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官邸深奥発「憲法改正」肉声ドキュメント(2/4)

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 参院選の中で安倍晋三・首相は悲願の憲法改正について口を噤んでいった。官邸の内幕を描いた『総理』がベストセラーになり、いま最も政権中枢に近いといわれるジャーナリスト、山口敬之氏が、官邸内での憲法改正への肉声をレポートする。(全4回のうち第2回)

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 安倍と菅義偉・官房長官の動きを見ている限りにおいては、今回の参院選は(憲法改正に必要な)2/3を巡る与野党の攻防のようにも見える。しかし与党内には、それでは説明のつかない動きがあった。参院選中盤、自公候補の善戦を伝えるデータを前に、麻生太郎・副総理兼財務相は与党関係者に対してこう述べたという。

「もし2/3とっちゃったらどうするんだよ」

 麻生が危惧していたのは、二つの準備不足だ。一つは、憲法改正という国の根幹に関わるテーマであれば明確に選挙の争点に設定した上で、国民の信を問うべきだという「選挙前の準備」。そしてもう一つは、2/3獲得後に憲法改正論議をどう進めていくかという、公明党との「与党内調整」だ。

 公明党のホームページを見ると憲法について「平和・人権・民主の3原則を堅持しつつ、時代の進展に伴い提起されている新たな理念・条文を加えて補強していく『加憲』が最も現実的で妥当な方式と考えます」と記されている。しかし、憲法のどの部分に何を書き加えていくのか、具体的な内容は示されておらず、自民党との協議も全く進んでいない。

 4日にBSフジの番組に出演した公明党の山口那津男代表は、憲法9条の改正を目指す自民党と同じ種類の改憲勢力とみなされることへの抵抗感について、「全くある」と語気を強めた。

 選挙戦後半で連立のパートナーとの違いを強調しなければならなかったところに、「2/3を手にしたら、安倍自民党は改憲に一気に邁進するのではないか」という公明党の懸念が透けて見える。

 こうした与野党それぞれに渦巻く2/3への警戒感を横目に、安倍は選挙戦を通じて憲法改正を前面には出さなかった。先月22日に行なわれたテレビ朝日での党首討論では、野党側が憲法改正を争点にしない安倍を批判したのに対して、こう応じた。

「憲法改正しますって言ったって、それはあまりにもアバウトじゃないですか。(自民党の考え方は)マニフェストの中に書いてあります」

 暖簾に腕押しで批判をかわした対応は、逆に言えば、憲法改正を前面に出さないという安倍の強い意思表示だったといえる。初当選以来一貫して憲法改正の必要性を訴えてきた安倍はなぜ、今回の参院選では憲法改正の議論を封印したのだろうか。

 そこには、憲法改正が現実味を帯びるに連れて安倍の前に立ちはだかる、「保守層の不一致」と「国民投票」という二つの壁があった。
(文中敬称略。第3回に続く)

【プロフィール】やまぐち・のりゆき/1966年生まれ。フリージャーナリスト・アメリカシンクタンク客員研究員。慶應義塾大学卒業後、TBS入社。以来25年間報道局に。2000年から政治部。2013年からワシントン支局長。2016年5月TBSを退職。著書に『総理』(幻冬舎刊)。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

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