意外な妙味! コリアンタウン鶴橋の隠れ名物「キムチサンド」を食べに行く【大阪】
東京から大阪へ引っ越してきて以来、大阪の持つエネルギッシュな文化に圧倒され通しだが、とりわけ初めて鶴橋駅に降り立った時の衝撃は忘れられない。
西日本最大のコリアンタウンとして全国的にも有名な鶴橋。駅を起点にまるで迷路のごとく入り組んで広がるアーケード街の両脇に韓国食材店や焼肉店がひしめく様には有無を言わせぬ迫力がある。
その中にはホルモン焼きの名店も多数存在し、多くの肉マニアたちをうならせている。戦後の闇市を起源に大きく発展し、日本の焼肉文化をけん引してきたといっても過言ではない町が鶴橋なのである。
鶴橋が生んだ異種格闘グルメ「キムチサンド」
駅前のアーケード街にはキムチをはじめとした韓国食材を売るお店が立ち並び、観光客の姿も多く見受けられる。
右から左から「美味しいキムチあるよ!」「試食していってー!」と活気あふれる声が飛び交う。
そんなアーケードの一角に純喫茶然とした佇まいの「珈琲館 ロックヴィラ」というお店がある。
実はこちら、鶴橋の隠れた名物グルメ「キムチサンド」を出すお店として有名なのだ。
看板にも「特製キムチサンド」の文字が。
「キムチサンド? それは一体どんなものよ?」と思う方が多いであろう。その気持ちは私も一緒である。それを確かめにここにやってきたのである。呼吸を整え、お店のドアを開いた。
落ち着いた色調の内装とは裏腹に「いらっしゃーい!」と威勢良く出迎えられて驚く。
テーブル席4席とカウンター数席の店内はほぼ満席状態。常連さんとおぼしき方がお店に入ってくるなり「アイスコーヒーの冷たいやつお願い!」とギャグを飛ばす賑やかなムードだ。
キムチが玉子&マヨと融合している!
さてと、なにはともあれお目当てのキムチサンドをオーダーしてみよう。
今回は取材ということで撮影許可をいただいて作っているところを拝見。
トーストしたパンにたっぷりのキムチを乗せてドーンと豪快にサンドする様は圧巻である!
それを一口サイズに切って提供してくれるのだが、見た目からして厚みがありかなりのボリュームだ。
来た! こちらが完成品の「キムチサンド」(650円)
さっそくバクッとかぶりつくと、キムチの味は予想以上にマイルドだ。辛みはかなり控えめで、どちらかというと酸味の方が強く、その酸味も玉子とマヨネーズの風味と程よく融合している印象。キムチのシャキシャキした歯ごたえもクセになる感じだ。
これはうまい!
うまいし、他の何にも例えようのない不思議な味わいだ。
試行錯誤の末に生まれた企業秘密のキムチブレンド
キムチサンドが生まれた経緯について、「ロックヴィラ」店主・岩村瑛子さんの娘である岩村玲香さんにお話をうかがった。
キムチサンド、美味しいですね! このメニューはいつ頃からあるのですか?
ウチのお店「ロックヴィラ」は創業38年になるんですが、キムチサンドは20年前に母が考案したメニューです。(岩村さん、以下同)
▲取材当日、キムチサンドの生みの親である岩村瑛子さんは別の用事で外出中だった。ちなみにこちらが瑛子さん
キムチをサンドイッチにするという取り合わせはなかなか斬新ですよね。
夏の暑い、食欲がない季節に食べやすいもので、鶴橋らしさもあるメニューをということで母が考えついたそうです。最初はただキムチをパンに挟んだものだったんですが、お客さんの意見を聞きながら改良を重ねて、キムチとキュウリと玉子とハムをマヨネーズを塗ったパンで挟む今の形になっていったようですね。
このキムチは自家製なんですか?
いや、鶴橋の市場のものや韓国から取り寄せているものなど4種類をブレンドして、さらに母が自分で味を整えているんですが、それ以上は企業秘密というか、本当に母しか知らないんですよ(笑)。
すごい! サンドイッチにして美味しいように特別にブレンドしたものなんですね。では、愚問かもしれないですがこれを家庭でマネしようと思っても美味しくはできないですか?
ちょっと難しいかもしれません! たまに「おうちで試してみたよ」っていうお客さんもいらっしゃるんですが、やっぱりここで食べる方が美味しいと(笑)。水気を切ったりするのも大事で、普通のキムチだとベチャーっとしてしまうんですよ。
確かに。自分で試すとしたら……想像しただけで失敗しそうです。先ほどもお持ち帰りされているお客さんがいましたがお土産にされる方も多いんですか?
はい。もちろんできるだけお店で出来たてを食べていただきたいというのはあるんですが、お友達にも食べさせたいという方や、遠くから来られたお客さんでお持ち帰りしたいという方は多いですね。
「キムチサンド」以外にも名物メニューが!!
岩村さんによれば、「ロックヴィラ」の人気メニューは他にもあるという。そこで、おすすめをいただいてみることにした。
まずは「特製キムチピラフ」を。途中まではいわゆるピラフと同じ工程で作っていき、途中でキムチを投入しさらに炒めていく。
手際の良さに見とれていたらあっという間にできあがった。なんと目玉焼きが乗っかっている。こちらもかなり食べ応えのありそうな一品だ。
▲「特製キムチピラフ」(650円、目玉焼き・みそ汁付)
先ほどのキムチサンドとは違い、キムチピラフにはピリッとした辛みを感じる。目玉焼きの黄身はスプーンを差し込むととろっと流れ出す柔らかさ。これが辛味をマイルドに包み込んでくれて、その美味しさったらない。
さきほどのキムチサンドで使っているキムチのブレンドとはまた違うんですよ! このキムチピラフもお昼時にはかなり出ますねー。(岩村さん)
もうひとつのおすすめメニューだという「ミックスサンド」(650円)もいただいてみた。
あれっ! 想像していたのと違う……。
普通ミックスサンドっていうとサラダっぽいものを想像しますよね。これがうちのミックスサンドなんです。玉ねぎとマッシュルーム、ハムとコーンを玉子でとじて、マヨネーズも入っています。これも母が考案したメニューで、実はキムチサンドより先にできたものなんです。
玉子やハムがミルフィーユ状に挟みこまれていて食感も素晴らしい。
サイフォンで淹れるコーヒーはホッとする味わい
さて、今さらだが「ロックヴィラ」は喫茶店である。ドリンクメニューもチェックせずにはいられない。
人気メニューだという「ミックスジュース」「特製野菜ジュース」を飲んでみた。
写真向かって左が「ミックスジュース」(550円)、右が「特製野菜ジュース」(650円)だ。
「ミックスジュース」はその時々の旬なフルーツをミックスして作るらしく、この日はマンゴーの甘みが爽やかに細胞に染みわたっていくような美味しさだった。
一方「特製野菜ジュース」は、にんじんとリンゴをミックスしたもので、自然な甘みが特徴。砂糖は加えておらず、リンゴ本来の甘さのみなのだという。こちらも飲んだそばから元気が出そうな一杯だ。
シメにいただいたのが、これを飲みにはるばる東京からやってくるお客さんもいるというサイフォン式のコーヒー。目の前で入れていただき、魔法のようにコーヒーができあがる様をうっとり眺めた。
コーヒー豆についてはこちらも企業秘密だそうだが「珈琲館 ロックヴィラ」という店名を掲げるこのお店の粋を結集したかのような、香り高くもさっぱりと飲みやすい一杯だ。
キムチサンドにかぶりついた後にこんな美味しいコーヒー(400円)を飲めるお店は世界広しといえど、ここだけだろう。
最後に気になった「ロックヴィラ」というちょっとかっこいい店名の由来について、岩村さんにうかがってみた。
ロックが岩でしょ、ヴィラはヴィレッジで村です。簡単でしょ(笑)。
お店の方の明るく気さくな接客もとても心地よく、思わず長居してしまいたくなるようなお店であった。
ぜひみなさんも大阪・鶴橋にお越しの際は、キムチサンドを食べに寄ってみてください!
お店情報
珈琲館 ロックヴィラ
電話:06-6975-0315
住所:大阪府大阪市東成区東小橋3-17-23
営業時間:8:00~18:30
定休日:水曜日
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
書いた人:スズキナオ
1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。 Twitter:https://twitter.com/chimidoro
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