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エンジニアの理想的なワークスタイル・食・結婚とは? 「Seasar2」開発者・比嘉康雄氏インタビュー

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エンジニアの理想的なワークスタイル・食・結婚とは? 「Seasar2」開発者・比嘉康雄氏インタビュー f:id:Meshi2_IB:20160719204937j:plain

東京都港区芝浦にあるKITCHEN Buona Donna 。

このお店をよく訪れるのが、オープンソースのJavaアプリケーションサーバー「Seasar2」の開発者の比嘉康雄さんだ。

技術界隈ということで共通の知り合いはちょこちょこいるものの、筆者は比嘉さんのことをよく知らなかった。彼はいったいどんな人で、なぜこの業界にいるのか。お酒を交わしながら話を聞いた。(レポーター・太田智美)

比嘉康雄

話す人:比嘉康雄

株式会社 電通国際情報サービス (ISID) 所属。子どもの頃からシャーロックに憧れている。問題を探し出し、解決するのが大好き。現在は「人はどんなときに踊りたくなるのか」という問題を解くために、DJ活動に取り組んでいる。

必死で取る1番より、遊んで2番がいい

「努力はカッコ悪い。努力は悪だ」──大学生になるまでずっとそう思っていたと比嘉さんは言う。彼は小学校高学年から常に「努力せずに達成できる方法」を考えてきたそうだ。

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例えば、こんなエピソードがある。大学受験といえば、たいていの場合、塾に通ったりおすすめの参考書を買ったりして勉強する。しかし彼は違った。まずやったのは「いかに勉強せずに大学受験に合格するか」の研究。そのために毎日1時間ほど、本の帯などに書いてあるたくさんの合格体験談を本屋で立ち読みしたという。

大学受験で一番効率が良いのは「基礎問題を解くこと」と「行きたい大学の過去問をひたすら繰り返し解くこと」。特に基礎問題は、中級くらいまでの問題がすべて解けるようにしておくことが重要。

これが、彼の導き出した研究結果だ。当たり前といえば当たり前。私が注目したのは、彼の行動そのものだった。

彼はトップクラスに属することにはこだわるものの、地道に努力するのが得意ではない。初めは一番いい成績を取ろうとして効率よく勉強するが、すぐトップクラスの成績を取り、飽きてしまうという。「朝から晩までコツコツ勉強する人には追い抜かれていく」と、比嘉さんは赤裸々に話す。

努力して成績が良いのは当たり前。1番はもちろんうれしいけど、必死になって1番良い成績を取るより、遊んで2番の方がいい。(比嘉さん)

彼がこの業界に入ったのは、自分や他人を「ラク」にしたかったから。企業において、どれだけシステム化をしているかが人をラクにするキーになると考え、当初志望していた経営コンサルタントから技術者へ舵を切った。

ワインの味と香りをすべて言語化しデータにまとめる

そんな彼が、「まじめにやること」に一瞬目覚めた出来事があった。大学1年生の頃に通っていたワインスクールでのことだ。それまでブラインドテイスティング(どんなワインかわからない状態でテイスティングすること)は味覚、嗅覚の優れた人ができるものだと比嘉さんは思い込んでいたが、科学的に能力を伸ばす方法を発見した。それはすべての感覚を言語化すること。彼は何冊ものノートに味覚を書きとめた。

どのような香りがして、どんな味がするのか、その香りや味は土地に由来するものなのか、それともぶどうの品種によるものなのか。異なるワインの中にもし共通点が見つかれば、メモに加えた。そして分析が終わるとノートは捨てた。

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彼がワインスクールに通い始めたのは、有名グルメ漫画に影響を受けてのことだった。主人公が牡蠣とシャブリ・ワインを合わせたところ「牡蠣に合うのは日本酒だ。白ワインと合わせると苦味が出る」と反論する人がいた。そのころ「牡蠣には白ワイン」とい

うのが世間の常識だったが、この漫画を見て比嘉さんは自分の舌で確かめたくなったと言う。

あれこれ試してみて分かったのは、「合う、合わないは牡蠣やワインの種類、それに食べ方次第」だということ。例えば、「牡蠣にレモンを絞れば白ワインと合う」といった具合に記録を付けていった。同様に、映画のワンシーンに出てきたいちごにシャンパンを合わせるという組み合わせも実践したそうだ。

しかし、

辛口のシャンパンにいちごは合わない。

それが彼の結論だった。

このように、すべてを自分の舌で確認し、ワインだけでなく、食べ物と飲み物の組み合わせもすべてノートに記録していった。

しかし人間の味覚とは相対的であいまいなものだと比嘉さんは言う。

ワインはシチュエーションによってかなり左右され、一緒にいた人やそのときの会話などが味覚の要素として加わってくるんです。そのため、僕は基本的に、自分の味覚を記録し、それを世間一般で言われてる評価と照らし合わせていくプロセスも大事にしています。

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比嘉さんが最近飲んでいるのが、コンビニエンスストアで見つけた「KWV(南アフリカブドウ栽培協同組合)」の800円ほどの赤ワイン。

特に固有の香りがしない、しいていうなら赤紫色の花びらを垂らしたような香りで、味はおだやか。和食やスープ、パテのような料理に合うワインですね。

ちなみに、安いワインは固有の香りがしないのだとか……。

人生で食べたラーメンは10食

ここで彼のライフスタイル、とりわけ食生活について聞いてみた。

比嘉さんは「太ること」について、強い拒否感を示す。

個人的な意見ですが、太っているというのは健康的でなく、ガタがきやすい。太っているのはだめだと思うし、自分自身絶対に太りたくはない、と考えています。

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▲本日の前菜5種盛り合わせ(1,480円)

エンジニアの大好物といえば深夜のラーメン。しかし、そんなラーメンさえも比嘉さんは人生で10食ほどしか食べたことがないという。

僕自身ラーメンが好きなのか嫌いなのか、実際にどうなのかは分からない。確実に言えることは、自分自身をマインドコントロールしているということ。ラーメンは太る食べ物だから嫌いだし、同様に太りそうな食べ物は嫌い。卵かけごはんなども、炭水化物だから食べたいとは思わない。(比嘉さん)

そのスタンスは徹底しており、日頃から炭水化物をあまり摂取せず、深夜におなかがすいたらたんぱく質を取るようにしているという。

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▲ボナドンナ風パテ・ド・カンパーニュ(880円)

比嘉さんが最近ハマっているのが、コンビニエンスストアで売っている「ザバスプロテインミルク」という商品。1本170円弱くらいの値段で、空腹時に飲むと満腹感が得られるという。

飲み会のあとギトギトのラーメンを思う存分食べる派の筆者にはとても考えられない生活だが、これが比嘉さんの健康の秘訣のようだ。ただし、お酒の量はあまり気にしないとのこと。

結果を出したいなら、子どもが出来る前に

毎日の睡眠時間は約5~6時間。朝は6時に起きて夜は12時半に寝るというサイクルで、次の日に頭をフル回転させるための睡眠を取るようにしているという。

比嘉さんにとって一番大切なのは、脳が働き続けること。睡眠はもちろん、仕事中30~40分に1回は席を立ち廊下を歩くなど、血流を良くするための運動も欠かさない。

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▲ツブ貝とマッシュルームのエスカルゴバター焼き(980円)

ところで、プライベートの比嘉さんは1児のパパでもある。だからこそ、仕事とのバランスは常に考えておくべき、と語る。

子どもはとてもかわいいけど、それによって失うものも正直多い。中でも、やはり圧倒的に時間が削られます。どうしたって自分の時間は4割減りますから。夜中に子どもが起きるかもしれないし、何かと子ども中心の生活となっちゃうし。だからエンジニアとして何らかの結果を出したいなら、結婚して子どもが出来る前に成し遂げた方がいい。

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卒研テーマは「カバンの持ち方」

技術者の場合「自分ごと」からサービスがはじまることも多い。例えば、GitHubやEvernoteがそうだ。自分が欲しいと思ったツールを自分で作り「これいいでしょ、便利だよ。みんな試してみて!」というところから始まった。

しかし、比嘉さんの場合はそうではない。

自分はもっと文系っぽいのかもしれませんね。

比嘉さんの名を世に広めた「Seasar2」を作った動機は、友人にあった。

ある日、友人に「こういう機能があるアプリケーションサーバーを探してるんだけど、何か知ってる?」と問われたのがきっかけだ。

そのとき、比嘉さんは「よく知らないけど、僕なら作れるよ!」と言って作り始めた。自分が欲しかったわけではない。

それが2002年のこと。「Seasar2」が正式リリースされる2年前のことだ。

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そもそも彼には「問題を解決する方法を考える」ということ以外興味がない。ITそのものが好きなわけでも嫌いなわけでもなければ、好きな言語や技術、環境、愛用のテキストエディタがあるわけでもない。

エンジニアは自分の好きな技術や環境に囲まれて仕事をすることを好む傾向があるけど、ぼくは興味がないんです。

比嘉さんの徹底した「問題解決思考」は一貫している。大学受験、ワインの言語化、「Seasar2」……。すべて課題を解決するために一番効率の良い方法を選択したに過ぎない。

何より優先すべきは「自分がやりたいことよりも、誰に何を求められているか」だった。

そのことを示す、ちょっとおもしろいエピソードがある。大学の理学部生命理学科に在籍していたとき、卒業研究に選んだテーマはなんと「かばんの持ち方」。年代・性別によってかばんの持ち方がどう違うかを道でカウントした結果「女性は、赤ちゃんに心音を聞かせながらだっこすることが、遺伝子にプログラムされているので、

かばんを左ひじに掛ける人は女性に多い」という結論を出したそうだ。

ただ、この結論が正しいかどうかは彼にとって興味がない。「(研究者や教授ではない)一般聴衆に求められるような面白い結論かどうか」が彼にとってもっとも重要なことだった。研究として正しいかどうかではなく、どんな結果であれば一般聴衆が面白いと感じる研究になるか、そんな視点で論文を書いたという。

彼はこのIT界隈ではめずらしく、24年間一度も転職をしたことがない。

頭を使うのが好きで、難しい問題を自分なりに解くのが好きなアーティスティックなエンジニア。お気に入りの白ワインを揺らしながら、今日も独自の目線で問題に立ち向かう。

話を聞き終えたころ、筆者の右手にはもう7杯目となるジンジャーハイボールが空いていた。

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最近は、人の動き(主にダンス)を楽譜化するという技術をベースに、ビジネス化に取り組んでいるという。

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いったい人は、どんなときに踊りたくなるのか、どんなときに体を動かしたくなる(エクササイズなど)のか。最近はこの問題を解くため、DJ修行をしたり、パーソナルトレーニングジムで体を鍛えているという。

お店情報

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KITCHEN Buona Donna (キッチン ボナ ドンナ)

住所:東京都港区芝浦2-1-10 K.T.Y芝浦ビル1F

電話番号:03-6453-8228

営業時間:11:30(日曜日は12:00)~15:30 、17:30(土曜日・日曜日は18:00)~23:00(LO 22:30)

定休日:不定休

ウェブサイト:kitchenbuonadonna

※金額はすべて消費税込です。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

書いた人:太田智美

太田智美

小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。2011年、アイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わる。2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属、2016年4月よりITmediaニュースで記事執筆などを行う。プライベートでは約1年半、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボット―パートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。 Twitter:@tb_bot

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