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実名報道

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 最寄りの駅近くにある喫茶店は、週刊新潮と週刊文春を置いてあるので、毎週土曜日に、コーヒーを飲みながら読むことにしている。
 週刊新潮6月30日号は、犯行時に加害者が少年であった石巻殺人事件で、元少年について死刑が確定したことから、毎日新聞と東京新聞を除いたマスコミが元少年の実名を報道したことに関する記事を掲載している。若干違和感を覚えた。

 犯行時、すなわち加害者が少年であった当時、マスコミは、加害者が少年であることから、少年法61条を重視して、匿名報道としていたが、週刊新潮の要約によれば、マスコミが死刑確定を受けて実名報道に切り替えた理由について、

(1)少年法の趣旨は社会復帰を前提とした更生にある。死刑囚にはその機会がないから、実名を報じるべきである
(2)国家によって生命を奪われる刑の対象者は実名で報じられるべきである
とされている。
 週刊新潮は、「少年法61条のどこをひっくり返してみても、『死刑が確定したら』などという規定はない。つまり新聞社は独自の法解釈で実名報道を行っているに過ぎない。」と、今回の実名報道を批判している。

 さらに、かつて週刊新潮の同系列誌である「新潮45」が少年の実名を報道したことについて、マスコミ各紙が少年法違反と批判したこととの対比において、「各紙、法に触れること自体が悪であると言わんばかり。
 一方では自らも同様のことをしているのだから「ご都合主義」と言われても仕方あるまい。」としている。

 ここで「自らも同様のこと」というのは、少年法61条に反して実名を報道したことを意味している。しかし、週刊新潮が、「死刑が確定したら」という文言などどこにもないとして各紙を批判するのはやや的外れであるような気がする。
 少年法61条は、少年が未熟であることを理由として社会的に保護する必要性があり、またその可塑性を理由として矯正を期待できる少年の段階での更生が相当であると考えて設けられたものである。
 このことについては、ほぼ異論はないはずである。つまり、少年法61条に違反するかどうかは、形式的な文言によるのではなく、その立法趣旨を検討して判断すべきことである。
 とすれば、前述した、少年法の趣旨は社会復帰を前提とした更生にある、死刑囚にはその機会がないから、実名を報じるべきであるとの理由には、一応の納得性があり、また、「新潮45」の実名報道を批判したことと矛盾するものではないと思うのである。

 さらに、「メデイアの本来のあり方から言えば、死刑が確定するかしないかといったことは、実名報道とは関係ない。その犯罪が重要で、実名を知らせるべきと思えば、報じれば良いのだと思います。死刑判決があったからとか、更生可能性がなくなったからというだけで画然と実名にするというのは、あまりに機械的な理由で、思考停止と言わざるをえません」との学者見解を紹介している。
 この学者見解にも疑問符がつく。

 先に述べた少年法の趣旨からすれば、実名報道と死刑の確定は関係がないと言い切れるとは思えないからである。
 犯罪の重要性を理由に、少年法61条を無視して、「報じれば良いのだと思います」との意見は、あまりにも少年法を無視するものではないだろうか。
 そして、今回のマスコミは、死刑判決が確定したことをもって、少年法の趣旨に反することはないと判断して、実名報道をしたのであろうから、「機械的な理由」での実名報道であると断じることにも多大な疑問が残るのである。

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