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草刈正雄、夏八木勲、平幹二郎ら名優たちの若手時代

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』では、普段は一人の役者への深掘りインタビューを通して得られた言葉をお届けしている。今回は、特別編として草刈正雄、夏八木勲、平幹二郎、仲代達也、加藤武、山本圭らの言葉から、若手時代のエピソードをお届けする。

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 当然のことではあるが、名優として最初から完成されていた者など、いやしない。先週まで登場していた佐藤浩市もそうであったように、ベテランたちの多くが、若手時代に監督や先輩たちから現場で怒鳴られて指導されながら、それを糧に成長してきた。今回は特別編として、役者たちが若手時代に怒られたエピソードを紹介していく。

 たとえば、現在は大河ドラマ『真田丸』で縦横無尽の活躍をみせる草刈正雄は、本格的な映画デビュー作となった『卑弥呼』での篠田正浩監督とのことを、次のように振り返っている。

「まったく監督に動かされるままやっていました。頭がガチガチで。アテレコの時は台詞が上手く言えず、よく怒られました」

 草刈の親友でもあった夏八木勲もまた、デビュー作『骨までしゃぶる』の撮影現場で加藤泰監督に絞られている。

「現場では監督の言われるままやりました。でも、走ったりする動きのあるシーンならいいんですが、桜町さん(弘子、主演女優)とやりとりするような芝居は監督の思うように出来ないんですよ。『はい、もう一度』って何度もNGを出されました。スタッフの人たちにも『ああ、夏八木のシーンか。午前は仕事にならんぞ』とよく呆れられていましてね。昼休みにみんなが飯に行っている間も、やりとりの稽古をしていました」

 できなくて怒られる場合もあれば、やり過ぎて怒られる場合もある。平幹二朗は後者だった。俳優座の公演『ハムレット』で仲代達矢扮する主人公の親友役を演じた際のことだ。

「僕には台詞がありませんでした。それで自分なりに役を一生懸命作ろうとしまして。時々立ち止まったり、考え込んだりやっていたら、千田さん(是也、俳優座の主宰)に『お前は犬のようにただ付いて歩きゃいいんだ』と言われまして」

 その時は主役だった仲代も、映画『七人の侍』のエキストラで出演した際は「歩き方が侍になっていない」と、ワンカットしか出ない通行人の役なのに撮影を止められ、半日も歩く練習を黒澤明監督にさせられている。黒澤といえば、加藤武にも映画『悪い奴ほどよく眠る』でなかなかOKを出さなかった。

「監督もびっくりしたろうね。こんな下手な奴とは思わなかったんじゃないかな。台詞を喋れば怒鳴られてばかりいた」

 大監督ともなれば、たとえ相手が親戚だったとしても容赦はない。山本圭の映画デビュー作は叔父の山本薩夫監督の『乳房を抱く娘たち』だった。

「撮影は朝の八時から始まっていたのですが、監督からなかなかOKがもらえない。『お前、養成所で何を勉強してきたんだ』って。でも、何度やっても駄目なんですよ。それで、9時、10時、11時になっても、私のせいでワンカットも進まない。その間に監督から罵倒の限りです」「私は居ても立ってもいられなかったです。初めての映画撮影の現場でしたが、初めて仕事場で泣きました」

 乗り越えるべき苦難を早くに経験し、心折れずに続けたからこそ、その後の彼らがあるのだ。

※週刊ポスト2016年8月12日号

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