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日本のハンコ文化の根幹・実印は1873年に通達された制度

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 役所に書類を出す時も、車や家を買う時も、遺産相続の手続きにも必要な「ハンコ」──。一口にハンコといっても金融機関で本人確認に使われる「銀行印」、社内決裁や郵便物の受け取りなどに使われる「認印」など様々あるが、日本のハンコ文化の根幹をなしているのが、「印鑑登録制度」に裏打ちされた「実印」である。

 印鑑登録は各自治体が条例に基づいて行ない、住民は登録すると自治体から「印鑑登録証明」の発行を受けられる。家・マンションの売買(不動産登記)や賃貸契約などの保証人、車の購入(自動車登録)、会社設立などで必要になる。

 その起源は1871年(明治4年)の太政官布告第456号「諸品売買取引心得方定書」に遡る。各地域の有力者だった庄屋などのもとに印鑑帳が置かれ、住民は証文などに使う印章(印鑑)を捺印して“登録”するよう定められた。

 1873年の太政官布告第239号では、「実印のない公文書は裁判で証拠として認められない」と通達された。

 そうした公的な裏付けのもとに広がった印鑑業界の業界規模は3000億円ともいわれる。1971年に創刊された日本で唯一の印章業界誌『月刊現代印章』の真子茂・編集長が説明する。

「私たちの調査では、印鑑を販売する店舗は全国に約1万軒あります。回転針で彫刻する機械を使うので、表札などの印刷も請け負っているところがほとんど。業者の数はゆるやかに減ってはいますが、他業種に比べると根強く、消費者のニーズに合わせてチタン製の高級ハンコを開発するなどして、生き残りを図っています。

 中学や高校の卒業記念のハンコも昔は三文判でしたが、フルネームのハンコやペンと一体になったタイプに変えるなどの工夫をして、慣習として今も残っています」

 日本のハンコ文化が揺るぎないことは、「最高裁」の判断からも読み取れる。2003年に沖縄県で亡くなった男性が、押印の代わりに「花押(※注)」を記した遺言状を残し、その有効性が争われた訴訟の上告審の判決が6月3日に下され、最高裁(小貫芳信・裁判長)は「押印のない遺言書は無効」と判断したのである。

【※注/署名を毛筆の草書体をもとに図案化して描くサイン。戦国時代には武将が文書の末尾に記していたほか、現代でも閣議決定の際に首相や大臣が花押を書く慣例がある】

 遺言作成に詳しい本橋光一郎弁護士の解説。

「民法968条で自筆の遺言書には署名と押印の両方が必要と規定されている。過去に署名と『拇印』で認められた判例はあるが、今回、“サインだけではダメ”との判断がはっきりした」

 小貫裁判長は判決文で「重要な文書は判を押すことで完成するという意識が社会の中にある」と述べ、“ハンコ文化”を認めた。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

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