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一言も話せない女の子が落語家に  朝ドラ『ちりとてちん』ヒロインのモデルの知られざる過去とは

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 引っ込み思案で超ネガティブ思考なヒロインが上方落語に出会い、女流落語家を目指して成長する姿を描いたNHK朝ドラ『ちりとてちん』(2007年~2008年放映)。笑いあり涙ありの人情ドラマとして好評を博した朝ドラでしたが、同作ヒロインのモデルの1人と言われているのが、落語家・桂あやめさん。

 OLや嫁姑など身近な女性を主人公にした創作落語を演じることで、「女に落語はできない」と言われた落語界に新風を吹き込んだあやめさんですが、意外なことに、幼い頃は、幼稚園や小学校に行くと一言も話せない子供だったと言います。

 自身のエッセイ『桂あやめの艶姿ナニワ娘』では、そんな子供時代の日々が、以下のように綴られています。

「幼稚園へ突然放り込まれた時は、だれとどうしゃべっていいのかわからなくてとまどった。仕方がないので、隅っこに一人でいると、中でも一番活発なKちゃんが近づいてきた。『あんた何でしゃべれへんの?』。何で、と言われても何でかわからんので黙っていると、みんなの方へ行って『この子気持ち悪い、私がしゃべりかけても何にも言えへんねん!』。Kちゃんのよく通る声は、組中に響いた。そのときから私は”しゃべれへん気持ち悪い子”になってしまった」(同書より)

 この”幼稚園・学校では、一言も話せない”状態、発声器官に器質的障害はなく、家庭では話せるにも関わらず、特定の社会的「場面」では発話が困難な症状は、「場面緘黙(ばめんかんもく)症」というもので、米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では「Selective mutism/選択性緘黙」と呼ばれ、不安障害の一種とされています。

 いわゆる”人見知り”との違いは、社会生活に支障が出るほど症状が強く、数ヶ月、時には何年間もの長期間にわたって症状が継続する点。

 いくら声を出そうとしても、どうしても声が出ない状態だったあやめさんは「いつも明日になったら違う自分になっててみんなと遊べる、と思って寝る。が、行ってみるとやはり同じこと。そしてまた休む」(同書より)という日々を繰り返し、幼稚園という小さな社会生活に不適応を起こし、登園拒否するようになってしまったそうです。

 しかし、小学3年生の時、転校生に話しかけられたことが契機となり、症状は徐々に改善。「そのころのくやしい思いが爆発してか、今や舞台の真ん中でしゃべり倒している。人生どうなるかわからんもんだ」(同書より)と語る通り、花形落語家として客席を爆笑の渦に巻き込むのはもちろんのこと、講演会の講師としての顔も持ち、寄席以外の場でも活躍中なのだとか。

 来月8月6日(土)には、場面緘黙症の啓発を目的にした催し「かんもくフォーラム2016」が開催されますが、あやめさんも『場面緘黙経験者の落語家が語る ~笑いでコミュニケーション~』と題した特別講演に登壇することが決定しています。講演後には、長野大学社会福祉学部博士(教育学)・臨床発達心理士で、「日本緘黙研究会」事務局長の高木潤野さんによる、あやめさんへのインタビューも予定されており、同症の当事者や保護者、支援者にとっては見逃せないイベントとなりそうです。

【関連リンク】
「かんもくフォーラム2016」
http://kanmokuforum2016.wix.com/0806

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