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型破り教師と教育実習生がトラブルに立ち向かう!〜古川春秋『ジッシュー!!』

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「教育実習生が主人公の小説、聞いたことない!」と思って検索してみたら、他にもけっこうあった。不勉強でお恥ずかしい。ざっとみた限りでは、ミステリー小説の主人公である場合が多いようだ。当事者感も出せるし傍観者感も出せる、適度な距離で客観的な判断を下せる設定にすれば探偵役で、事情を知らず空気を読めないトラブルメイカーであればワトソン役でいけるだろうから、動かしやすいキャラではありそう。

 本書の主人公・加賀谷貴志(基本的にはワトソンタイプ)は、明日から教育実習が始まる大学生。教育実習の単位を取ろうとした動機は実に不純で、思いを寄せる同級生の阿久津香澄が「小学校の先生になりたい」という夢を持っていたからだ。ともに単位取得の難しい教職の授業を受け、「教員採用試験が終わったら、告白しよう」と心に決めていた貴志。しかし、一足先に地元に戻って教育実習を始めていた彼女から「実習先で再会した小学校のときの同級生に告白されて付き合うことになった」との報告が。傷心の貴志は道端でモデルのような女に目を留め、その彼女が「もう、先生。遅い」と呼びかけるこれまたイケメンで長身の男(オーデマピゲの腕時計を身につけ、ベントレーに乗る人物)を見かける。弁護士か政治家と思われたその男と、まさか翌日実習先の小学校で再び出会うとは…。

 高級ブランド男は5年3組の担任で、貴志の指導教諭の鞍馬優作であった。およそ教師らしく見えない鞍馬だが、児童たちの心はがっちりつかんでいる様子。成績優秀な子が多いクラスで、保護者や他の教師たちからの信頼も厚い。しかし、型破り。夜ごと違う女性(美人ばかり)を連れているのはともかくとして、第2話にあたる「四つの指令」における誘拐事件の解決ぶりなどは「それ、教師のやり口じゃねえだろ!」とツッコミを入れられてもしかたのないところだ。それでも、どんなに突拍子のない行動にみえても、すべては子どもたちの笑顔を守るためのもの。親の離婚問題に心を痛める子。誘拐事件の標的になった子。借金取り立てのトラブルに巻き込まれた元教え子。次々と難題を解決していく鞍馬は貴志に言う、「自分が最善だと思える選択を常に取り続ける。それしか、道はない」と。

 著者は、『ホテルブラジル』(角川文庫)で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。冬季休業中のホテルで繰り広げられる悪人たちの大金争奪戦を描いたものだそう。他の著作も、父親の訃報を受けてそれぞれ遺産を独り占めしようと企む三兄妹が登場する『家族ドミノ』(KADOKAWA)や、ドラマ化作品の完全オリジナルである警察サスペンスミステリの『BORDER』(同。金城一紀原案)など、ダーク寄りの作品が多いイメージである。『ジッシュー!』は鞍馬先生が多少ダーティではあるものの、明るく前向きな気持ちになれる小説。

 実は私も教育実習に行ったことがあり、鞍馬とタイプは別だが(一見セレブな奥様風、しかし中身はけっこうワイルド系の)ナイスな指導教諭のもとでビシッと鍛えていただいた経験がある。私は結局教師の道には進まなかったけれど、実習経験によって確実に成長させてもらった。貴志ほどの破天荒な体験をするケースはまずないだろうが、さまざまな事件を通して彼だけでなく鞍馬自身もさらなるステージに上がったに違いない。本書は至言の宝庫でもある。人間は間違いやすく、それは教師であってもなくても同じことだが、失敗は挑戦し続ける人間にのみ起こり得るものだと勇気づけられた。貴志が教職に就いたらいい先生になるだろうし、鞍馬はいい先生であり続けるだろうし、校長(もしかしたら鞍馬以上の大物)は完璧な教育者であり続けるだろう。

(松井ゆかり)

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