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シャープが米国で液晶テレビシェア1位になる方法とは

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 日本の家電メーカーが復活するには、中国の巨大な製造企業を買収するなどの方法があると提案する経営コンサルタントの大前研一氏が、台湾企業に買収されたシャープ復活の道筋について考察する。

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 凋落した日本の家電メーカーは、もはやリストラや「選択と集中」では立ち直ることはできないと指摘し、生き残っていく方法は中国の巨大な製造企業を買収して垂直統合するか、すでに中国各地に広く販売網を持っている会社を買収して競争相手よりも速いスピードで成長させたり、中国のeコマース企業と提携して中国の消費者に日本からダイレクトに商品を販売できるようにしたりするしかない、と以前私は述べた。

 このうち前者については、すでにそういうかたちになった会社がある。シャープだ。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された同社は、逆説的に言えば、中国に100万人の従業員がいる世界一のEMS(電子機器受託製造サービス)企業と垂直統合したようなものである。かつて家電量販店のラオックスが中国の蘇寧雲商集団(旧・蘇寧電器)に買収されて蘇ったのと同様に、鴻海傘下に入ったシャープにも新たな再生の可能性が開けているのだ。

 シャープの今後は、郭会長が「シャープのブランドをどのように活用するか」で決まるだろう。

 たとえば、前号で述べたように、アメリカの液晶テレビのシェアは、日本では無名のビジオ(VIZIO/アメリカに本社を置く台湾系企業)が韓国のサムスンとトップ争いを繰り広げているが、その製品を作っているのは鴻海で、資本も入れている。

 もし鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長がその剛腕を振るい、ブランドをビジオからシャープに変えてシャープの工場で製造するようにすれば、シャープはいきなりアメリカで1位になる。ビジオと手を切ってシャープ製品をビジオやサムスンと同じくらいの値段で売ってもシェアは一気に伸びるだろう。

 あるいは、郭会長がシャープの技術陣に今の世の中にはない画期的な新製品を開発しろと檄を飛ばして資金も投入し、イギリスのダイソンのサイクロン掃除機、羽根のない扇風機や空気清浄機能付きファンのように値段が取れる付加価値の高い商品を生み出す、という方向性だ。

 その可能性は決して小さくないと思う。シャープは有機ELなどの液晶・パネル技術のみならず、空気を浄化する「プラズマクラスター」、健康志向の調理家電ブランド「ヘルシオ」、停電時も蓄電池と太陽光発電システムを組み合わせて冷蔵だけなら約10日間以上(冷凍使用の場合は約4日間以上)冷やせる冷蔵庫といった独自技術を開発する力をけっこう持っているからだ。

 最近のシャープには意外なヒット商品もある。世界初の蚊取り機能付き空気清浄機「蚊取空清」だ。薬剤を使わず、蚊の習性を利用してUV(紫外線)ライトでおびき寄せて吸引し、粘着シートで捕らえるという仕組みで、開発期間は6年。東南アジアで大ヒットしたのを受けて、国内でもこの春から発売を開始している。実勢価格が4万円超と高額なのに、空気清浄機売れ筋ランキングで上位をキープしている。

 あるいは、1年前の本連載で提案したように、ワイヤレス電力・データ転送技術を活用した「ワイヤレス・シャープ」構想などに取り組むのも面白いだろう。

 実は今回のシャープの役員人事で“技術重視”を象徴する動きがあった。郭会長が崇拝している日本人技術者、中川威雄・ファインテック会長が取締役に就任したのである。

 中川氏は、もともと東京大学の教授で、金型やプレス加工の第一人者だ。定年後、鴻海の中国子会社・富士康科技集団(フォックスコン)の技術顧問を務めてきた。この中川氏が鏡面研磨の小林研業など優れた技術を持っている日本企業を見つけてきて鴻海に紹介し、初期の頃のiPhoneやiPodの筐体背面の美しい光沢に活用してきたのである。

 郭会長が進めるこうした改革がシャープ再生のカギになるかもしれない。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

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