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睡眠薬に頼らないで不眠症を改善する「認知行動療法」とは?

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睡眠薬に頼らず、再発の可能性も低いとして注目される不眠症の治療法「認知行動療法」。一般的にはまだまだ耳慣れない治療法かもしれませんが、どんな方法で不眠症を改善するのでしょうか。

同療法に詳しい、臨床心理士で早稲田大学人間科学学術院助教の岡島義先生に、そもそも「認知行動療法とは何か」についてお話を伺います。

薬を使わずどうやって不眠を治療するの? 認知行動療法の仕組み

日本では馴染みの薄い「認知行動療法」ですが、不眠に対する認知行動療法は世界でCBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)と呼ばれ、その改善効果が明らかにされています。

以前、「睡眠総合ケアクリニック代々木」で認知行動療法のセラピスト(治療者)を担当していた岡島先生は、「近年、徐々に利用する人が増えてきた」といいます。

「もともと眠れていたのに眠れなくなった場合、それを維持する要因、すなわち悪いクセが身についてしまったということが考えられます。例えば、生活習慣、睡眠習慣、思い込みなどです。そうした眠れないクセを、眠れるクセに変えていくのが認知行動療法です」(岡島先生)

これまでの研究によって、認知行動療法は7割程度の患者さんに不眠症状の軽減効果が期待できること、睡眠薬を使用した治療に匹敵する効果が得られること、睡眠薬を減らし、やめやすくなることなどが明らかになっているそう。

また、睡眠薬の場合、症状の改善とともに薬をやめても、ちょっとしたストレスや不安などが原因で不眠が再発することもあるそうです。一方で、認知行動療法は不眠を維持する要因に働きかけるため、再発率が低いことも特徴の一つ。

しかし、メリットばかりあるように見えても、患者さんのタイプによっては認知行動療法ではなく薬物治療を勧めることもあるそう。

「認知行動療法では、すでに必要な睡眠時間は取れているのに、もっと長く寝たいという人の睡眠時間を増やすことはできません。また、客観的な睡眠検査でも睡眠時間が短く、日中に支障が出てしまっている人の場合には、薬物治療のほうがよいでしょう」(岡島先生)

また、認知行動療法は薬を使用するのに比べて治療に時間がかかるため、急性不眠など一時的なものであれば、睡眠薬を使用したほうがよいこともあります。

まずは自分の睡眠を見つめ直すことから不眠改善をスタート

認知行動療法の治療は、まず、睡眠ダイアリー(日誌)をつけることから始まります。

布団に入った時間、寝ついた時間、起きた時間などと、睡眠薬を飲んでいる場合はその種類や量などを記録していきます。これは、治療が終わるまで継続的に続けていくことになります。

また、「インテーク」と呼ばれる初回1~2回目までの面接で、患者さんの家族構成や抱えている不安、困っていることなどを聞いて問題を把握していきます。

続いて行うのが、心理教育(睡眠教育)です。睡眠のメカニズムや一般的に知られている睡眠に関する知識(睡眠衛生)について、患者さんの理解を促します。

「不眠症に悩んでいる方は睡眠への関心が高いので、睡眠衛生でお話するようなことはすでに知っていることも多いのですが、確認の意味も込めて説明していきます。中には、この説明によってこれまでの間違った思い込みがなくなり、不眠が改善する方もいます」(岡島先生)

睡眠衛生の中でうまく実践できていないことがあれば、次回のカウンセリングまでのホームワークとなります。ここからやっと、患者さん一人ひとりに合わせた治療が始まるのです。

ここまでくれば、睡眠ダイアリーの記録で平均睡眠時間が判明しているはず。それを参考に、「睡眠スケジュール法」による治療を行います。

不眠症の患者さんの多くは、寝つくまでに時間がかかり、布団の中で過ごす時間が長くなりがち。これでは睡眠効率(実際に寝ていた時間÷布団に入っていた時間。健康な人は90%を超える)が悪いため、眠れないときは布団に入らないようにして睡眠効率を上げていくという方法が、睡眠スケジュール法です。

布団に入っている時間と眠っている時間の差を少なくし、「浅く・長く」だった睡眠を「深く・短く」変えていきます。

「それまでの習慣を大きく変えるのは難しいことだと思います。最初の3日くらいはかなり不安になるので、そこを乗り越えるまでが大変かもしれません」(岡島先生)

早く寝床に入らないと十分に眠れないのではないか、いつも通りの行動をとらなくても大丈夫なのか…といった不安を持ちながらも睡眠スケジュール法に挑戦していけば、睡眠効率を上げ、さらに睡眠時間を伸ばしていくことも可能。認知行動療法を続けられるかどうかは、ここが分かれ目です。

こうしたカウンセリングを、2週間おきを目安に4~6回ほど繰り返すと、多くの人は不眠症が改善していくそう。薬物治療のような即効性はありませんが、不眠を根本から治したいという人には最適な方法かもしれません。

不眠改善に認知行動療法が向いている人・向いていない人って?

薬物治療はしたくないし、再発も防ぎたいという人にとっては夢のような認知行動療法ですが、「睡眠スケジュール法」でも紹介したように、継続するには根気と覚悟が必要。睡眠ダイアリーの記録をサボったり、ホームワークをやってこなかったり、あるいは睡眠スケジュール法を継続できなかったりすると、なかなか改善されず、治療が長引いてしまいます。

「認知行動療法で結果が出やすいのは、つらいことにも目を背けないぞという、覚悟を決めた人かもしれません。そういった覚悟を持った患者さんは、ホームワークもきちんとやってくださるので、効果を実感してもらっています。なかには、被暗示性の強い人もいて、睡眠衛生を受けただけで不眠が改善してしまう人もいるくらいです。逆に、誰かに治してもらおうという他力本願の人、忍耐力のない人は、なかなか結果が出ないこともあります」(岡島先生)

不眠症の人はもともと睡眠に強い不安を感じているので、認知行動療法によって不眠症が改善しても「また眠れなくなるかも」という不安が強く、なかなかカウンセリングが終わらないことも。そうした場合には、継続的に話を聞きながら、独り立ちの後押しをすることもあるといいます。

認知行動療法は保険適用外のため、クリニックにより異なりますがカウンセリング1回あたり1万円前後の費用がかかることが多く、薬物治療よりも医療費の負担は増します。しかし、薬は長期間服用する必要があるため、長期的に見れば認知行動療法のほうが安く済むことも。

「不眠症の治療=睡眠薬」というイメージが強いかもしれませんが、それ以外の選択肢として、認知行動療法を選べることも覚えておきたいですね。

監修:岡島義(早稲田大学人間科学学術院助教)

photo:Thinkstock / Getty Images

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