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永六輔さん 生前語っていた死生観と渥美清さんとの遭遇

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《最後の死は、死者を覚えている人が誰もいなくなったとき》──11日に亡くなったことが明らかになった永六輔さん(享年83)の著書『永六輔のお話し供養』では、そんな信念を持つ永さんと親しかった著名人との交流秘話が描かれている。“寺の子”である永さんが、長年の仕事仲間で『話の特集』元編集長・矢崎泰久さんと“永遠の別れ”について『女性セブン』2013年1月1日号で語り合っていた。

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矢崎:永さん、こういう話を知ってる? 人間は一生にだいたい300万人の人間と知り合うんだってね。で、そのうち約3万人の人間の名前を覚える。さらに3千人と親しくなるというんだけど。

永:一方的に会うということも含めると、ぼくのような“放送の人間”は桁が違う。でも、ごめん、ぼくは数字は駄目なの。

矢崎:うん、知ってるよ(笑い)。でも、その知り合った人のうち死んだ人のことも覚えていれば、一生にはずいぶん大勢の人間を背負い続けるというんだけど。永さんは前から「たとえ死んでも、その人のことを覚えている人がいれば、それは生きてるのと同じだ」と言っていたけど、いつごろからそう考えてきたの?

永:ぼくは寺の子だから。人が死ぬっていうことが日常だったんだよね。花屋さんが花を、魚屋さんが魚を商うのと同じように、寺は、人の命のおしまいに立ち合ってきた。

矢崎:だから、死を身近に感じてきたわけだね。

永:ところで、最近はメディアでも一般の人でも、人が亡くなるとよく「天国へ行った」とか「天国で誰それと会っている」と言いますね。でも、仏教だったら天国はない。西方浄土なんです。もっと言えば、「草葉の陰」です。だから、お盆やお彼岸に帰ってくるのが簡単なんですよ。天国へ行っちゃうと行き帰りが大変(笑い)。

矢崎:お迎えに宇宙船を飛ばさなきゃ駄目だ(笑い)。

永:何でもないことだけど、そこを間違えないでほしい。キリスト教やイスラム教の場合は一神教で、天に神さまがいる。だから、天国でいいんです。われわれのところは、お坊さんにしてもお地蔵さんにしても、神さまにしても八百万の神々がいて、それと同じぐらい仏さまもいるの。

矢崎:要するに身近にいるってことが大事なんだね。

永:そう。だから、ぼくらの話を聞いているかもしれないから、悪口を言わないようにする。お盆とかお彼岸に高速道路が渋滞になるでしょう。あれは、亡きおじいちゃんやおばあちゃん、ご先祖のお墓参りに帰るんだよね。毎年のあの渋滞は、日本人がいかに信心が厚いかっていうことなんですよ。

矢崎:そうか、渋滞になるのはいいことなんだ(笑い)。自分たちも気がつかないだけで、日常的に信仰心を持って生きてる証拠だね。

永:お盆には日本じゅうで迎え火と送り火を焚き、花を供え、盆踊りのやぐらを組むけど、あれは、まさにあの世から見えるように「ここがあなたのふるさとですよ」と教えてあげることなんです。

矢崎:永さんは、ぼくと一緒に歩いていても、雑踏の中で誰かに“会っちゃう”んだよね。おれにはわからないけど、「今、渥美ちゃん(渥美清さん、享年68)に会ったよ」とか。すごく不思議…。

永:霊魂とか怪奇現象ではありません。ぼくがパーキンソン症候群という、幻覚を伴いがちな病気だからですよ。

 でも、その人とそっくりな人が地球上に何人かいるっていうじゃない。だからみんな、その人と会ったと思えばいいの。そこで、そっくりな人だなと思うか、当人だと思うかは心の持ち方しだいで…。

矢崎:それって、普段からの心がけ?

永:そんな立派なものじゃなくて、今、あの人がいたらどんな話をするだろう、何をしたいと思っているだろうか…そう考えているだけだよ。渥美ちゃんの場合も、彼がいたら何を一緒に食べようかな、と考えている。その思いが、見えることにつながるんだと思っている。

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 著書『永六輔のお話し供養』(小学館)で、永さんは親しかった亡き8人の著名人との思い出を綴っている。最初に登場するのは渥美清さん(享年68)。永さんは、2011年の東日本大震災の被災地を訪ね歩いたとき、瓦礫の山と化した現地で、渥美さんを見かけたという。そして、親しかったゆえに、それまでどこにも書いたことがなかったという渥美さんのエピソードを紹介し、「下町の品性」を備えていた人だったと偲んでいる。

矢崎泰久(やざき・やすひさ):1933年東京生まれ。日本経済新聞の記者などを経て、『話の特集』(1995年休刊)を創刊し編集長を務める。イラストレーターの和田誠氏、写真家の立木義浩氏などの多才を起用し日本の雑誌文化に大きな影響を与えた。現在もジャーナリストとして活躍し、『生き方、六輔の。』(飛鳥新社)など永氏との共著も多い。

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