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なぜ大人にも人気?『MOE』編集長が絵本の魅力的な世界を紹介!

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最近、絵本を読む大人が急増中です。私も、大人になってから『うろんな客』という絵本に出会い、その不思議な世界の虜になりました。子どもの頃には、『わがままこやぎ』や『ぶんとろことたうたう』など、暗記して親に聞かせるほど好きな作品もあり、絵本の想い出はつきません。

 

子どもの心も大人の心も掴んで離さない絵本。今回は、そんな【絵本】がある暮らしを37年にわたって提案し続けている、雑誌月刊『MOE』(白泉社)の編集長・八巻健史さんにインタビューし、編集長の心の一冊や絵本の魅力、大人と絵本の関わりなどをお伺いしました。

最近の絵本事情

―― 最近、スマートフォンのアプリや動画で、子どもをあやす親も多いとも聞きます。【絵本】の存在は、昔と変わってきているのでしょうか?

 

「絵本を読み聞かせる若い親御さんも結構いますよ。全国の書店さんで絵本の読み聞かせイベントなどが盛んに行われていて、とても賑わっています。プロの朗読を聞いたり、子どもと一緒に絵本を選んだりと、絵本を介して楽しみながら子供と触れ合えるのが盛況の理由のようです。ビジュアル的にも楽しい絵本では、tupera tuperaさんが今年3月に出した『あかちゃん』などが注目されています。やはり、子どもは見た目で楽しめるものが好きなようですね」

 

―― 子どものためでなく、自分自身のために買う大人が増えていると聞きます

 

「お話にしても絵にしても、大人が読んでも面白い、感動する絵本の話題作が出ています。ヨシタケシンスケさんの『発想絵本シリーズ』、イラストレーションとしても素晴らしい島田ゆかさんや酒井駒子さんの絵本など、子どもから大人まで、とても人気のある作品がありますね」

 

「また、京極夏彦やさんや宮部みゆきさんなど、ミステリーやホラーを得意とされる作家さん達がお話を担当した『怪談えほんシリーズ』など、面白い切り口の絵本も人気です。そうした中で絵本への注目が高まっていて、雑誌やムックで絵本が特集されることも多くなりました」

 

―― かつて子供だった大人が、懐かしくなって絵本を買い求めているのでしょうか?

 

「それはもちろんあると思います。例えば、絵本のキャラクター展が大盛況なんです。2015年からスタートして、今も巡回中のディック・ブルーナの『誕生60周年記念・ミッフィー展』は大変な人気ですよね。展覧会に行ったり、子どもの頃に親しんだキャラクターを集めたりと、大人になっても“カワイイモノ”に囲まれて生活することに抵抗のない時代になりました。そういった影響もあるのか、誰でもが絵本を手にとりやすくなり、子どもの頃とは違う、大人ならではの絵本との付き合い方が出来るようになったのかも知れません」

 

『MOE』編集長の好きな絵本とは!?

―― 毎日多くの絵本に触れている編集長ですが、よろしければ“心の3大絵本”を教えてください!

『からすのパンやさん』 かこさとし

「そうですね…たくさんあるのですが…まずは1973年に出版された、かこさとし先生の『からすのパンやさん』。パン屋さんを営むからすの夫婦に4羽の赤ちゃんがらすが生まれて、パン屋さんの経営不振などをのりこえつつ、みんなで一生懸命働くお話です」

『からすのパンやさん』(絵・文)かこさとし
偕成社より

「からす一羽一羽に個性があり、それぞれ違う表情で描き分けらているので眺めているだけでも楽しいです。2013年には、続編が4冊出版されました。からすの子ども達が大きくなって、それぞれが『おかしやさん』『やおやさん』『てんぷらやさん』『そばやさん』を開くという内容です。かこさとし先生は御歳90歳で、実に40年ぶりの新作なんですが、パワーとユーモアが全開です。ぜひ、こちらも読んでみてください」

 


月刊 MOE(モエ) 7月号
Fujisan.co.jpより

『旅の絵本』 安野光雅

「2冊目は、安野光雅先生の『旅の絵本』。1977年に出た中部ヨーロッパ編から始まって、イタリア、イギリス、アメリカ、スペイン、デンマーク、中国、日本、と2013年までに8冊出ているシリーズです。俯瞰の構図で描かれた絵がすごく緻密で、所々に色んな遊びが散りばめられているので、見る度に新しい発見があって若い頃から大好きなんですよ。素晴らしい絵本だと思います」

旅の絵本/中部ヨーロッパ編 安野光雅著
福音館書店より

「昔は、今のように気軽に外国へ行けず情報も少なかったので、これを見てイメージを膨らませたりしました。新刊で『日本編』が出るという時に、安野先生にインタビューさせていただきましてね。先生は本当に気さくでステキな方で、大変、感慨深い体験でした。そういう意味でも、“心の”絵本として挙げさせていただきました。」

 


MOE (モエ) 2013年09月号
【特集】安野光雅「旅の絵本」日本の原風景を描く
Fujisan.co.jpより

『ノラネコぐんだん パンこうじょう』 工藤ノリコ

「3冊目は、工藤ノリコ先生の『ノラネコぐんだん』シリーズ。これは、『MOE』の姉妹雑誌『kodomoe』でスタートした企画で、現在3冊出ています。ワルなんだけどかわいくて憎めないノラネコたちが大暴れする作品です。

『ノラネコぐんだん パンこうじょう』(絵・文)工藤ノリコ
kodomoeのえほん

「毎度、ノラネコたちは悪巧みを計画して騒動を巻き起こして、全然良い子達じゃないんですが、それが愉快でね。かならず最後に正座して反省させられる姿もキュートです。絵本作家の工藤先生は漫画家でもあるのですが、僕は以前から先生の漫画が好きで。創刊したばかりの『kodomoe』から生まれたヒット作品ということで思い入れも強く“心の”絵本とさせていただきました」

kodomoe(コドモエ)
Fujisan.co.jpより

ビジュアル雑誌としての『MOE』

――『MOE』は、どんな方に読まれているのですか?

 

「女性が大多数です。30代~50代が中心ですが特集によっても違います。例えば『名作絵本』などは、わりと御年輩の方が興味を持ってくださったり。『ムーミン特集』の時は若い方も見てくださったりなど、20代から70代までと幅広い読者の方がいます」

 

――『MOE』の誌面作りへのこだわりを教えてください。

 

「月刊MOEは、絵本をはじめキャラクター、児童文学、アート、映画、漫画など女性が興味を持つカルチャーを幅広くご紹介しているビジュアル誌です。絵を魅力的にお伝えするために、誌面のレイアウトにこだわりますし、紙も、絵が沈んだり再現性が悪くならないようなものを選んでいます」


月刊 MOE(モエ)
Fujisan.co.jpより

「読者に物語の世界に浸ってもらうことが大切だと思っていまして、そのことをいつも意識しています。作品の魅力的な場面、物語の舞台となった現地の写真、作者や縁の方たちのインタビュー、またファンにとっては雑貨やテーマのショップなども興味のあることなので、そうした物語世界が伝わるようにと作っています」

 

「また、インタビューさせていただいた方の魅力を、もっとも伝えられるお写真を載せることも大切にしています」

 

大人も子供もとりこにする絵本の魅力

―― 編集長がお考えになる、良い絵本の条件とは何ですか?

 

「絵とお話が両方とも素晴らしく、言葉のリズムが良くて心を捉えるものがある作品でしょうか。絵と文が別の方である場合、作家さん同士の相性はとても大切で、その間をとりもつ担当編集者のアイディアやマッチングなども、作品への影響が大きいと思います」

 

―― 読者として、絵本のメッセージを的確に受け取るための読み方などはあるのでしょうか

 

「特定のメッセージを受け取ろうとして読むのは、大人ならではの考えだと思います。絵本には、親子や友達どうしで一緒に読んだり、読んであげたりするコミュニケーションツールとしての面もあって、他の人と一緒に楽しめるのが、絵本の素晴らしいところでもあるんですよね。メッセージも大切ですが、あまり難しいことは考えず、とにかく楽しむことが大事なのではないでしょうか。メッセージやアート性ということは、子どもも大きくなるにつれて感じとりますし、大人も子どもも自由に感じればいいのではと思います」

 

―― では、最後に『MOE』読者や、これから絵本を手に取ってみたい方にメッセージをお願いします。

 

「いま、新しい絵本クリエイターさん達がつぎつぎと出てきていて、絵本の世界はすごく活気に溢れています。人気のヨシタケシンスケさん。谷川俊太郎さんと漫画家である松本大洋さんがコラボした『かないくん』。また、地図絵本の『MAPS』が話題になったりなど、ますます大きな広がりをみせています。ぜひ、ココロの琴線にふれる一冊を探してみてください。また、『MOE』を通じて、その作品のキャラクターのや物語や背景まで深く掘り下げて、世界観を広げてもらえたら嬉しいと思います」

 

八巻編集長、お忙しい中、ありがとうございました!


※編集長の手には、ミッフィーの時計が着けられていました!


編集長が描いた絵
編集長が即興で描いてくださった、ノラネコが反省して正座しているところ。

 

八巻健史 やまき たけし

月刊MOE編集長 

 

1988年 株式会社白泉社 入社

別冊花とゆめ編集部を経て

2012年より月刊MOE編集長

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