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あの日、水を求めてさまよい歩いた私。差し出された1本のミネラルウォーターに感涙

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2011年3月11日、未曾有の大震災が日本を襲いました。

当時我が子は8ヶ月。住まいは東京で大きな被害はありませんでしたが、連日の余震で家は揺れ続け、幼い我が子をぎゅっと抱きしめながら、テレビの前で祈ることしかできませんでした。

そして大地震から数日後、原発事故の影響で、東京都水道局から「乳児の水道水の飲用は控えるように」との通達が出ました。

それを聞いて、娘用の飲料水を確保するため、すぐさま抱っこひもで買い物に出ました。

でも、ひと足遅かったようで、近所のスーパーで数日前には見かけた飲料水が片っ端からなくなっていて、お茶やジュースまで棚の上からすっからかんに消えています。 関連記事:乳児を抱え、水や空気さえも毒に感じられた日々…東京から関西へ一時避難した私

その時はまだ、この先どうなるのかもわからない状況で、水道水の摂取制限がいつ解除されるのかも不明。

もしかしたら今以上に状況が酷くなって一切の食べ物飲み物が手に入らなくなってしまうかも、という不安もありました。

私は娘を抱っこしたまま、何軒ものスーパーやコンビニをはしごしました。

でも、どこに行っても水はありません。東京のど真ん中で水を求めて歩き回る日が来るなんて、震災前の自分には信じられないことでしょう。

近場のお店は全てあたって、隣町もぐるりとめぐり、もうあきらめかけた時、小さな個人商店の酒屋さんが目に入りました。

レジにいた大学生くらいのお姉さんに「すいません、水はありますか?」と聞くと、やっぱり「全部売り切れてしまいました」とのこと。

なんとか娘が飲めるものはないかと店内をウロウロしてみますが、残っているのはウイスキーや日本酒などのお酒ばかり。

あきらめて帰ろうとした時、さっきのお姉さんがポンポン、と肩を叩いてきたのです。そして、すっと差し出した彼女の手には、なんと、500mlのミネラルウォーターが!

「あの、すいません、これ1本だけですけど、今朝自分で購入したものです。よかったら持って行ってください。」

「え、でも…」

びっくりしてとまどっていると、彼女はニコッと笑いながら続けて言いました。

「いいんですよ。今、このお水は私よりも赤ちゃんにとって必要なものだと思うから、この子にあげたいんです。どうぞ」

彼女の笑顔を見て、疲れと不安と安堵の感情が入り混じり、ポロポロと涙が溢れ出しました。

この先どうなるのかもわからなくて、不安なのはみんな同じなのに、貴重な水を差し出してくれた店員さん。

乳児がいなくても大量に買い占めしていく大人が大勢いる中で、二十歳そこそこの店員さんが、見ず知らずの赤ちゃんに水を譲ってくれるなんて…。

鬱々としていた心にパーっと光が差し込んだような気持ちでした。私は何度も頭を下げて店員さんにお礼を言い、その1本の水を大事に抱えて帰路につきました。

その後、乳児の水道水摂取制限は解除され、混乱していた流通も徐々に落ち着きを取り戻し、次第に日常が戻ってきました。

でも、あの時の親切は、今でも忘れることができません。

大災害でみんなが不安になっている最中に、冷静な判断と意思を持って弱い者を助けるのはなかなかできることではありません。

私も彼女を見習い、困っている人がいれば、行動できる人間でありたいと常々思っています。 普段の生活にも「救われたひとこと」が。関連記事:「もう一回押していいですよ」運転手さんの粋な計らいに感謝。2歳児連れ妊婦、バス車中の出来事

著者:たま

年齢:35歳

子どもの年齢:5歳と2歳

フリーランスのママライター。5歳、2歳の娘と同業者の夫との4人家族。子ども達が寝静まった後にパソコンに向かい仕事をしようとするものの、つい甘いものを食べながらネットサーフィンに夢中になり、気づけば朝を迎えている毎日。なんでも手作りするのが大好きで、今年は味噌作りに挑戦しようと思っている。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

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