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摂食を正しく理解し認知症終末期の高齢者の食事介助に備える

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こんにちは、理学療法士・介護福祉士の中村です。今回は、認知症終末期の中でも、筆者が重要と思う口腔ケアについてお話いたします。「医食同源」という言葉があるように、食事が持つ意味はとても大きいです。生命維持のためにも、「摂食」という行為はとても重要です。

関連記事:「最期は自宅で迎えたい」認知症高齢者の在宅終末期について考える

認知症終末期の基準を考える

まずは、認知症終末期の基準項目について、お話いたします。
狭義の基準:1~4の全てを満たす

認知症である
意思表示の確認が困難か不可能である
認知症の原因疾患に伴って嚥下が困難か不可能である
上記の1、2、3の状態が非可逆的(改善や治癒が見込めない)である

広義の基準:1または2を認める

狭義の終末期の状態である
治癒しない認知症であり、認知症の原因疾患によらない身体疾患による終末期の状態である

出典:日本神経学会,「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同員会(編):認知症疾患治療ガイドライン2010,pp216-218,医学書院,2010.

認知症高齢者の終末期の期間は比較的長く、介護の3大行為(食べる、排泄、入浴)に困難を伴う事が多いです。特にコミュニケーションを図ることが難しく、家族介護者は高齢者の意思を確認できないことから不安を募らせてしまう事となります。

終末期の食事介助について

開口しない、口唇が小刻みに震えている(口唇ジスキネジア)、給仕してもすぐに舌で押し出されるなどが、認知症終末期に見られる状態です。理由は様々なのですが、おもに脳血管障害などが原因疾患としてあると、顕著に出現します。食事摂取が困難な状況が続くことで、食事摂取量低下による栄養不足となり、体力(筋力)の低下、抵抗力の低下、寝たきりへ…と悪循環を招いてしまいます。

認知症高齢者を支えるご家族や介護職員は、たとえ認知症終末期となっていても「良くなってほしい」と考えるのは当然の事であり、私自身もそう考えています。しかし、目の前の認知症高齢者が開口しない、舌で押し出す等の行動により、我々介護者は食事介助を行うにあたり、「これで良いのだろうか」と不安を覚えます。「食べて欲しいのに、食べてくれない…」と言った介護者の気持ちは本当によく理解できます。

そこで、一度立ち止まって欲しいのです。どうして摂食しないのかという理由を探るために、立ち止まって介護を展開させて欲しいと思います。

日常の会話も口腔ケアの一環

筋肉の話になりますが、人間の筋肉は動かし続けなければ本来のパフォーマンスは発揮しません。皆さん、隣にいる方の協力を仰ぎ、お互いの手を写真のようにして、1分間力一杯引き続けて下さい。
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1分後、指を決して拡げる事なく、そのままゆっくりと相手の手から外します。そして手のひらを上に向けて下さい。この際、テーブルなどの上に腕を置いてリラックスする事が重要です。リラックスして力を抜いた状態でゆっくりと指を拡げて下さい。どうでしょうか?指が動かないはずです。

これは、人工的に作り出した拘縮です。つまり、筋肉を動かさないでいると、口も拡げにくくなるのです。認知症高齢者だから会話が成り立たないから…と言って会話の機会が減れば、おのずから開口する筋肉は固まります。奇声は迷惑な事もありますが、視点を変えると開口させる筋肉が動いている証拠でもあります。また、食事前に行うマッサージも有効です。

何気なく行っているケアを見直す

我々介護者は、給仕する際に何気なくスプーンを使いますが、そのスプーンにも落とし穴があります。よだれをスプーンで処理したり、また唾液が含まれているままでご飯をすくうと、唾液に含まれる消化酵素(アミラーゼ)により、お米の硬さは柔らかく(液状化)なります。これを離水現象と言います。

とろみが付けられている方や、ミキサー食などの高齢者の食事において、離水現象が起こるとどうでしょうか?ゾッとしますよね。誤嚥性肺炎の可能性が一気に浮上しますものね。食事介助を行う介護者によって、食事の硬さが「次第に違ってくる」という事が起こります。食思の低下の要因は色々なところに隠れています。

脳血管性認知症の高齢者の場合

味覚が低下している事もあります。栄養価を考え、薄味も大切ですが、主体はどこにあるのでしょうか?1品だけでも味に変化をつけるといった工夫も必要かもしれません。

口腔ケアの本当の意味

口腔ケアも非常に重要です。口腔内が乾燥し上顎などに痂皮が見られたり、痰が付着していたり、舌苔があったり…と認知症終末期における高齢者の口腔内の環境はうまくいっていない、また認知症高齢者の拒否などによりうまくできない事も多々あるかと思います。

最近は歯科衛生士さんが介護の現場にも登場するようになりましたが、まだまだ少ないと筆者は考えています。積極的に歯科衛生士さんの協力を仰ぎ、口腔ケアにも力を入れることも大切だと考えます。口腔は人体最大の最近培養器です。口腔ケアは単なる口腔衛生維持改善だけではなく、最期の一口をより良い状態で「食べる」ためにも欠かせません。

さいごに

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人間は生まれてすぐ肺呼吸に切り替わりますが、口を大きく開けて産声を挙げます。すべて口から始まります。食事だけでなく、構音や呼吸も担っている口腔に対して更に注目し、「最期の一口」が望んでいるものを食べられるようにこの記事を参考にしていただけると幸いです。

この記事を書いた人

中村洋文

鹿児島県沖永良部島出身
介護福祉士 / 理学療法士 / 実務者研修教員/その他
病院、知的障害者施設、デイサービス管理者、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等の医療・福祉施設にて勤務。現場だけではなく、行政側の立場としても市役所勤務の中で介護保険にも携わる。介護保険認定審査委員も歴任。現在、福祉系専門学校での講師及び居宅介護支援事業所、訪問看護等の介護保険事業を手掛ける会社の共同代表として活動中。介護医療現場、また行政側の様々な経験をもとに認知症高齢者本人とその家族の想いを教育現場や全国各地での講演会等で発信しています。

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