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【タベアルキスト】中野嘉兵衛商店~食材のルーツを辿る旅 其の4(後編)~産地を巡る冒険

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みなさん、こんにちは! メシ通レポーターのタベアルキストTokuharaです。

「料理」と「生産者」。両者を繋げる魅力ある「食材」のルーツを辿る旅。

第4回目は、「お酢」をテーマに。

前編では、老舗餃子専門店「宇都宮みんみん」の新店舗で、「お酢を使ったメニュー」を頂きました。

そこで効果的に使われていた「お酢」。

後編は、同じ宇都宮にあり、その「お酢」を製造している「中野嘉兵衛(なかの かへえ)商店」に場所を移してお送りします。

創業235年 北関東唯一の酢蔵

中野嘉兵衛商店─。

その前進は、いわゆる「造り酒屋」。天命元年(1781年)に、初代菱屋嘉兵衛が下野(現在の栃木県)芳賀郡赤羽で創業します。

ただ、明治初期。自由民権運動の激化や火災等の災難に見舞われ、酒が酸化するなどし、酒造業を続けることが難しくなります。そこで、作るものを酒から「お酢」に変え、酢蔵として再出発することになったのは、八代目嘉兵衛の時。

明治20年頃に、宇都宮に移転。その後も、空襲により廃業の危機に立たされますが、十代目嘉兵衛が再興。現在の場所に移り住んだのは、この時だそうです。

伝統を守り、新境地を切り開く十二代目

今回話を聞くことができた、中野浩行さん。

この世界に入って、今年で約25年。235年も続く老舗の伝統を守りながら、メディアへの出演やオンライン通販など、これまでやってこなかった事に、積極的にチャレンジしている“十二代目嘉兵衛” です。

冒頭写真の「宇都宮みんみん 餃子に良く合うお酢」も、十二代目が企画考案したもの。

餃子好きなお客さんの声に耳を傾け、商品化を決意。「宇都宮みんみん」の伊藤太朗社長に強い思いと共に商品化を提案し、生まれたものだそう。

伝統の「もろみ酢」とは味を変え、あくまで「宇都宮みんみん」の餃子を引き立てる脇役として、「宇都宮みんみん」各店舗のテーブルに置かれています。

(いずれのお酢も、オンライン通販で購入可能です)

では、どのような場所で「お酢」は作られているのか。

中野嘉兵衛商店の扉を開けてみましょう。

代々受け継がれてきた伝統の逸品「ミツビシ もろみ酢」

お酢作りの現場に足を運ぶ前に、

中野嘉兵衛商店のお酢づくりに欠かせない3つの素材を確認しておきます。 代々受け継がれてきた種酢 3年以上寝かせた酒粕 井戸から組み上げた天然水

これら3つの素材を混ぜ、

発酵 → 熟成 → 濾過という工程を経て、

伝統の逸品「もろみ酢」が作られます。

(「もろみ」とは種酢。次回仕込む酢の元になる酢のことです)

琥珀色が美しいこの逸品は、発酵に3カ月。さらに、熟成に3カ月以上。

ツンと鼻を突くような刺激はほぼ無く、口に含むと、まろやかで深いコクと甘味があるのが特徴的です。

(グラスに注いで頂いたこんな量でも、飲み干せました。計2杯も!)

また、この「天然醸造酢」は各種酵素及びアミノ酸等を多く含んでおり、血行促進や疲労回復などの効果があります。まさに「お酢は体に良い」のです。

では、お酢作りの現場へ

十二代目に案内され、「お酢」が作られる現場に足を踏み入れました。

扉を開けた瞬間、ホワァッとほのかな「お酢」の香りに包まれます。

幼少の頃からこの環境で育った中野さんは何も感じないとの事でしたが、これはなかなか体験出来ないのではと。

醸造の間 満ちる生命力

一角にある小部屋。ここが、お酢」作りの心臓部です。

代々使われている巨大なスギの樽が、2つ。その荘厳な姿に圧倒されると同時に、静けさに包まれた空間に言葉が出ません。

この大樽で約3カ月間、酒粕と地下水を混ぜた種酢を、じっくりと、丹念に発酵させていきます。

さらに、3カ月以上の熟成期間を経ることで、各種酵素やアミノ酸を多く含んだ「もろみ酢」が作られていくわけです。

「お酢」作りには、温度管理も重要な要素。

ただ、管理しているとは言え、季節によって酸味の出方が微妙に異なってしまうのだそう。ゆえに、ブレンドによって味を整えているとのことでした。

また、この大樽、やはりその手入れが大変。

数年毎に手入れするそうなのですが、この規格サイズの材木。そして、それを扱える職人さんの確保に、もっとも骨が折れるのだそうです。

お酢にとって住みやすい場所

部屋の壁に目をやると、そこには変わった模様が……。

これは、酢酸によって出来た(「お酢」が削った)模様とのこと。「お酢」は確実に生きていて、この小部屋に立ち込める香りと共に、生命の痕跡を残しているかのようです。

「『お酢』にとって住みやすい場所。ここで『お酢』を“育てている”という感覚」という十二代目の言葉が、とても印象的でした。

続いて貯蔵の間へ

発酵・熟成を経た「お酢」は、タンクへ。

高さ2メートルを超えるそれらには、1本あたり約2,000リットルもの「お酢」が貯蔵されています。ここからさらに濾過、瓶詰めされ、出荷されていきます。

そして、タンクの群れの足元には、まだ熟成前の若い酒粕が。

今回特別に見せて頂きました。これが将来「もろみ酢」になるわけですね。

酒粕の熟成には、3年以上。 年月を経ることで、色も真っ黒に変化していくのだそう。長い年月を掛けることで、ここに含まれる栄養素も豊富に満ちていきます。

この土地には良い水がある。だから離れられない

最後に、十二代目に質問してみました。

「『お酢』作りに一番重要なものは?」

その問いに対する答えは、「水」

「この土地には、幸いいい地下水が枯れずに流れている」

「だから簡単には動けないんです」

その土地に昔からあるものの上に築く、歴史と伝統。

そして、守るべきものを守りながら、新しいモノを創造する。

創業235年の老舗の十二代目は、まさにそれを体現されている方でした。

料理の名脇役「お酢」

「伝統」と「革新」──。

長い時間を掛けて作られる、「中野嘉兵衛商店」の伝統の逸品「もろみ酢」。

その「もろみ酢」を使って生み出された、老舗餃子店「宇都宮みんみん」の新しい料理たち。

2つの老舗を通して、いままで気付かなかった「お酢」の魅力を知る貴重な旅となりました。「宇都宮みんみん」の伊藤社長と、「中野嘉兵衛商店」の中野浩行さん。老舗の看板を背負うお二人の「お酢」を巡る冒険に、今後も目が離せません。

普段何気なく使っている「お酢」。

“十二代目嘉兵衛”中野浩行さんの言葉を借りれば、「料理の名脇役」と。酸味の強弱や量の加減次第で、料理の出来を劇的に変えてしまうこの調味料には、その言葉がまさにピッタリだと感じました。

いつもよりちょっとだけ「お酢」を気にして、料理を楽しんではいかがでしょう。

この記事を読む前と後で、

皆さんが感じる「お酢」の輪郭が、少しでも変わっていたら幸いです。

さあ、餃子を頬張りましょう! アルコールを片手に。

お店情報

有限会社 中野嘉兵衛商店

住所:栃木県宇都宮市東宿郷2-10-6

TEL/FAX:028-633-3675

営業時間:月曜日~土曜日 9:00~17:00

定休日:日曜日・祝日

ウェブサイト:http://www.nakanokahee.com/

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

(取材日 2016年6月24日)

書いた人:Yamato Tokuhara

特に、和食をリスペクトするタベアルキスト。幼少期より魚に囲まれ育った影響か、魚介料理には人一倍うるさい。ノンジャンルで年間350軒以上を食べ歩きながら、言葉の壁を超える“食”の素晴らしさを、海の向こうまで伝えることが、いまの生きがい。 Webサイト:Tabearukist Association facebook:Tabearukist Association

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