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渋谷の抜かない歯科医 「抜け抜け詐欺」の増加を懸念

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 歯を削って、抜いて、インプラントや入れ歯に……そんな安易な選択に流れがちな歯科治療に異を唱える現役の歯科医がいる。東京・渋谷にあるサイトウ歯科医院の斎藤正人院長は、「抜かない歯医者」を標榜し、自身のHPには〈セカンドオピニオン承ります〉と記している。

“もうこの歯は抜くしかありませんね”──そんなふうに歯医者にいわれた患者を診察し、抜かないで治す術を探る取り組みを続けているのだ。斎藤院長のもとには、全国から患者が相談や治療に訪れるという。

「抜かなくてもいい歯を抜こうとする医者が多すぎるんです。北海道から九州まで、色んなところの方にセカンドオピニオンを頼まれますが、酷いケースでは“早く抜かないと(口腔)がんになる”といわれた人もいた。インプラントを全否定はしないが、中には『抜け抜け詐欺』と言いたくなるような歯医者がいる。そうした悪質なケースが、年々増えていると思います」

 斎藤院長が学生時代を過ごした1970年代には、歯科教育の中で「歯医者は歯を残すのが一番大切な仕事」と教えられたという。斎藤院長は、歯学部を卒業後、神奈川歯科大学大学院で歯科保存学を4年間学んだ。

「当たり前の話ですが、歯は抜いてしまったら二度と生えてこない。だから歯医者はまず歯を残すことを考えるべき。その上で、ブリッジがあって、入れ歯があって、インプラントがある。

 にもかかわらず“まず抜いて、インプラントありき”といった治療が横行しています。昔は、学生が治療の練習用に抜去歯(患者の抜いた歯)の実物を集めようとしたら、矯正歯科の先生のところに消毒液を入れた瓶を持って頼みに行っていたが、今はインプラント専門の治療施設で大量に抜去歯がもらえる。状況は全く変わってしまいました」

 歯科治療が歯を抜くことありきの流れに傾くのは、「歯科医10万人時代」を迎えて、増えすぎた歯科医が経済的に困窮している背景が大きいと斎藤院長はみる。

「乱暴にいえば、歯を残す治療は時間がかかるだけで、儲からないんです」

 自由診療であるインプラントの相場は1本40万円程度で、なかには「1本100万円」といった請求がなされるケースもある。

「一方、保険内で『残す治療』をやると高くても4000円くらい。それでいて治療には1時間程度の時間を要するのですから、割に合いません。そうなると、悪そうな歯は抜いてしまって、『お金がある人にはインプラント』『お金がない人には安い入れ歯』というかたちで回していったほうが、効率よく儲かるのです」(斎藤院長)

●レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2016年7月15日号

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