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小田急線の「複々線化」で見込める3つの効果とは?

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雑踏でにぎわう下北沢の街なかから仮設塀一枚で隔てられた工事現場。現場事務所や重機の脇、地面にポッカリと空いた立坑(たてこう)を降りると、コンクリートで囲われたトンネルが新宿方面に向けて緩い勾配とともに延びる……。2016年6月9日、小田急電鉄は、小田急小田原線の複々線完成による効果説明会と工事現場見学会を開催した。

複々線化は工事着手から30年がかりの難工事

小田急電鉄は、東京都の連続立体交差事業と一体的に「小田急小田原線複々線化事業」を行っている。2017年度には複々線の完成、2018年度には下北沢駅舎を含む事業完了を目指し、東北沢~世田谷代田間の1.6kmの工事を進めている。

首都圏の私鉄のなかでも「混んでいる」という印象の強い小田急線であるが、これまでも車両の長編成化や、運行間隔を短くし増発することによって、通勤ラッシュ時の混雑緩和には取り組んできた。ただし、線路の容量から走行できる列車の本数にも限界がある。

この複々線の完成により、混雑が格段に緩和される。

【画像1】地上線路が撤去された下北沢駅付近の複々線工事現場。立坑から地下の緩行線(各駅停車が走行する線路)トンネルの工事現場に入る(写真撮影/村島正彦)

【画像2】緩行線トンネルの構築部分。このトンネルの下部に現在供用されている急行線トンネルがある(写真撮影/村島正彦)

そもそも、小田急電鉄の複々線化は、東北沢から和泉多摩川までの10.4kmの区間について、上下線各1本ずつ計2本(複線)から、上下線を各2本ずつの計4本の線路にする事業だ。都市計画を受け工事着手したのが1989年であるから、30年近くの長期にわたって行われている。このうち梅ヶ丘から和泉多摩川までの8.8kmは、既に完成し供用されている。

この「複々線化事業」は、東京都が事業主体となり実施する「連続立体交差事業」と一体的に行われている。2013年3月に地下化し、同区間にあった9カ所の踏切が廃止され、鉄道と道路の安全性能向上や交通渋滞の解消など、連続立体交差事業の効果が現れている。

【画像3】複線と複々線化の比較(画像提供/小田急電鉄)

【画像4】経堂~千歳船橋間の複々線区間(2004年完成済み)(画像提供/小田急電鉄)

この日、見学会でマスコミ向けに披露されたのは、急行線の上部を通る緩行線(各駅停車が走行する線路)トンネルの工事現場だ。

地下の深部を通過する急行線トンネルは、下北沢~世田谷代田間においてシールドマシンと呼ばれる掘削機で掘り進める工法で行われた。一方、現在工事中の地上から比較的浅い位置を通過する緩行線トンネルは地上から開削して構築し、埋め戻す工法が採られているという。

現在は、暫定的に急行線の2線で緩行電車、急行電車を含む全ての輸送を担っているが、緩行線の開通によって2線2層の複々線が開通する。完成に伴うダイヤ改正については、2018年3月を予定しているという。

【画像5】小田急小田原線の複々線の事業スケジュール。10.4kmの区間のうち、残る東北沢~世田谷代田間の1.6kmの工事を進めている(画像提供/小田急電鉄)

【画像6】東北沢〜世田谷代田の区間は、地下式構造の2線2層で整備する。深い部分を走る急行線は完成・供用済。工事中の緩行線は2017年度に完成予定で、2018年3月にダイヤ改正される予定だ(画像提供/小田急電鉄)

複々線化で混雑緩和と所要時間の短縮

複々線化によるメリットは、混雑緩和と所要時間短縮、そして千代田線直通列車の増発による都心中心部へのアクセス向上の3つだ。

最混雑区間(世田谷代田~下北沢間)において、朝のラッシュピーク時間帯に、現在は1時間に27本が走っている。小田急電鉄執行役員交通企画部長の黒田聡さんは、完成後は「あくまで目安」としながらも「36本に増やしたい」と説明する。

混雑率については2015年度のピーク時混雑率191%(体が触れ合いやや圧迫感のあるレベル)から、完成後には、160%(新聞・雑誌を楽な姿勢で読むことができる)程度まで低減させることができるという。黒田さんは「小田急は混雑しているという印象を払拭したい」と語る。

また、急行電車、緩行電車ともに併走する電車の待ち合わせをする必要がなくなることで、それぞれ所要時間が短縮される。「ラッシュ時には町田駅から新宿駅までの所要時間は現状で48分※だが、完成後は38分へと、10分短縮されます」(黒田さん)と説明する。

※急行乗車時

【画像7】2015年度にピーク時191%の混雑率を、完成後には160%程度まで低減が可能(画像提供/小田急電鉄)

「新たに住宅購入する方は、自宅から職場まで1時間以内の場所を志向するそうです。駅まで、駅からの徒歩の時間も考慮すると、鉄道に乗る時間は”40分以内”が一つの目安となります。複々線化の完成により、ターミナルの新宿駅から町田駅や小田急多摩センター駅まで40分圏内に入ることになり、小田急線沿線の住宅地としてのポテンシャルが高まります。ゆくゆくは新規住宅開発の促進や、新しい住民に選んでもらえることで沿線の人口増加も見込めるのではないか」(黒田さん)と期待を寄せる。

これに加え、代々木上原駅から千代田線への直通列車も、ラッシュ時に1時間当たり現行5本を、完成後には12本に増やしたいとし、霞ケ関・大手町など都心中心部へのアクセス性も向上するという。

このほか、混雑の緩和と所要時間の短縮により、競合する他路線をこれまで利用してきた乗客を取り込むことも期待されると分析する。小田急電鉄によると「複々線効果でお客さまが増えることにより、現状と比べ2020年度には約50億円の増収を目指す」(黒田さん)と予測している。

【画像8】複々線化によりターミナルの新宿駅や千代田線に接続する代々木上原駅までの所要時間が短縮する(画像提供/小田急電鉄)

下北沢新駅舎には商業施設も

地下の緩行線トンネルの構築工事と並行して、下北沢駅舎工事が行われている。現在、躯体の建設が進められているのは、京王井の頭線との交差部から西側(小田原方面)だ。

下北沢駅は、小田急線の北側と南側で建物1階分の高低差がある。その地形を取り込みながら駅舎は計画されているという。また、下北沢の街の東西、南北の歩行者の行き来に当たっては、これまでは駅を大きく迂回しなければならなかったが、新しい下北沢駅舎では自由通路を設けることで、スムーズに行き来ができるようになるという。このほか、駅舎の2階部分には東西に行き来する自由通路を挟んで商業施設が配置される計画となっている。

下北沢駅舎については、複々線完成後、2018年度の完成を目指しており、これによって全ての事業が完了となるという。

鉄道利用者にとっては、あと2年を切った小田急線の複々線の完成により、混雑の緩和と運行時間短縮が期待される。

【画像9】新しい下北沢駅は分断されていた下北沢の街の回遊性を確保するよう自由通路を設ける。改札口は、新宿方面(東口)、小田原方面(南西口)、京王井の頭線への乗り換え(中央口(小田急))の3つを設ける(画像提供/小田急電鉄)

【画像10】線路が廃止された地上部分。新宿方面から小田原方面を望む。小田急線に交差する京王井の頭線の高架が見える。下北沢新駅舎は黄色いクレーンが見える付近に改札を備え建設される。駅前には世田谷区画街路第10号線の交通広場の整備が行われる。広場内にはバスの乗降場、タクシー乗り場等が予定されている(写真撮影/村島正彦)

【画像11】小田原方面から見た建設中の下北沢新駅舎。駅南北で高低差がある。正面には小田原方面の改札口(南西口)が設けられる(写真撮影/村島正彦)

【画像12】新駅舎から小田原方面を望む。地上線路跡地には駐輪場などのほか世田谷区が立体緑道を整備する予定だ(写真撮影/村島正彦)

【画像13】新駅舎の2階部分。東西の自由通路沿いには商業施設が並ぶ予定だ(写真撮影/村島正彦)

【画像14】駅舎の建設と平行して、本設のエスカレーター・エレベーターの工事も進めている(写真撮影/村島正彦)

【画像15】現在供用されている下北沢駅南口の様子。新駅舎ではこの改札は廃止され新宿方面側の改札(東口)に統合される予定だ。右側に見える京王井の頭線の橋梁架け替え工事も2016年度本格化する(写真撮影/村島正彦)●参考

小田急電鉄 複々線化事業
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/06/113835_main.jpg
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