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個性尊重と言いながら画一的評価を強いる内申書は見直すべき

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 高校入試の仕組みによって、教育現場で奇妙な現象が起きている。内申書で良い点を取るために中学生たちは授業で挙手をし続け、学級委員長や生徒会長のポストを奪い合っているというのだ。育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、現在の内申書によって起きている歪みと、改善策について解説する。

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 高い内申点を得るためには、定期テストで高得点を取ることも大切だ。そこで多くの学習塾は高校入試対策とともに、「二枚看板」として中学の定期テスト対策を行う。

 高校入試に向けては各自の志望校に応じた本質的な勉強が必要だが、定期テスト対策は試験範囲に限った勉強で目先の点数さえ取れればいい。そう考えた塾が目をつけたのが中学ごとの「過去問」である。

 多くの中学では例年、同じ教師が定期テストを作成するため、問題が似たり寄ったりになる。そこで塾は卒業生などのツテをたどり、過去の問題用紙を集めて傾向を研究する。奇抜な手段ではなく、地域密着型受験塾の多くが採用する戦略である。

 だが、それが行き過ぎて2014年に事件が起きた。名古屋市の学習塾経営者が「情報公開制度」を利用して全国の自治体から公立中学校・高校の定期テストの問題と解答を入手し、それらを1科目200円でネットを通じて販売したのだ。

 過去問を使った定期テスト対策は、学習の達成度を測るそもそもの目的から外れる。しかも情報公開でただでさえ忙しい日本中の中学校教員らの手を煩わせたうえ、入手した問題を販売するとは、違法ではなくとも教育者としてのモラルが厳しく問われるはずだ。

 ひとつの改善策は、各高校が自由に内申書の評価方法を決める制度にすることだ。例えば、体育の点数を5倍にしたり、コツコツと主要教科に励む子を高く評価する高校があっていい。

 2002年に国公立大学への現役合格者を前年の6人から106人に増やし、「堀川の奇跡」と称された京都市立堀川高校は、入試時に内申点を重視しないという方針を打ち出し、大成功した。

 そもそも中学2、3年生は思春期の真っただ中。子供にとって激動の時期であり、親や先生が良しとする価値観を疑って反抗し、自分の考えで行動して失敗を重ね、そこから多くのことを体験的に学ぶ時期である。

 人格形成にとって重要なこの時期、内申書にとらわれて窮屈な思いをし、理不尽な教師に反論できず、精神的な無力感にとらわれるのは、生徒の将来に大きなマイナス要因となる。  15歳の春に一斉に高校入試を行う日本の学校制度は世界的に珍しいものだ。「個性尊重」と言いながら、画一的な評価を学校、教師、親や生徒に強いる「内申書狂騒曲」はいい加減、見直すべきである。

【Profile】
おおたとしまさ●1973年東京都生まれ。麻布学園(中高)卒。東京外国語大学中退。上智大学英語学科卒。リクルートで雑誌編集に携わり、2005年に独立。育児・教育に関する執筆・講演活動を行う。『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)ほか著書多数。

※SAPIO2016年8月号

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