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超低金利の住宅ローン 変動型選べば未払い利息発生の恐れも

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 英国のEU離脱による世界経済混乱の影響も受け、史上最低水準を更新し続けている住宅ローン金利。もはや金利タイプは「変動型」「固定型」ともに1%を割り込み、どちらを選択しても金利差がなくなっている。

「だからこそ、これから住宅ローンを借りるなら全期間固定金利型をお薦めします」とアドバイスするのは、住宅ジャーナリストの山下和之氏だ。

 * * *
 住宅ローンには3つの金利タイプがあります。まず、借入後の金利の動向によって適用金利、返済額が変わる「変動金利型」があり、反対に完済までの金利が確定していて、借入後に金利が変わっても適用金利・返済額とも変わることはない「全期間固定金利型」があります。

 さらにその中間的な存在として、一定期間のみ固定金利で、一定期間後にはその時点の金利で固定金利と変動金利型のどちらかを選択できる「固定期間選択型」もあります。

 変動金利型は市中の金利に応じて金利を変更できるので、金融機関は常に一定の利ざやを確保できます。金融機関にとってはリスクがないので、金利を最も低く設定しています。では、誰がリスクをとるのかといえば、利用者。借りる人にリスクを押しつける形で、金利を安くしていると考えることができます。

 それに対して、全期間固定金利型は借入後に金利が上がっても、返済額が増える心配はありません。でも、その分変動金利型に比べると金利が高くなります。

 金融機関にとっては、貸出後に金利が上がっても適用金利を上げられないので、逆ざやになるリスクが大きくなります。そのリスクを負うのですから、金利を高くせざるを得ないのです。利用者にとっては、返済額が変わらない安心がある分、金利が高くなっているわけです。

 それがこのところの金利低下局面では、全期間固定金利型の金利低下率が極めて大きくなり、変動金利型との差が縮小しています。ですから、これから住宅ローンを利用する人にとっては、より安全な全期間固定金利型の住宅ローンを借りるチャンスのときですし、すでに変動金利型ローンを利用している人にとっては、より安全な全期間固定金利型の住宅ローンに借り換えるチャンスのときなのです。

 なぜ全期間固定金利型にしたり、全期間固定金利型に借り換えるのがいいのか、それは変動金利型には大きなリスクがあるからです。まずはそのリスクの恐ろしさをみておきましょう。

 以下、シミュレーションでは借入額3000万円、返済期間35年、金利はメガバンクの最優遇金利0.625%とします。

 この条件で、ボーナス返済しないときの毎月返済額は7万9544円です。あまり頻繁に返済額が変わると資金計画を立てにくいので、5年間は返済額は変わりません。5年の間に金利が変わったときには、返済額のうちの利息と元金割合を変更して調整します。

 つまり、金利が上がったときには返済額は変わらないものの、当初より利息割合が多くなり、元金の減り方が遅くなります。最悪の場合、利息分だけで毎月返済額より多くなって、“未払い利息”が発生する可能性もあります。

 たとえば、この条件で2年後(24回終了後)経過後の25回目の返済額の内訳は、7万9544円のうち利息が1万4854円で、元金が6万4690円です。金利が変わらなければ、1回の返済で6万円以上元金が減っていくことになります。

 しかし、この時点で金利が2%上がったとすれば、25回目の利息は6万2249円に達し、元金は1万7295円しか減りません。

 3%上がって3.625%になれば、利息分だけで8万5963円に達します。毎月返済額の7万9544円より6419円多くなります。これが未払い利息です。つまり、毎月約束通りに返済しているのに元金が減るどころか、毎月6000円以上の未払い利息が積み重なって、実質的に元金が増えてしまうということです。

 もうひとつのリスクが5年後の返済額増額です。変動金利型では5年に1度返済額を見直すことになっています。やはり借入額3000万円、金利0.625%の35年返済で、便宜的に5年間は金利が変わらず、5年後に金利が1%上がって1.625%になったとすれば、6年目からの返済額は9万1668円に増えます。

 それまでの7万9544円に対して、15.2%の増額です。さらに、2%上がって2.625%になると計算上の返済額は10万9852円です。ただし、変動金利型には5年後に返済額が増える場合には増額率を25%までにするというルールであるので、7万9544円×1.25で9万9438円が上限です。この場合も、不足分は元金と利息で調整し、元金の減り方が遅くなります。

 そう指摘すると、「そんなに急激に金利が上がるはずはない」という声が聞こえてきそうです。たしかに現在のように、世界的な停滞感が強い上に英国のEU離脱といった波瀾要因が重なっているなかでは、しばらくは急激な景気回復は望めず、金利の上昇もないでしょう。

 しかし、住宅ローンは20年、30年と返済が続きます。長い目でみれば、金利の上昇がないとはいえません。いや、むしろかつてない超低金利だからこそ、上がるときには急激な上がり方になる可能性がないでしょうか。過去には2年間で住宅ローン金利が3%以上上がったこともあります。絶対にないとはいえないでしょう。

 にもかかわらず、多くの人が変動金利型を利用しています。住宅金融支援機構が昨年12月から今年2月に実施した調査によれば、4割近い人が変動金利型を利用しているのです。

 この調査の後、マイナス金利の導入で3月以降急速に金利が低下して、住宅ローン金利についても先高感がなくなって、いっそう変動金利型を利用する人が増えているのでないかとみられます。

 しかも、先に触れた変動金利型のリスクを十分に理解しないままに、利用している人が少なくありません。前出の住宅金融支援機構の調査では、借入後の金利上昇による返済額増額への対応について、「理解しているか不安」「よく理解していない」「全く理解していない」とする人の合計が5割近くに達します。

 この状態で返済額が増えると滞納が発生したり、最終的にはローン破綻や自己破産に陥る人が出てくることになるでしょう。

 そんなことにならないように、これから住宅ローンを借りるなら全期間固定金利型の住宅ローンにしましょう。すでに変動金利型を借りている人も、この超低金利局面を活かして、より安全な全期間固定金利型のローンに借り換えることが可能なのです。

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