきます。

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色、艶、踊り具合を見ながら、まんべんなく茹で上げていきます。

このような工程を経て完成したのが、こちら「天ざる(1,350円)」です。

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えび天2尾に季節の野菜天2種(取材日は、かぼちゃと玉ねぎ)。お膳からはみ出るほどのボリュームです。キレイな正方形をした海苔がちょっぴりチャーミングな、ざるそば。

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薄皮を除いた更級系の白っぽいそばは、透き通っていて見た目にも涼を感じます。

それでは、そばつゆにつけてズズッとひと口。

もちもちした弾力と、つるっとした喉越しが抜群に心地良いです。そしてカツオ・サバ・ウルメイワシなど数種の煮干しなどでダシをとった、しっかり味のついたそばつゆも絶品。九州産醤油の程よい甘辛さも交えて、そばの風味に華を添えています。

ちなみに使用するそば粉は鹿児島産。そば粉とつなぎの割合は、7:3の配合が一番混ざりやすく、粘りのあるコシを生むのだそうです。

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たっぷりと衣をまとったエビは、プリプリでサクサク。そばつゆとの相性もバッチリです。

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そば湯もしっかり頂きました。

さて、気になる「A丼」の正体は?

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この「A丼(650円)」は、「古式生そば ひさや」の裏名物。

衣をつけて揚げた丸天(さつま揚げ)を玉子でとじた一品だそうで、かなり昔からある人気メニューとのことです。ちなみに、この丼ぶりをお目当てに訪れる常連さんも多いのだそう。

一見カツ丼のようですが、具は丸天なので食感はプリっとしています。

丸天ならではの旨みが、トロトロ玉子にもご飯にも合います。

箸を進めるごとにクセになる味わいで「カツ丼はちょっと重たいなぁ」と感じる人に、ぴったりですね。

ところで、なぜ「A丼」というのか?

名前の由来を聞いてみると、

戦後間もないころに何かと外国の言葉が流行っていたこと、

高度経済成長とともにお店が繁盛したので短縮した名前を必要としたこと、

そんな理由から大将がネーミングしたそうです。

なるほど。

ちなみに、以前は「B丼」「C丼」というメニューもあったそうです。

卵とじにしていない「丸天丼(600円) 」もあるそうなので、これもぜひ試してみてください。

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冷たいそばが美味しいと、やっぱり温かいそばの味も気になります。

ここまでかなりの量を食べてきたのですが、メシ通レポーターの名にかけてここで引き下がるわけにはいきません。ということで、「鴨南そば(850円)」も注文しました。

こちらも、そばつゆと同様にカツオ・サバ・ウルメイワシなど数種の煮干しなどからダシをとっています。琥珀色の透き通ったスープは、さっぱりと優しい味。魚介と鴨(※こちらのお店では鶏を使用)の旨味と風味が加わって飽きることなく飲み干せます。

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お土産用ざるそば 二人前(1,000円)も販売しているので、ご自宅でも「古式生そば ひさや」の味を楽しんで。

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「元気バリバリ。90歳までは続けますバイ!」

と“そば愛”に溢れた大将。今時のお洒落なお店もいいけど、アットホームな昭和の匂いを感じる食事処もほっこりして、心が落ち着きます。

お店情報

古式生そばひさや

住所:福岡県福岡市博多区店屋町5-11

電話番号:092-281-1263

営業時間:11:00~19:00

定休日:日曜日

※金額はすべて消費税込です。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

書いた人:マツータケシ

マツータケシ

福岡在住。某出版社を経て、フリーのカメラマン&ライターとして活動中。好きな言葉は「一日三度のメシ」。福岡の安くてうまい穴場を発掘することにはまっている。

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