古民家の知恵と技を受け継ぎ、夏の日差しと風も心地よく

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古民家の知恵と技を受け継ぎ、夏の日差しと風も心地よく

「家のつくりようは夏を旨とするべし」と徒然草にあるように、日本家屋には湿気が多く日差しも強い夏を涼しく過ごすための知恵が詰まっている。築90年の古民家をリノベして初めての夏、「エアコンがなくても涼しい」と実感したわが家の通風採光の工夫をご紹介します。

自然も味方に! 日差しの強さや角度は季節によって大きく変化する

平屋に住んでみると、季節の変化に敏感になる。日の出の時間によって早く目覚めるので自然にサマータイムになり、入ってくる日差しは強く、角度も変わる。冬場に引越したとき、室内が思ったより暗いなぁと思ったが、夏場は家の奥まで光が入るようになった。しかしながら、日が入るということは、暑いということでもある。

さらに、変化が激しいのが庭木。人間以上に季節の変化に敏感で、春になると土色だった庭に緑が増え、夏は気を抜くと足の踏み場もなくなるほど雑草たちが暴走する。雑草の手入れは大変だけど、気付けば生い茂る庭木にも涼しく過ごすための知恵が。

夏の強い日差しを、木陰が和らげてくれ、さらに日本家屋の深い軒や庇(ひさし)が直射日光をカット。さらに縁側に簾(すだれ)を取り付ければ、夏仕様の家が出来上がり。どれも光や風を通しつつ、視線を遮ることができるので、心おきなく窓を全開にして風を入れることができる。【画像1】左:冬場は庭木も全て葉が落ち、日差しを遮るものもないので家の中は明るく暖かい(写真撮影/片山貴博) 右:夏場は赤と緑二色のもみじの葉が茂り、周囲からの視線と日差しを遮ってくれる。縁側には簾、風鈴、睡蓮鉢(すいれんばち)などで夏仕様に(写真撮影/古川公元)

【画像1】左:冬場は庭木も全て葉が落ち、日差しを遮るものもないので家の中は明るく暖かい(写真撮影/片山貴博) 右:夏場は赤と緑二色のもみじの葉が茂り、周囲からの視線と日差しを遮ってくれる。縁側には簾、風鈴、睡蓮鉢(すいれんばち)などで夏仕様に(写真撮影/古川公元)

家も衣替えで夏仕様に。機能的な簾を使ってDIY

縁側だけでなく、室内にも簾を使って、家全体を夏仕様に模様替え。周辺を2階・3階の建物に囲まれた平屋なので、窓を全開にして風を入れたいと思ったときに一番気になるのが周囲の視線。そこで気になる窓の外に簾をつけたり、室内側につけたりしてみたら、これが大正解! 視線を遮る・日差しを遮る・風は通す、の良い事づくめ。寒そうに見えなければ冬もこのまま使いたいくらいだ。

実はこの簾、ネットでひとつ1000円未満にて調達。わが家はとにかく窓が多い日本家屋なので数が多くなったが、かさばっても軽いし、配送してくれるので楽だ。専用の「巻き上げ器」(300円未満)なるものを使えば、簡単にクルクルとロールアップでき、カーテンやロールスクリーンより安上がりで手軽。後はひっかける場所を決めてつるすだけ、という、DIYが苦手な私でも楽勝なアイテム。手軽な割に、わが家のインテリアにもマッチして大変好評。【画像2】写真右:簾は窓の外につるして主に目隠ししつつ通風、室内につるしてロールカーテン代わりに、どちらにも使うことができて便利(写真撮影/長井純子)

【画像2】写真右:簾は窓の外につるして主に目隠ししつつ通風、室内につるしてロールカーテン代わりに、どちらにも使うことができて便利(写真撮影/長井純子)

和風インテリアのポイント・木製建具の引き戸は夏も大活躍

築90年の古民家の外観はそのままに、室内は間取りから断熱などの基本性能や設備まで一新してリノベーションしたわが家。キッチンなどの水まわり設備は最新のものを選んだが、インテリアのポイントとして建具は古い物にこだわった。さらに建具は冬や冷暖房時は各部屋を閉め、普段は開放できる引き戸にした。

これが夏も大活躍。リビングダイニングは10.5畳の広さだが、和室6畳、廊下3畳と縁側までを引き戸を開放してつなげれば20畳以上に。簾で視線と日差しを遮りつつ、風通しのいい開放的な空間を楽しめる。【画像3】縁側の簾を下ろしておくことで、室内は窓も引き戸も全開にすることができ、風通しが良い。引き戸も開放して室内と縁側、庭までがつながり開放感あふれる空間に(写真撮影/古川公元)

【画像3】縁側の簾を下ろしておくことで、室内は窓も引き戸も全開にすることができ、風通しが良い。引き戸も開放して室内と縁側、庭までがつながり開放感あふれる空間に(写真撮影/古川公元)

わが家のインテリアのポイントである古い建具だが、元の家にあったものは全て再利用したものの、それだけでは足りず他の家にあったものも譲っていただきき利用した。

【画像4】写真左上:解体された古民家から傷んでサイズも色味もバラバラな建具を運び、現場で職人さんたちが合わせる。写真左下・右:運んできた木製建具に元の家にあった昭和レトロな模様ガラスを組み込んで修復し、玄関ホールに。外部からの視線を遮りながら光と風を通し、インテリアとしてだけでなく機能面でも秀逸(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子)

【画像4】写真左上:解体された古民家から傷んでサイズも色味もバラバラな建具を運び、現場で職人さんたちが合わせる。写真左下・右:運んできた木製建具に元の家にあった昭和レトロな模様ガラスを組み込んで修復し、玄関ホールに。外部からの視線を遮りながら光と風を通し、インテリアとしてだけでなく機能面でも秀逸(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子)

さまざまな家から集めた建具はサイズも色もバラバラ。建具屋さんによるサイズ調整や傷んだ部分の修復、塗装で色味の調整、など手間やお金はかかる。しかし、それ以上に違う所で長く活躍してきた古い物がここに集まり、新しく生命が宿る様は楽しく感動的ですらあった。【画像5】文政8年(1825年)というから、築200年近い古民家にあった木戸を入手。これを建具職人さんが現場の雰囲気とサイズに合わせて切って、足りない枠部分は新しい木材を足して、扉の形に。新しい木材は塗装職人さんによって色味調整され、これら職人技の積み重ねでリビングの一角に存在感のある造り付け収納扉が完成(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子) 【画像5】文政8年(1825年)というから、築200年近い古民家にあった木戸を入手。これを建具職人さんが現場の雰囲気とサイズに合わせて切って、足りない枠部分は新しい木材を足して、扉の形に。新しい木材は塗装職人さんによって色味調整され、これら職人技の積み重ねでリビングの一角に存在感のある造り付け収納扉が完成(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子)【画像6】曲線と直線を組み合わせたデザインが気に入った障子。何かに使えないものかと持ち帰り、結局幅を足したり一部切ったりしてサイズ調整して和室押入れ上に。エアコンで和室の趣を損ねないよう、目隠し兼収納扉として活躍中(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子)

【画像6】曲線と直線を組み合わせたデザインが気に入った障子。何かに使えないものかと持ち帰り、結局幅を足したり一部切ったりしてサイズ調整して和室押入れ上に。エアコンで和室の趣を損ねないよう、目隠し兼収納扉として活躍中(完成写真撮影/片山貴博、工事中写真撮影/長井純子)

夏涼しく過ごすポイントは、日差しのコントロールをしつつ風を通すこと。もちろん断熱材を入れるなどの基本性能を高めたおかげもあるが、古くからの和の知恵である深い軒や庇、簾、木製の引き戸などで、エアコン嫌いな私も暑い夏を快適に過ごせそうである。簾はお手軽に入手可能だし、木製建具も基本的なサイズが合えば微調整で活用できる。古民家でなくても、マンションの和室や空間の間仕切りなどでインテリア的に活かすなど、使い方も工夫次第。解体する実家など、身近にピンとくる古い建具があったら、ぜひ使い道を考えて活かしてあげてほしい。古き良き、和の知恵、万歳!!
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/07/115379_main.jpg
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