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【イノベーターズ】「インターネット時代に編集者はなにをすべきか、を実行する男」佐渡島庸平

通信やICTにまつわる”なにか”を生み出した『イノベーターズ』。彼らはどのように仕事に向き合い、いかにしてイノベーションにたどり着いたのか。本人へのインタビューを通して、その”なにか”に迫ります。今回は、インターネット時代の作家と編集者の新しい仕組みを生み出した、佐渡島庸平さんのインタビュー。

この春、引っ越したばかりの新たなオフィス。明治通りに面した、自然光のたっぷり入る応接スペースには佐渡島さんが講談社時代に手掛けた作品と、「コルク」が担当する作品がぎっしり詰まった本棚が。『ハルジャン』は『宇宙兄弟』の小山宙哉の初めての連載作品だ

佐渡島さんはもともと講談社の編集者である。

モーニング編集部に10年いて、井上雄彦の『バガボンド』や安野モヨコの『働きマン』を担当し、三田紀房と『ドラゴン桜』をヒットさせ、小山宙哉を見い出して一緒に『宇宙兄弟』を生み出した。そのあと、独立して「コルク」をつくった。作家エージェント会社として、現在、十数人の作家と契約している。

2012年に創業し、今年の10月で丸4年。総勢12〜13人という規模なので、編集者を目指す人にとっては、もしかしたら出版社よりもハードルが低く見えるのかもしれない。

「そういうことでうちに入りたいって来る人もいるんですが、『コルク』が求める編集者がどういう役割なのか、インターン期間を設けて理解してもらっています。」

小説や漫画をインターネット化するということ。

社名の「コルク」は、ワインのコルクから。いいワインを世界に届け、後々まで残すには、きちんとしたコルクで栓をする必要がある。いい作品における、そんなふうな栓になるべくこの名をつけたという。ちなみにロゴのデザインは、good design companyの水野学

出版社の編集者が持つ機能を外に出して独立させたような会社のように見えるかもしれない。通常、編集者と聞くと、作家を担当し作品づくりをサポートして、商品化し宣伝して売る人のことをイメージする。ちなみにここで定義しているのは、「文芸」や「漫画」の編集者。ついでに言うと、面白い企画や世の中で流行しそうなものをキャッチしたり生み出したりして、まとめて雑誌や本にしたり、ライターに書かせたりするような編集の仕事も含まれる。

ともあれ、そういう従来の編集者と、「コルク」が定義する編集者では仕事の範囲がかなり異なる。つまり、そこのところが佐渡島さんのイノベーションなわけだ。

それが、インターネット時代の編集業。「コルク」では”コミュニティ・プロデューサー”と呼ばれている。

単に小説や漫画を電子化するというだけの話ではない。コンテンツがインターネットにつながった時、どうすれば作家や作品の価値が最大化できるかということを考える。

もちろん従来の編集者のように、作家が物語を作ることのサポートもするけれど、それでさえ、そもそも考え方が変わってきている。

「これまでは社会に対して有効なメディアが、おそらく数十個ほどしかなかったんです。そのパイを得ると有名になることは保証されている。だから、多くの作家がメディアの型に自分の作品を当てはめた。それが今ではインターネットがあり、すごくニッチなところに多くのニーズがあることが分かってきた。一方で、有効なメディアも昔ほどの力はない。……となると、メディアに合わせて形を変えるのではなく、作家はとにかくまず自分の描きたいことをしっかり担保すること。自分が何者かを分かっていて、表現したいものを強く打ち出す人が勝つ時代になってきていると思います」

そうして生み出された作品は、雑誌や単行本、電子書籍で発表されるだけでなく、SNSを窓口に拡散される。

「例えば『宇宙兄弟』は、以前は『モーニング』と単行本用にしか編集していませんでしたが、今はTwitter、 Facebook、LINE、メルマガ用に再編集して世に出しています。雑誌でいうと『ジャンプ』も『マガジン』も『サンデー』も『ビッグコミック』も『モーニング』も、全部メディアとしての色合いが違いますよね? それと同じようにSNSもそれぞれ違うので」

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