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【タベアルキスト】ハードボイルド・「うな重」の世界 ~ 食べ歩きマニア道 其の1~

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【タベアルキスト】ハードボイルド・「うな重」の世界 ~ 食べ歩きマニア道 其の1~

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お疲れさまです! メシ通レポーターのタベアルキストTokuharaです。

茹だるような暑さの中、日々様々なものと戦いながら、バリバリ働くみなさんの胃袋を刺激すべく、今回は新たな企画をお届けします。

「食べ歩きマニア道 ハードボイルド・◯◯の世界」とは──

国内の飲食店を中心に足を運び、これまで食してきたメニューは、のべ1万食以上。“食”に真摯に向き合うタベアルキストたちが、特に気になるメニューを挙げ、食材や調理法などに着目し、皆さんにお届けする新企画です。

「うな重」の世界

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すっかり高級魚の仲間入りをしてしまった「うなぎ」。悲しいかな、国民食と言われながらも、国内の「うなぎ」消費量は年々減少傾向にあります。

ただ、夏にはやっぱり「うなぎ」!

本企画でも、「うな重」にスポットを当てます。

「うなぎ」。「タレ」。そして、「ご飯」。これらが作り上げる「うな重」の世界。シンプルな料理故に、これらの味や風味がバランスよく調和しているからこそ、昔から日本人の胃を満たしてきたはず。

そこには、どんな世界があるのか ──。

では早速、主役の“幻のうなぎ”とも云われる「共水うなぎ」を求めて、今回の舞台となる渋谷道玄坂の老舗へ向かいました。

創業90年の老舗で頂く「幻のうなぎ」

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今回の舞台は、こちらの「花菱」。

創業は、大正末期。かれこれ90年以上も「うなぎ」と向き合ってきた老舗。無類のうなぎ好きとして知られる、文豪「斎藤茂吉」が通ったお店でもあります。

こちらにおうかがいしたのは他でもない、“幻のうなぎ”とも云われる「共水うなぎ」をいただくため。東京都内で出すことを許されているのは、僅か16軒のみ。貴重な“ブランドうなぎ”です。

ちなみに……。今回幸いにも、店主「阿部晋一社長」、そしてうなぎの仕込みから焼きまでを一手に任されている、うなぎ職人「小暮義雄さん」にもお話をうかがうことが出来ました。

では、早速いただいてみましょう!

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▲「共水うな重定食(肝吸い、お新香付き)」 5,616円

重箱を開けると、大ぶりで確かな存在感を放つ「共水うなぎ」。

身は背開き。その表面に焦げ目はほぼ無く、誠につややかな装い。 一口頬張れば、とにかくホワッホワッとした食感は、蒸して焼かれた“江戸前”の真骨頂。そして、その奥に感じられる確かな“うなぎの味”が、なんとも言えない時間を演出してくれます。

ふっくらとした厚い身に、そこからにじむスッキリとした脂。それらに、琥珀色の「タレ」がほのかに甘みを添えます。身に臭みなどは皆無。「タレ」でごまかすような事もありません。

そして、個人的な注目ポイントは、「しっぽ」。香ばしく、噛むほどににじみ出てくる旨味。脂が潤沢な腹よりも、「うなぎ」の素の味は淡白なこの部分にあり! また、キリッと炊きあがったご飯は、「うなぎ」と「タレ」の甘味を吸いつつ、「うなぎ」とのキレのある食感のコントラストを演出しています。

「うなぎ」・「タレ」・「ご飯」 ──。

これら3つがバランス良くまとまってこその「うな重」! それを再確認する事ができました。

では、それぞれにどんなこだわりや、物語があるのか。続いては、それぞれの素材に注目していきます。

“幻のうなぎ”である「共水うなぎ」

いまや国内に出回る「うなぎ」のほとんどが「養殖」。天然をしのぐ「養殖」に出会える機会は、ごくごく稀というのが現実です。とは言え、おいしく頂ける「養殖」はあります。

今回登場する静岡県産「共水うなぎ」もその1つ。

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「共水うなぎ」とは、静岡県大井町ある「株式会社 共水」が養殖している“ブランドうなぎ”。

富士山と南アルプスを背に、約6千坪の敷地。そこにある32面の養魚池で、南アルプスからの恵みである地下水を豊富に使い、ストレスのない環境の中、通常の2倍以上の月日をかけて丹念に育てられます。

故に、その身に青臭さは感じられません。また、脂は冷めても臭みを放つことはなく、しっかりとした甘味をまとっています。また、栄養価に優れ、DHAやミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれているのも大きな特徴です。

また、身の締まり方や脂の乗りなど、「うなぎ」の質が年間を通して安定して高い水準が維持されるのも魅力の1つとなっています。この「共水うなぎ」を頂けるのは都内では16軒。全国でも30軒ほどだそう。(2016年6月現在)

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なぜ食べられるお店が、こんなに少ないのか ──。

それは、飼育数が限られている事もありますが、それ以上に徹底したブランド管理にあります。「株式会社 共水」は、「共水」が最高の“ブランドうなぎ”であるために、その良さを理解し、料理にいかせるうなぎ店にしか卸さないのだそうです。「花菱」で出すようになったのは、うなぎ職人の小暮さんが来られた8年ほど前から。

「大切に育てられた素材(共水)を、職人が台無しにしてはいけない」という小暮さんの強い思いが、良質な素材を引き寄せているようにも感じました。

一子相伝! 代々受け継がれてきた秘伝の「タレ」

続いて「タレ」。ずばり「蒲焼きの生命線」と言えるでしょう。

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決してしつこくない甘さが、「うなぎ」の旨味を引き立ててくれます。「花菱」の蒲焼きは、蒸して軽く空焼き(水気を飛ばす)した後に、ここに潜らせること3度。いわゆる3度の付け焼き。「焼く」というよりも、「あぶる」ような感覚で、「うなぎ」にまとわせていきます。

この店主・阿部家で代々受け継がれてきた「タレ」は、門外不出。戦時中、東京大空襲の際にも、この「タレ」だけは守って疎開されたそうです。

厳選した醤油を複数、それに砂糖とみりんをあわせ煮詰めていくとのことですが、詳細なレシピを知るのは、店主の阿部社長と、その息子さんのみ。阿部家にしか継承されないレシピは、小暮さんも踏み込めない“聖域”だそう。

創業時より変わらない伝統の味が、この甕(かめ)には詰まっています。

日本人だからこそ、こだわる「ご飯」

最後に、「ご飯」。こちら「花菱」の「ご飯」は、キリッと固めな炊きあがり。

「うなぎ」との食感のコントラストが非常に秀逸です。

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聞けば、「北海道産 ミルキークィーン」と、「茨城産 コシヒカリ」のブレンド米だそう。

「ミルキークィーン」はモチモチとした食感で粘り気が強く、冷めても固くなりにくいという特徴があります。故に、お弁当やおにぎりに向いています。冷めても美味しくいただけるお米ですが、単独で「うな重」で使うには「粘り気が強すぎた」というのは、小暮さん。

そこで、米店と試行錯誤し、「茨城産 コシヒカリ」とブレンドすることで、「うな重」に最適な美味しさになったそうです。また、気温等に合わせて、米を炊く際の水温も変えているそう。米と水に温度差をつけることで、キリッと炊きあげています。「うな重」には欠かせない、また日本人としても譲れない「ご飯」のクオリティ。確かなこだわりを持って、胃袋に届けて頂きました。

重箱の中で織りなす三位一体の物語

お店によって全く異なる「うな重」。シンプルな素材構成故に、1つの素材が全体を壊してしまうことだってある。これは「寿司」しかり。「そば」しかり。繊細な和食には共通して言えることかもしれません。

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今回いただいた「共水うな重」。「うなぎ」、「タレ」、「ご飯」は、まさに三位一体! “うなぎの味”をしっかりとまとう「共水うなぎ」。 それに甘味を添える、代々受け継がれる「伝統のタレ」。 そして、それらを最適な形で受け止める「りりしいご飯」。

これらのどれか1つが欠けても「うな重」として成立しないことを、改めて体感することができました。

そして、何よりまた「うなぎ」を頬張りたくなる始末……。

いささか蒸し暑い夏を乗り切るべく、皆さんもたまにはちょっと贅沢に「うな重」を頬張ってみてはいかがでしょうか。

P.S.

幸か不幸か、気付いたらもうその半分が過ぎてしまった2016年ですが、「土用の丑の日」は、幸いにもあと3回あります。 7月30日(土) 10月22日(土) 11月3日(木)

お店情報

花菱(はなびし)

住所:東京都渋谷区道玄坂2-16-7 花菱ビル1F・B1

TEL:03-3461-2622

営業時間:11:30〜15:00(LO 14:30)/ 17:00〜22:00(LO 21:30)

定休日:日曜日、祝日

※金額はすべて消費税込です。

※本記事の情報は取材時点(取材日2016年7月2日)のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

書いた人:Yamato Tokuhara

Yamato Tokuhara

特に、和食をリスペクトするタベアルキスト。幼少期より魚に囲まれ育った影響か、魚介料理には人一倍うるさい。ノンジャンルで年間350軒以上を食べ歩きながら、言葉の壁を超える“食”の素晴らしさを、海の向こうまで伝えることが、いまの生きがい。 Webサイト:Tabearukist Association facebook:Tabearukist Association

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