「手取りが多くてラッキー」があなたの老後を不幸にしていた…。“脱法給与明細”のカラクリ

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「給与明細なら、手取り額だけ見て捨ててますけど…」

――という人は、特に注意が必要かもしれない。

ブラック企業大賞にノミネートされたこともあるA引っ越し会社は、「みなし残業」が100時間を超えていたし、過労死者を出した居酒屋チェーンSは、80時間もの残業代が基本給に組み込まれていた。

ここまでくると、その異常性に気づいて対策できるかもしれないが、普通の会社に見えても裏側で不正な操作を行っている“脱法給与明細”も存在する。それに気づかずに勤続していると、将来大損をするかもしれないのだ。

◆社会保険料のゴマかし。やけに手取り額が多いと思ったら…。

新宿区の印刷会社で働く杉本さん(仮名・25歳)は、大学の同期との飲み会で、「毎月、保険と税金で〇万円も引かれてる。ほんと高いよ…」という友人の何気ないグチに違和感をおぼえたという。

杉本さん「自分と友人は給与の額面は同じはずなのに、どうして控除額が違うのかと不思議に思ったんです。そのときは『ウチの会社は手取りが多くてラッキー』なんて思っていたんですけど、あとから事実を知って愕然としました…」

「手取りが多くてラッキー」があなたの老後を不幸にしていた…。“脱法給与明細”のカラクリ

杉本さんの給与明細からは、社会保険料の納付額が不正に操作されている痕跡が見つかった。社会保険料(健康保険、厚生年金)は、会社と社員で半分ずつ負担して納めるのが一般的だが、会社が負担する金額を安く抑えるために、杉本さんの給料を低く見せかけていた可能性がある。

年金や失業手当の受給額は、納付金額が計算のベースになるので、いざ年金や失業手当を受け取るときになって、「思ったよりも金額が少ない・・」ということにもなりかねないのだ。

◆あなたの会社は大丈夫? 社会保険料の計算式

社会保険料は、基本給、通勤交通費、各種手当の合計額に一定の料率を掛けて計算される。業種や加入保険組合によって料率は異なるが、現在の厚生年金保険の料率は、17.474%(18.3%の固定料率まで毎年上がり続ける)。これを会社と社員で折半することになるので、社員の負担は総支給額の約8〜9%が目安だ。

仮に給与の総支給額が30万円だとしたら、社会保険の合計が2万4千円〜2万7千円ほどなら問題ないが、これよりも極端に安かったりすると、給与記録の届け出を不正に操作している可能性がある。

控除額が明らかにおかしい場合は、自分が納付している金額を日本年金機構に問い合わせるなど、調べたほうがいいだろう。

◆給与明細がなぜか2枚。給料も2社から支払われる。

都内の警備会社「X」(※現在はすでに廃業)に勤めていた栗田さん(仮名・43歳)は、いつものように出社すると上司から呼び出され、「今後、給与の支払いを今の会社と、グループ会社の2社から支払われるようになる」という説明を受けたという。

栗田さん「雇用関係にある会社(A)と、グループ会社(B) それぞれから税金や社会保険料が控除されていました。(A)の基本給は半分以下になりましたが、その補てん分が(B)から支払われます。手取りも控除も今までと変わらなかったので気にしていませんでしたが、失業手当の給付金額をみてようやく不正に気づきました……」

「手取りが多くてラッキー」があなたの老後を不幸にしていた…。“脱法給与明細”のカラクリ

ここでのポイントは、雇用関係にある会社(A)と、グループ会社(B)、それぞれから給与明細が発行されており、両方から社会保険料が控除されているという点だ。

給与明細を2つに分けて、(A)から支払う給与を安く見せかけることで、社会保険料が低くなる。すると、半分負担する必要のある会社側の経費が節約になる。さらに悪質なことに、警備会社「X」は、控除は(A)(B)の両方から行い、納付は(A)の分しか納めていなかった可能性が高い。

保険料の会社負担が半分になる上に、控除は2倍の金額を差し引くという極めて悪質なケースだ。

グループ会社への出向がある会社は給与明細が2枚出るケースもあり、給与明細が2枚=即不正、ということにはならないが、注意が必要だろう。

 ◆  ◆  ◆

あとになってから、失業手当や年金の受取金額が少ない! なんていうことになっては泣くに泣けない。あなたも“脱法給与明細”を見逃してはいないだろうか。

(新刊JP編集部)

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