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リラックスのもとは好きなものに正直でいること。例えば「純喫茶」はいかがでしょう?

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社会人になって感じた変化

東京喫茶店研究所二代目所長の難波里奈と申します。純喫茶が好きで、全国のお店を巡っています。

さて、学生から社会人になったことを一番実感するのは、どんなときでしょうか? 例えば、一日に規則正しい時間の流れができあがり、自由に過ごせる時間の少なさを感じたときではないでしょうか。今まで当たり前のように訪れていた場所も、だんだんと疎遠になってしまって寂しい思いをすることもあるでしょう。

私もそうでした。例えば学生時代からはじめた純喫茶巡りも、かつては遠くの街であっても好きなときに訪れることが可能でしたが、社会人として日中働いている今は自由に出掛けられるのは仕事が終わった夜か休日のみ。元気があるときは良いですが、疲れてしまった週末はどこかへ行きたくともなかなか布団から起き上がることができず……。気持ちと体が上手くかみ合わないことも多々あります。

皆さまはいかがでしょうか? 私の場合、そんなときは無理に遠出せず「近くの純喫茶へ行ってゆったりとコーヒーを飲む」ことで随分と気持ちがやわらぐことが分かりました。昔に比べると遠くまで足を運ぶことは難しくなりましたが、近所であってもいつもと少し違う空間にいるだけでリフレッシュできます。私にとって、その空間が純喫茶なのです。コーヒー一杯は高くとも500円~600円。電車賃と合わせても1,000円あればいつでも寛ぐことができます。

仕事から離れた場所を持つことの良さ

「純喫茶では何をして過ごせばいいのでしょうか?」

そんな質問を受けることがたまにあります。私は、「過度ににぎやかにしない」「足を投げ出して座るなどして周りの人に迷惑をかけない」など常識的なマナーを守っていれば、基本的には自分のスペース内で好きなように過ごして良いと思います。その上で、私が純喫茶で行うことはだいたい3つです。

“意識的”にぼんやりして過ごす

1つ目は「ひたすらぼんやりする」です。これは言葉通り、本も読まず、携帯電話も開かず、ただ流れてくる音に耳を傾けて食べたいものや飲みたいものを注文して気が済むまでのんびりします。叶えたいことをひたすら妄想したり、会いたい人を思い浮かべたり……。もし仕事のことなどで悩みがあったとしても、周りから自然と聞こえてくる話から、皆それぞれにいろいろな人生があって、楽しいことも大変なこともたくさんあるなと。ありきたりな方法かもしれませんが、ネットで見かける情報とは違う生の会話から、決して自分だけが悩んでいるのではないと少し気持ちが軽くなるのです。何も考えたくないときでも便利な時代である現代では、無意識のうちにたくさんの情報を受け取り、それに影響されて疲弊することもしばしば。そんなときに、純喫茶は「“意識的”にぼんやりできる有意義な場所」なのです。

雑誌や漫画を読んで自分だけの世界に浸ることも

2つ目は「置いてある雑誌や漫画をひたすら読む」ことです。週刊誌はその真偽は別にしても、今世の中で注目されていることはどのようなことなのか、普段流行りに疎い自分に刺激を与えることができます。小さな文字を読む気力がないときは、現実には起こりえないような漫画でその世界を単純に楽しみ、現実に近いような話の場合はこんな出来事もどこかで起こりうるかもしれないと想像して楽しんでいます。

時には店主と会話を楽しむ

3つ目は「マスターやママとの会話を楽しむ」ことです。話す内容はたわいもない世間話のときもあれば、だんだんと深い話になって気が付けばマスターの生い立ちから現在に至るまでの壮大なドラマを聞くこともあります。いつもにこにこと穏やかな笑顔を見せる人たちの意外な一面に驚くことがあるのも楽しいものです。また、困ったときや悩んでいるときに家族や親しい友人に相談することももちろん有効ですが、知らない街でふらりと入ったマスターを前に「もしかしたら一期一会でもう二度と会わないかもしれない」という気持ちを持つことで、大胆に打ち明けることもできます。純喫茶の店主たちは日々たくさんの人を迎え入れている「人と接するプロ」ですから、どんな話題でも困った顔をせず、真摯に受け止めて下さる方が多いのです。

実際に私も何度か救われてきました。例えば、いろいろなことが積み重なり、出口が見えず挫折してしまいそうだった頃。その時によくお邪魔していた純喫茶のマスターは、話をひと通り聞いた上で「まあ、大変だねえ。でもあなたなら大丈夫だよ」と言って、とびきりの笑顔をくれました。そう、私がほしかったのは細やかなアドバイスではなく、そんなふうに温かく包み込んで見守ってくれる優しさだったことを見抜いた上のやり取りだったのかもしれません。

「悩んだときはまたおいで」と帰り際に笑って送り出してくれるマスターたちに、いつも助けられています。決してべったりする関係ではなく、その場の空気をくみ取った上での適切な接客と、つかず離れずの距離がちょうど良いのです。また、一人で訪れても周りに必ず誰かがいるので、完全に孤独な空間ではないこともちょうど良いのかもしれません。たとえ会話がなくとも、誰かがいる気配というのは温かいものです。

自分の好きなものに正直でいる

純喫茶巡りをするようになってプライベートや仕事の面でプラスだったことがあります。それは、いろいろな世代の方と話をすることによって人見知りを克服し、話題の幅が広がり、さまざまな視点から物事を見られるようになったことです。同じ世代の友人と話すことももちろん有意義ですが、今では純喫茶で出会う人たちとの会話で得られることも多いです。さらに、10年以上前は純喫茶巡りという趣味を共有する人が周りに少なく、素晴らしい空間を見つけても自分の中でひっそりと愛でることが多かったのですが、最近ではじわじわと純喫茶の虜(とりこ)になる方が増えてきているように感じます。このことはとても嬉しく思います。古き良きものをいつまでも大切にしていきたいです。

何かと追われるように慌ただしく、全てが思い通りになるわけではない毎日。私の場合は気持ちに隙間を作ってリラックスし、次の日もがんばろうと思える大切な場所が「純喫茶」でした。皆さんも息抜きできる場所がそれぞれにあることと思います。もし、まだ見つかっていない方や、純喫茶が少しでも気になるという方がいらっしゃいましたら、見つけた店の扉を思い切って開けてみませんか? 「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれるマスター、ほっとする温かいコーヒー、読みはじめると続きが気になる漫画たち……。いつの間にか夢中になってしまうかもしれません。

心も体も元気に暮らすには「自分の好きなものに正直でいること」が秘訣なのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も純喫茶を巡ります。

写真撮影:難波里奈

著者:難波里奈

東京喫茶店研究所二代目所長。東京生まれ・東京育ち。現在、日本橋に勤務の会社員でありながら、仕事帰りや休日にひたすら訪ねた純喫茶は1600軒以上に。その後も、東京を中心に全国の純喫茶を巡り、ブログ「純喫茶コレクション」に店内の様子や訪問時の記録を綴っている。2012年には、初の著書『純喫茶コレクション』(PARCO出版)、2015年夏には『純喫茶へ、1000軒』(アスペクト)上梓。そして、2016年7月19日に新刊『純喫茶、あの味』(イースト・プレス)が発売となる。純喫茶の扉を開ける瞬間が至福のとき。純喫茶の魅力を広めるためマイペースに活動中。

Twitter:@retrokissa

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