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Lady’s and Gentleman!ふれあい、音楽、歩きのタンゴセラピーを介護現場に!

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みなさんはじめまして。 NPO法人日本タンゴセラピー協会の理事をしております、中川と申します。現在、東京7施設、名古屋1施設の介護施設でタンゴセラピー活動を行っております。

タンゴセラピーという言葉を初めて聞く方が多いかと思いますので、今回はタンゴセラピーとはいったいどういうものなのか、また、タンゴセラピーが高齢者にどのような影響を与えるのかお話したいと思います。

そもそもタンゴって何?


今から約130年前、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスと、ウルグアイの首都モンテビデオの間を流れるラ・プラタ川沿いで生まれた、様々な国の要素が折り混ざった音楽、踊りの文化をアルゼンチンタンゴと言います。その後ヨーロッパに渡り、パリで大流行しました。全世界で公演された「タンゴ・アルヘンティーノ」は、日本でも1987年に公演され、大盛況となりました。この伝統的な文化、アルゼンチンタンゴは、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

タンゴと聞くと、激しく情熱的なペアダンスをイメージされる方が多いと思います。タンゴには、タンゴショー用の「ステージタンゴ」、そして老若男女誰でも親しめる「サロンタンゴ」の2種類があり、タンゴセラピーは、サロンタンゴをベースにしています。

テレビなどで紹介されるタンゴショーの踊りとは違い、サロンタンゴは背筋を伸ばしつつゆったりと肩の力を抜いて、相手を感じて踊ります。タンゴの音楽では、蛇腹楽器「バンドネオン」の切ない音色が象徴的で、代表曲「ラ・クンパルシータ」は日本でもよく知られています。

タンゴセラピーが介護に適している理由

タンゴセラピーには、健康に効果があるたくさんの要素があります。その中でもタンゴ特有のものが、下記4点です。
音楽に合わせて動く(身体的・精神的健康・回想療法)

タンゴセラピーに使う音楽は音色が優しく、アルゼンチンタンゴの曲の中からリズムを取りやすい曲を選んでいます。85歳以上の高齢者の方は、戦前・戦後にタンゴを踊ったことがある方もいて、アルゼンチンタンゴの曲は馴染みやすいようです。立つことが難しい方でも、音楽に合わせて座ったまま手を取り、一緒にステップを踏むこともできます。楽しく踊っていた一番楽しかった頃の思い出を話される方も多いです。
★リズム運動は、セロトニンというホルモンの分泌を促し、気持ちのバランスを整えます。

抱擁、ふれあい(精神的健康)

抱擁やふれあいは、日本人にあまり馴染みがないため、苦手としている方が多いのではないでしょうか。最初は緊張したり、恥ずかしがられる方もいらっしゃいますが、アルゼンチンの文化ということで、気持ちを切り替えられ、ハグされる方も多くいらっしゃいます。

タンゴセラピーでは、無理に踊りに誘うことはせず、座ったまま手をとってお話を聞いたり、座ったままハグや手をつないで音楽に合わせて揺れるなど、いろいろな方法でふれあいます。最初と最後の挨拶の時にも、その方に合わせたふれあいを大切にしています。
★抱擁や触れ合いには、オキシトシンというホルモンの分泌を促し、幸せな気分や、安心感、満足感が得られます。

歩く(身体的健康)

歩くことは健康にいいと言われていますが、体が不自由になってきたり、気持ちが不安定になると、散歩に出るのも億劫になりがちです。タンゴセラピーでは、杖や歩行器具ではなく、ダンスのパートナーと共に歩きます。普段歩くことのない横や後ろへの一歩や、いつもより少し大きめの一歩は、脳の活性化につながるだけでなく、普段使わない筋肉のリハビリにもなり、楽しくモチベーションを持って続けることができます。

出会い・再会(社会的健康)

タンゴセラピーでは、たくさんの方にボランティアとして参加いただいています。そこには、たくさんの出会いや再会があります。ご参加者の方は再会を楽しみにし、おしゃれをして来られる方も少なくありません。社会とのつながりを感じられる瞬間です。

タンゴセラピーに関連するケア

タッチセラピー:触れ合い

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音楽療法:昔を思い出す

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ユマニチュード:見る・話しかける・触れる・立つが含まれている

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バリデーション療法:無理に踊らず、思い出を聞かせていただいたり、お話しする

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介護施設からの声

タンゴセラピーを実施した施設職員の方からも、反響の声をいただいています。

「最初は、利用者様にタンゴの雰囲気を味わっていただき、適度な刺激と気分転換になればと考えておりました。実際に始まると、意欲的に参加される方や普段億劫になりがちな方、歩行訓練を好まない方も先生のリードで歩き出し、ステップを踏んだり、また歩行困難な方に配慮されたプログラムもあり、ご利用者様の笑顔や懸命なご様子から、驚きや嬉しい発見がたくさんありました。利用者様の心身機能の維持・向上、また楽しみや社会交流のために今後ともお願いしたいと思っています」(複合老人介護施設~相生の里/デイサービスワーカー長)

「迎えた初回、25人前後の利用者様は、どなたも緊張され不安な表情が見られましたが、音楽が流れた途端に笑顔が見られ、自ら立ち上がられる方もいました。先生のリードに合わせて歩いたり、車椅子から立ち上がられ足踏みしたりと、まさに目の前で奇跡が起こったように感じました。初回が終わった後、どの利用者様も緊張感や戸惑いが消え、爽やかな達成感と喜びにあふれていらっしゃいました。感動されて涙ぐむ方も、少々頑張りすぎて汗をかかれている方もいらっしゃいました。各々の姿勢と視線に、真摯なその人なりを垣間見ることができ、踊る側も観る側も、お互いに楽しい素敵な時間を過ごしています。(介護老人保健施設~プラチナ・ヴィラ小平/施設職員)

「生きる」から「活きる」へ

タンゴセラピーにより、高齢者の日々の生活が良い方向に向かった(改善がみられた)例も、たくさん報告されています。
生活のモチベーションアップ
Aさんは、活動に参加されるたび、毎回洋服がおしゃれになり、香水や、お化粧もするようになられました。この活動を身体的なリハビリとしてだけでなく、社会的な活動として、ご参加されています。
身体能力の改善、モチベーションアップ
Bさんは、膝が悪いことを理由に、最初の数回は、立つことはありませんでした。しかし、座ったまま世間話をしたり、座ってできるステップを一緒に行った結果、ついには立ち上がり、今ではとても自然に踊られるようになりました。

Cさんは、パーキンソン病を患っており、最初は車椅子に乗って、動くことも、話すこともできませんでした。それが、月2回の活動に毎回参加されるうちに、ひとりで座ってできるステップで脚を動かせるようになり、今では、ペアを組んでステップを踏めるようにまでなりました。先日、初めて彼女の「ありがとう」というお言葉を聞いた時には、感動が止まりませんでした。

モチベーションが上がることで得られること

タンゴセラピーにより、ほとんどの方がモチベーションを上げています。施設職員さんからは、「利用者様から『今日はタンゴの日?』といつも聞かれます」と言われたり、利用者様からの希望で、月に行う活動の回数が増えたりします。小平の施設では、毎朝の体操にタンゴの音楽を使うようになったり、もっとやりたいとの希望から、施設職員さんに対しての「介護職員のためのタンゴセラピー講座」を開講するに至ったところもあります。

この「モチベーションを上げる」ということは、「生きる活力」を強くすることであり、生きることそのものではないでしょうか?私たちのテーマは、【「生きる」から「活きる」へ】です。

今後の目標


タンゴセラピーの活動は、現在月に11回(東京10回、名古屋1回)、高齢者や障がい者の方に対して行っています。今後は回数・施設の数を増やしていき、メンタルヘルスという視点から見て、全ての方への効果を期待し、ゆくゆくは病院や、児童施設、会社での社員研修等に発展させ、全国にタンゴセラピーを広めたいと思っています。

タンゴという文化のある生活は、生活の質を上げるという確信のもと、活動していきます。

この記事を書いた人

中川健一郎

北海道三笠市生まれ。東京都在住。20代は世界を放浪し、30代でアルゼンチンタンゴと出会う。アルゼンチンタンゴ講師から、タンゴセラピーがきっかけとなり介護職に転職、社会貢献活動として2016年4月より、 NPO法人日本タンゴセラピー協会の理事として、東京7施設、名古屋1施設での介護施設でのタンゴセラピー活動を行っている。夢は、「人と人のふれあいで、お互いを理解し、社会の平和につなげること」です。

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