自覚の無い摂食障害 その実態と治療法について

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自覚の無い摂食障害 その実態と治療法について

摂食障害の最大の問題は初期に病気の自覚がないこと

摂食障害の中でも特に拒食症の初期において最大の問題は、病気の自覚がないことにあります。
それは摂食障害という病気の実態がまだまだあまり知られていないということも理由ですが、やせにこだわるあまり病気であることを認めようとしない心理が働くことも大きな理由です。
本人にとって、やせるということは何よりも価値のあることなので、それを否定されても受け入れられないのです。
さらに病的なレベルまでやせると、「ボディイメージのゆがみ」という症状が表れます。
不思議なことに、やせればやせるほどに自分は太っているという感覚が強まってくるのです。
そのため、いくら周囲が説得しても、正常な判断ができなくなることもその理由です。

ダイエットと摂食障害の境界線は?

では、単なるダイエットと摂食障害の境界線はどこにあるのでしょうか?
一言で言えば、一般的なダイエットではやせを目指していても、正常な体重の範囲で妥協できるのです。
やせすぎるとホルモンの異常をきたし、女性の場合であれば生理が止まるのですが、そのような病的なレベルまではやせないのです。
仮にもっとやせようとしていても食べたい欲求を抑えられず、つい食べてしまうなどしてダイエットに挫折してしまいます。
ある意味、これが正常なのです。

ところが、ごく一部の人はそのラインを超えて病的なレベルにまでやせ、摂食障害に陥ります。
なぜ陥るのかを一言で述べるのは難しいですが、性格的な特徴として、自分に自信がなく、強い自己否定が見られる傾向があります。
そうした人がやせるということに自分の価値を見出したとき、異常なレベルにまでやせることがあります。

摂食障害は心身両面からの治療が必要

一旦、摂食障害の世界に入り込むと抜け出すのは容易ではありません。
摂食障害という病気の心に支配され、周囲の助言を受け入れられなくなるので、その治療はとても難しくなります。

摂食障害とは心と体の病気です。
ですから、心身両面からの治療が必要です。
治療は複合的で、様々な面からアプローチしなければなりませんが、何より重要なのは病気の自覚を促し、治療への動機付けを高めることです。
先に述べたように本人には病気の自覚がありません。
さらに、病気であることよりも強烈なやせへのこだわりがあるため、治療を行うことに対して抵抗する傾向があります。
ですから、治療がうまくいくかどうかはこの動機付けにかかっていると言っても過言ではありません。
この動機付けができなかったために治療に同意できないと、生涯、摂食障害を背負い続けることもあります。

具体的な治療としては、まずは体の回復を図ることが重要で、食事療法や行動療法などを行います。
ただ体の回復を図らなければならないのは当然のことながら、摂食障害による病気の心やこの病気に至ったもともとの心の問題を理解することが重要です。
多くの場合、摂食障害はその性格に根ざしているところがあるので、病気の症状だけを治そうとしても治すことはできません。
心の成長を促し、本当の自分に目覚め、ありのままの自分で過ごして幸せに生きられるような自分へと導くことが必要となります。

このように摂食障害はとても難しい病気です。
ですから、治療を行う場合には摂食障害を専門とする病院で治療を行い、医療者とともに二人三脚で歩んでいくことが望ましいと思います。

(泉 和秀/精神科医)

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