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「シン・ゴジラ」は映画宣伝の常識を覆したのか?

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 7月29日に公開されたゴジラ・シリーズ最新作「シン・ゴジラ」は公開前、一部界隈においてその宣伝手法の特異性から興行成績が伸び悩むのではないかと危ぶまれていました。しかし、蓋を開けてみると週末興行成績で1位を獲得し、見事な成績を今も伸ばしています。
 さて、この「シン・ゴジラ」の結果によって邦画の宣伝手法は変わるのでしょうか。
 結論から言えば、本作は他の作品の参考にならないまさに「怪獣映画」のため、邦画の宣伝手法は「何も変わらない」と予想します。

映画宣伝の常識「ヒットには大々的な宣伝が必要」は本当なのか

 強烈な映画宣伝として多くの人の印象に残っているのは、鈴木敏夫プロデューサ率いるスタジオ・ジブリ関連作品の宣伝ではないでしょうか。まるで「絨毯爆撃」のような、大々的で派手な宣伝で、このような大作宣伝は97年の「もののけ姫」から顕著に変化しました。宣伝に大手広告代理店の電通が本格的に参画し、広告宣伝予算が大幅に変わったことが要因としてありますが、結果、動員数がそれまでは300万強であったジブリ作品を、宮﨑駿監督作品に限って言えば1000万超えが確実といって良いものとなりました。
 「映画は宣伝に金をかければ伸びる」という方程式は以前から存在しましたが、日本の興行成績オールタイムで頂点に立つ「千と千尋の神隠し」が大成功したことで「わかりやすい予告編」「大量に放送されるCM」「企業タイアップ」「大物俳優や有名タレントの起用」「主題歌の設定」等が「勝利の方程式」として確立し、定着していきました。これを否定する要素も存在したのですが、一般的に「映画宣伝に金をかける」ことは大作映画では当然となっていきました。
 そんな情勢のなか、輝く成績を残した作品の一つが「シン・ゴジラ」と同じ庵野秀明監督作品の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」です。09年に公開された本作は40億円で邦画において年間4位の座を獲得しましたが、本作は「音楽と映像のみの予告編」だけで、「大物俳優や有名タレントの起用」はなく、主題歌もほぼ取り上げられない、という極端に抑制された宣伝のみでした。
 本作がこの成績を残せたのは「エヴァンゲリオン」というシリーズの知名度の高さであることは容易に想像できます。この後ファミリー層以外のアニメでも好成績を残す作品が出てきましたが、これらは「週替りのうえ複数種を用意したランダム封入の特典」や「入場回数によって付与される特典」による動員が行われていることに留意する必要があります。

これまでの”常識”を覆す庵野秀明版「シン・ゴジラ」の宣伝

 さて「シン・ゴジラ」もまた「基本的には音楽と映像のみの予告編」で「主題歌はなく」、大物俳優は数多く出演しましたが、動員を見込めるアイドルや旬の若手俳優の登場は極端に少ない上に、あらすじの露出が制限され、試写会に招かれた報道陣には内容を漏らさないよう守秘義務が課されたとも言われています。そして、この「基本」を外れた宣伝手法についてはいわゆる「特撮ファン」の間でも疑問が呈され、興行成績が不安視されていました。

「シン・ゴジラ」大ヒット!その成功要因

 「シン・ゴジラ」公開後の最初の土日の興行成績は6億円超で、もちろん「IMAX」や「4DX」「MX4D」「D-BOX」という高付加価値の上映形態もあるのですが、注目すべきは前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」も目立った成績を残さないまでが評判の良かったというバックグラウンドを持つ「ヱヴァ破」の初動は35万人に対し、単体の映画で「続きが知りたい」需要が存在しない「シン・ゴジラ」は41万人を動員したということです。初動ですから、口コミの影響力も限定的と評価できるでしょう。もちろん「邦画はダメ」という一部映画好きの風潮なども考慮する必要があります。「宣伝の常識」から考えても、他の要素を見ても「周辺要素が」万全とは言い難い同作が良い成績を残したことは驚くべきものがあります。
 しかし、成功要因も多分にあるのが本作です。まず、「ゴジラ・シリーズ」という絶対的な要因がありますし、出演する俳優の数が非常に多いため、それぞれのコアファンが獲得できることもあります。当然「エヴァンゲリオンの庵野秀明総監督作品」というものもあるでしょうし、「平成ガメラシリーズの樋口真嗣が監督し、特技監督を務める純粋な怪獣映画」などもその期待を後押ししていることはほぼ確実です。また「ゴジラ・シリーズ」でも「子供向けではない、シリアスな作風」ということが影響していることは考えられます。
 そして、重要なのは「成功要因足りえる要素、特に動員に貢献するであろう強力なコアファン層を多数に擁するこんな化物じみたあらゆる意味での怪獣映画はそうそうないので、とてもじゃないけど他の映画は真似できない」ということです。今回の成績からはこの宣伝手法がどうなのか、ということはなんとも言えない、というのが事実です。

■関連リンク
映画『シン・ゴジラ』公式サイト

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