ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

電気自動車がお財布そのものに!? デジタルウォレットの可能性

DATE:
  • ガジェット通信を≫

ドイツのベンチャー企業、Slock.it(スロックイット)が、電気自動車の「デジタルウォレット化」に向けて、大手エネルギー会社・RWEと共同で新たな決済システムを搭載した電気自動車を開発中だ。電気自動車が「デジタルウォレット化」するってどういうこと? また、どんなメリットがあるの? 電気自動車が秘める可能性に迫る。

信号待ちのわずかな時間に、電気自動車を充電!?

「未来は、すべてが電気自動車になる」。そんな未来予想図が語られていたこともあるが、実際のところ、日本における電気自動車の普及率は、当初業界内で言われていたほどには伸びていない。その背景には、充電インフラの整備が進んでいないことがある。当然だが、電気自動車は、自宅もしくは充電スタンドで充電する必要があり、「充電中はクルマを使えない」という、非常に大きな問題を抱えている。

加えて、充電スタンドでは30分や1時間など、時間単位で料金が請求され、「ちょっとだけ充電したい」というニーズに対応できていないといった不便さもある。現状の電気自動車は、航続距離において、フル充電でも満タンにガソリンを搭載した通常のガソリン車に遠く及ばず、さらには一度にたくさんの電気を充電することができないため、小まめな充電が必要とされるのも不便さに拍車をかけている。

こうした不満を解消する手段として期待されているのが、冒頭のSlock.it社が実現しようとしている「電気自動車をデジタルウォレット(財布)にする」こと。電気自動車自体に、クレジットカードなどと連携させた電子端末「デジタルウォレット」をリンクさせ、乗ったままでさまざまな決済ができるようにしよう、という試みなのだ。

実現すると、充電スタンドでは時間単位ではなく電力の補給量単位で決済ができ、たとえば信号が赤から青に変わるまでのわずかな時間で、道路上に設置された充電スポットから小こまめに充電する、などということも可能になる。充電スポット側でユーザーを認証し、同時に決済までオンライン上で自動的に行われる、スマートなシステムなのだ。

さまざまな企業が参入! 電気自動車の明るい未来

Slock.itのステファン・チェアルCOOは、ビジネス系ニュースサイトのインタビューで、「電気自動車全体がデジタルウォレットになる」と説明。料金システムが簡潔化されるだけではなく、各充電サービス会社が発行している認証カードを何枚も所有する手間も省けると利点をアピールし、将来的に、世界中の電気自動車への対応を目指しているという。

同社では今後、ドイツで60台の電気自動車を使い、試運転を始めるという。ソフトウエア開発分野で20年以上の経歴をもつベテラン勢が立ち上げたSlock,itのブロックチェーン技術(仲介者なしで信頼性の高い決済が可能な分散型コンピューティング技術)と、3,000万人の顧客をもつRWEのエネルギーネットワークとの融合で、「電気自動車における革新的なサービスが展開されていくのでは?」と世界中から期待されているのだ。

ブロックチェーンを利用すれば、仲介者を飛び越えて直接のやり取りも可能に

トヨタが取り組む自動車のウォレット化

電気自動車の事例ではないが、自動車のデジタルウォレット化に取り組む例はほかにもある。米国にあるトヨタIT開発センターは、IT大手企業・SAPと共同で開発し、2015年10月から提供が開始された自動車IoT用クラウドサービス「SAP Vehicles Network」を導入。自動車のウォレット化実現に向けて動き出している。ガソリンスタンドや飲食店、駐車場などがSAP Vehicles Networkに登録することで、ドライバーは、車内アプリやモバイル端末から各社のサービスを利用できるのだ。

たとえば「コネクテッド給油」。ガソリンの残量をクルマが感知し、近隣のガソリンスタンドと価格を表示。ドライバーが給油先を選択すれば、目的のスタンドまでナビもしてくれるというもの。ネットワークを介して通信することで、注文や決済までも代行してくれるのだ。

「保険」や「リース」などの契約も自動化へ

デジタルウォレット化する電気自動車では、単にその場の決済がスムーズになるだけではなく、契約を自動的に行うサービスも検討されているようだ。たとえば、クラウド型電子署名サービスを提供するDocuSign社では、今後、自動車にまつわるさまざまな契約もスマートに行うことができると主張している。

ダッシュボードに設置された画面から車内アプリを使って、保険やリース契約、決済カード登録などの操作ができ、契約内容もすべて「ブロックチェーン」で管理されるというものだ。本来、契約の際に必要な署名や捺印、契約書の管理などの手間が省け、効率的な契約を実現できるとされている。さらにシステムが進化すれば、自動車購入時の手続きまでも自動化し、自動車の登記もオンライン上で管理できるかもしれない。

車内アプリ自体に契約情報を持たせるのではなく、あくまでブロックチェーンで管理するというのが大きなポイントになる。ブロックチェーンは、取引記録をひとつのブロックにまとめて、それぞれのブロックを鎖のようにつないでいく分散コンピューティング手法だ。これにより、データの変更やサイバー攻撃による契約の改ざんが不可能になるため、特定の仲介者を通さずとも、安心して利用できる。

デジタルウォレット化した電気自動車が実現すれば、今まで電気自動車が抱えていたデメリットを解消するとともに、注文や決済の自動化、果てはリース契約の更新など、ドライバーの優秀なアシスタントになるだろう。法や制度の整備など、多くの課題はあるかもしれないが、電気自動車や自動車向けデジタルウォレットがどのように進化していくのか、今後の動向に注目していきたい。

関連記事リンク(外部サイト)

もうお金は持ち歩かなくてもいい!? 注目キーワード「フィンテック」とは?

TIME & SPACEの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP