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寝たきり高齢者を減らしたい!~若手医師夫婦が「認知症カフェ」で目指す未来

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「認知症カフェ」というものを、ご存じだろうか?認知症患者やその家族、地域の人々、そして医師や看護師、介護福祉士などといった専門家が、認知症に関する情報を交換したり、交流を図ったりする場所のことだ。

認知症カフェは、厚生労働省による「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の施策として掲げられており、開催件数が全国で急増している。

そんな中、「認知症についての正しい知識を、もっと多くの人に持ってほしい」との思いから、認知症専門外来を持つクリニックを開業し、月1回ペースで「認知症カフェ」を開催し続けている若き医師夫婦がいる。認知症にかける2人の情熱の源泉と、実現したい未来について聞いた。

目白MMクリニック

院長・内田暁彦さん/副院長・小野寺加奈さん

1日でも長く「その人らしい生活」を送るためにも、認知症を正しく理解してほしい

7月上旬、東京・目白にある介護付有料老人ホームの一角を借りて、目白MMクリニック主催の「認知症カフェ」が開かれた。参加者は約20名、認知症の患者とその家族、認知症への不安を抱えている高齢者、親の介護に悩んでいるミドル世代などだ。

この日は、認知症についての簡単な講義と、言葉のパズルゲーム、そして体操。認知症に関する不安や悩み、困ったことなどを自由に話し合う時間も多く取られ、皆活発に語り合っていた。そして笑顔で「また来月!」と帰っていく姿が印象的だった。

中心に立ってプログラムを進めたり、参加者と交流するのは、認知症専門外来を持つ「目白MMクリニック」の内田院長と、小野寺副院長夫婦だ。

「物忘れや無気力など、認知症の前兆が見え始めても、歳だから仕方ないと加齢のせいにしてしまう方が多い。生活習慣を見直すだけでも発症率はガクンと下がるのに、認知症に関する知識がないことで対応が遅れ、精神症状が悪化し、対応し切れないままに最終的には寝たきりになってしまう方も多い。『その人らしい生活』を長く送るためにも、まずは正しい知識を持ってほしい」(小野寺さん)との思いから、認知症カフェをスタート。今回が6回目の開催になるが、徐々に参加者が増えつつあるという。

▲「認知症カフェ」の模様。認知症についてざっくばらんに話し合うことで、認知症への理解につなげている

医療現場で「医師がもっと認知症に関する理解を深めるべきだ」と痛感

2人とも医大を卒業後、初期研修で精神科の道を選び、その現場で「認知症問題の深刻さ」を目の当たりにしたという。中でも小野寺さんは、早くから認知症に特化し、経験を積んできた。

「認知症の初期症状の一つとして精神的に不安定になることがあるため、精神科には高齢者の患者さんがたくさんいらっしゃいました。でも、当時の精神科では、認知症に対する理解が今ほど進んでおらず、ほかの精神疾患の患者さんと同じように精神症状を抑える薬を投与することが多かったんです。すると、場合によっては薬が強すぎて、精神症状は抑えられたものの寝たきりになってしまうというケースがありました。…実は認知症は、未だに『どの科が診る』という規定がなく、病状によって神経内科だったり精神科だったり、脳外科、内科だったりとまちまちなのですが、精神科の医師こそがもっと認知症という病気を正しく理解するべきだと痛感させられました。そこからは、認知症一筋。さまざまな病院で現場経験を積み、認知症に関する知見を深めてきました」(小野寺さん)

夫である内田さんは、「暇さえあれば認知症のことばかり話している」という小野寺さんの影響を大いに受けたというが、精神科医として現場で活躍する中で「自身の経験は、認知症の分野でこそ活かせるのではないか」と強く思うようにもなったという。

「勤務先の病院には、もう何十年も入院している精神病患者が数多くいました。社会生活を送るのが不安だから、家族がいないからなどの理由で、漫然と入院生活を送っている。でも、人として生まれたからには、病院の外で生活できるのであればそのほうが絶対に幸せ。そこで、患者さんの不安を一つひとつ聞き出し、自立した生活を送るためのプランを考え、福祉サービスなどのサポートの利用を手配したりグループホームを利用するなどして、『病院外での生活』をしていただくことに力を注ぎました。その結果、外来で病院に見えた時、皆さん『勇気を出して退院して良かった』と笑顔でおっしゃるんです。とてもやりがいを覚えましたね」

そんなある日、「これは認知症患者においても同じではないか」と気付かされた。

認知症だからと家に引きこもってしまうとどんどん症状は悪化してしまうため、早い段階できちんと診断して、今後の見通しを示しながらケアの方法を考えることが大切です。ここに精神科医として注力してきた経験が活かせると思いました。今までにたくさんの認知症患者を診てきましたが、認知症患者が急増する中で認知症に特化した治療やケアの必要性は高まる一方。自分こそがやらねば!という思いにかられたんです」(内田さん)

10年後には65歳以上の3人に1人が認知症。若い人も決して他人事ではない

「自分がやらねば」と決断してから開業までは早かった。認知症のプロフェッショナルである小野寺さんとともに今年3月にクリニックを開業し、認知症カフェを企画・開催するなど認知症の治療や啓もうに情熱を注いでいる。来院者の半数は、認知症治療もしくは認知症に関する相談が目的。「開業当初に来院くださった患者さんの表情が、診察に来るたびに明るくなる。それを見るのが何より嬉しい」と2人は声を揃えて言う。

「認知症は、早期に治療開始することで、自宅で、その方らしく暮らせる期間が確実に延びます。われわれ医師がどんどん表に出て情報発信することで、少しでも認知症に対する意識を持ってもらいたいですし、『気になることがあれば相談すればいいんだ』と思ってもらいたいですね」(内田さん)

10年後には、認知症患者は700万人を突破すると予測されている。65歳以上の5人に1人は認知症という計算だ。さらに、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる「認知症予備軍」を入れると「65歳以上の3人に1人」に跳ね上がる。なお、MCIと診断されると、5年以内に約半数が、7年以内に約8割が認知症になるとされている。

これだけ認知症患者が増えれば、20代、30代の若手ビジネスパーソンにとっても、決して人ごとではない。

「認知症なんて自分には関係ない、人ごとだと捉える方が多いかもしれませんが、ご両親の世代はどうでしょうか?親が発症し、急に“当事者”になって慌てふためき、仕事も生活もガタガタになってしまうという方が実に多いのです。おかしいと思ったら、早めに我々のような専門の医療機関を受診することをお勧めしたいですね。認知症カフェにも、若い人こそもっと気軽に足を運んでほしいと思っています」(小野寺さん)

認知症の中でも最も多いと言われているアルツハイマー型認知症は、βアミロイドという蛋白質が脳神経細胞に蓄積されることが原因とされているが、早い人は40歳ごろから蓄積が始まると言われている。若いうちから運動やバランスのいい食事、生活を心掛けることが、将来発症するか否かを大きく左右する。つまり親世代だけでなく、「当事者」としても、決して他人事ではないのだ。

まずは『認知症は決して他人事ではない』と認識してもらえるだけでも、社会は変わると思っています。若い方が認知症に意識を向けてくれれば、患者に対する見方も変わり、引きこもりがちな患者も今より外に出られるようになるでしょう。そしてゆくゆくは、認知症を地域で支えあう社会の実現につながればと願っています」(内田さん)

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

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