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人が怖い、抗うつ薬が効かない「社会不安症(対人恐怖症)」が改善? 世界初の検証結果が発表!

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誰でも重要な場面では緊張を感じるものですが、「社交不安症」(対人恐怖症)を抱える人は、何気ない日常的な場面で恐怖を感じてしまいます。その恐怖によって日常生活が制限されている状態です。

この疾患は、「精神疾患で三番目に多い性格の問題だと誤解されやすい症状です。このことで、医療機関を受診する人が少ない(3割程度)という特徴があります。

適切な治療を受けずに改善するのは、全体の3割程度

この疾患に関連する労働損失額は、年間で一兆円を超えると推定されています。本邦の経済状況に多大な負担を与えているのも、また事実のようです。

抗うつ薬を用いた薬物療法は、社交不安症に対する標準的な治療法として世界的に最も普及していますが、抗うつ薬の治療では多くの患者(7~8割)が十分な改善を示さないことが課題として指摘されています。

次の有効な治療法を確立していく必要がある

チームは、欧米で有効性が実証されてきた精神療法である認知行動療法(※)について、国内での効果検証を進めてきました。

その過程で、「抗うつ薬で改善を示さない社交不安症患者であっても、認知行動療法により症状が改善される」という予備的な知見を得ています。

※認知行動療法とは…時間限定的・現在焦点型・目標志向型の精神療法。
人が抱える生活上の問題について、「認知(ものの受けとり方や考え方)」と「行動」に働きかけながら、困りごとから抜け出す方法を探していく。

■ 今回の研究対象

・1剤以上の抗うつ薬治療を受けたにもかかわらず、症状が改善しなかった社交不安症患者

かかりつけ医による薬物療法を中心した通常治療を継続した場合(通常治療のみ行なう群)と、通常治療に認知行動療法を併用した場合(認知行動療法を併用する群)で、社交不安症状の改善に差がみられるか、16週間 検証した。

■ 研究の方法

・通常治療のみを行なう群21名、認知行動療法を併用する群21名

・介入期間は両群とも16週間

認知行動療法は、千葉認知行動療法士トレーニングコース(千葉大学主催)を修了した 7名の治療者が、週 1回 50~ 90分の治療面接を計 16回実施しました。

結果、通常治療のみの群において、1名が抑うつ症状の悪化により 研究から脱落し、認知行動療法を併用した群では全員が治療を完遂しました(脱落者なし)。

16週間の介入期間を経て、主要評価項目の社交不安に対する尺度表は、通常治療単独群において変化がなかったのに対し、認知行動療法併用群では顕著な改善を示しています。

・通常治療のみの群…治療反応率 10%、寛解率 0%

・認知行動療法を併用した群…治療反応率 85.7%、寛解率 47.6%

抑うつ気分の重症度や、生活障害度などの項目においても、認知行動療法を併用した群の優越性を支持する結果となっています。

これらの結果から、標準治療となっている抗うつ薬で改善しない社交不安症患者に対して、認知行動療法をおこなうと顕著な改善が期待できることが明らかになりました。

この研究成果の三大ポイント

・世界で初めて、抗うつ薬など、通常治療に認知行動療法を併用することの有効性が明らかになった。

・本成果を受け、2016年度の診療報酬改定において「認知行動療法」の対象疾患に社交不安症が加わった。

・国内での活用のみならず、国際的な社交不安症の治療ガイドラインの改定など、世界の標準治療に貢献するなどの活用に向けた貴重なデータになることが大いに期待される。

成果は、欧州医学雑誌のPsychotherapy and Psychosomatics誌に 5月27日付(日本時間)で、オンライン速報版が掲載されています。※ 本研究で作成・使用された「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(執筆:吉永尚紀、監修:清水栄司)」に従って治療が実施された場合に限り、診療報酬を算定できる要件となっています。

マニュアル・インデックス

1、安全行動と自己注目が、不安を強めていることに気づく

◎理論背景

安全行動は、最悪(破局的)な事態を防ぐために用いられる。しかし実際は、反証の機会を失い、不安が持続する。安全行動のモニタリングにより自己注目が高まる、また、安全行動をおこなうことで、他者はより一層、患者の不安症状に気づきやすくなってしまう(不安症状も生起しやすくなる)という問題に繋がっている。

2、 「否定的な自己イメージ」と「客観的に見た現実的な自分の姿」の違いに気づく

◎理論背景

他者のような外的世界を観察して得られる外的情報ではなく、自分の身体反応や不安感情、自分の頭に浮かぶ自己イメージや自動思考などの、いわゆる内的情報に基づいて、自分が他者にどう映っているかを推論していることが多い。

つまり、自分の身体感覚と不安感情などを材料に自己イメージを構築するため、「自分がこんなに不安と感じ、こんなに震えを感じているから、他者からも、さぞや不安そうに震えているように見えるに違いない」と、現実の姿よりも過大に、否定的な自己イメージを形成している。

3、自分自身(内部)への注意の偏り(バイアス)を減らし、外部へ向けさせる

◎理論背景

自分の安全行動の遂行具合、不安感情、身体感覚、自動思考などの自分自身の内部情報をモニタリングすることによって、注意が自分自身に向いてしまう場合が多い(注意の内的シフト)。

そのため、患者は他者の反応(ポジティブにしろ、ネガティブにしろ、現実の他者評価)に気づくことができない。

4、特定の予測が実際は起こりにくいことを発見し、ありのままの自分でも他者に受
け入れられることに気づく

◎理論背景

安全行動や回避を続けてきたことにより、脅威的な結果が実際に起こるのかを検証する機会を失ってきた。行動実験の目的は、社交場面において患者の持つ特定の予想(認知)を実験することである。

そして、患者の信念を反証するための証拠を収集し、自分がありのままでも受け入れられるという気づきを得ることが全体的な目的である。

5、恐れている最悪な事態や、否定的な予測が実際に起こったとしても、必ずしも他者が同じように否定的な解釈をしないことに気づく

◎理論背景

行動実験を通して、社交場面において患者の持つ特定の予測を実験し、患者の信念を反証するための証拠を収集することで、恐れていることが実際には起こりにくいことを発見できたはずである。

その一方で、患者が恐れている最悪な事態が起こったとしても(震えやどもりなどの不安症状が相手に気づかれる)、他者が否定的に評価するとは限らない。つまり、他者の基準や見方を査定する必要がある。

6、物事の前後で繰り返し考えること、やってしまうことのデメリットに気づく

◎理論背景

自分がどのくらい上手く振る舞えたとか、他者から見てどうだったかということについて、はっきりとしたフィードバックを受けることは滅多にない。このため、患者は社会的な交流が終わった後でくよくよ考えるのである。

後から考えることで、否定的な自己イメージはさらに悪化し、不安はさらに高まることになる。また、社会的な失敗に関する現実には存在しなかった誤った証拠を記憶してしまうのである(感情のバイアスにより過誤記憶が形成される)。

7、繰り返されるイメージと、過去の記憶に振り回されないようになる

◎理論背景

トラウマティックな過去の出来事が、現在の破局的な自己イメージと結びついたり、否定的な信念やスキーマの形成に発展することがある。
過去のトラウマ記憶の体験のような他者からの反応が、現在の自分にも起こるかのように感じることがある(フラッシュバック)。

それは、患者が過去の限られた情報でしか、現在の出来事を処理できていないためである(情報と記憶のバイアス)。そのため、患者は大人としての自分の視点や、認知行動療法を通して得た新たな視点から、トラウマ記憶を更新する必要がある。

出典:

世界初。抗うつ薬が効かない社交不安症を認知行動療法が改善

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