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会社員→松乃鮨4代目「当たり前でないサービスを」

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家業を継ぐことになった元サラリーマンは、どんな心境で、どのように会社員としての経験を生かしているのだろうか? 海外でスキーガイドとして3年間の会社員生活を送った後、現在は実家である「松乃鮨」の4代目として日々カウンターで寿司を握る手塚良則さんに聞いた。

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■「当たり前」のサービスでは足りないから「特別感」が必要

「お昼食べましたか?」さらりと尋ねる手塚さん。取材後にいただいたお寿司は、既に昼食を済ませていた取材者でも食べきれるよう、ごく小さなシャリで握られていた。そんなサービス精神は、サラリーマン時代の経験も生きている。

「スキーガイドも寿司店も同じサーピス業です。人を喜ばせることは共通していて、『スキー』と『寿司』というツールが違うだけ。生かせることはたくさんあります。例えば、ツアーではホテルの清潔な部屋が用意されていて、スムーズにスキー場に行けることが当たり前。ところが、お客様の誕生日に花束をプレゼントしたらすごく喜ばれます。本当はホテルや飛行機を手配したりするほうが大変なのですが(笑)。寿司店も同じで、仕込みが非常に大事なもののお客様からは見えません。おいしくて当たり前のなか、当たり前でないサービスをいかに提供できるか。シャリの大きさやお茶の温度など、お客様の好みに合わせるのはその一つです」

好みに合わせるだけでなく、1人ひとりに「特別感」を持ってもらうことも大切だ。初めての客でも常連客と差別せず、かつ常連客には自分が特別だと感じてもらわなくてはならない。

「寿司職人はお客様の前で握ります。それがほかの飲食業とは違うところ。僕は、一番おいしい料理は母親が握るおにぎりだと思っています。寿司は母親のおにぎりに近いものがある。食べる人を思って、ネタやシャリの大きさを変えて握るんです」

■“寿司”を通じて海外との懸け橋に

朝早くから築地の市場へ出かけてネタを仕入れ、夜は客が求めれば深夜まで付き合う。忙しい合間に、別の活動もしているという。

「別の会社を立ち上げて、外国人向けの海外出張サービスを企画しています。海外のお客様がプライベートパーティーなどをする際に呼んでいただくのです。先日は築地でネタを仕入れてその日の夜に飛行機に乗り、ロスまで行きました。同行した妻が着物を着てサーブし、僕は英語で寿司の文化をお伝えしながら握ります。寿司に合わせて日本酒を持参することもありますし、ソムリエの資格を生かしてワインをご提案することもあります」

ほかにも、留学生向けに寿司講義の開講や、海外からの観光客向けの築地案内ツアー、2015年のミラノ万博で寿司を握るなど、サラリーマン時代に培った英語力と海外経験を生かし、多彩なフィールドで活躍している。

■“オンとオフの切り替え”はサラリーマンの特権

サラリーマン時代にはやりたいことをやり、後悔はないという手塚さん。ただ、サラリーマン時代にしかできないこともあると考えている。

「自営業では24時間仕事のことを考えていますが、サラリーマンはオンとオフがはっきりしているのが一つのメリットだと思います。オフの時間で、将来のために時間を使えます。できれば、趣味など人間的に豊かになれることに時間を費やしたほうがいいのではないでしょうか。会社ごとにそれぞれ文化があるので、仕事ばかりだと良くも悪くも染まってしまう傾向があります。余暇の活動を通じて、いくつかのコミュニティを持っておくことが大事だと思います」

複数のコミュニティに属することで、会社だけに染まらずに、文化の異なる人ともわかり合える。その経験は、職場や職種が変わっても普遍的な力として役立つはずだ。

今後は、外国人向けサービスをさらに展開したいという手塚さん。数年後には、知識や経験、技術にさらなる磨きをかけ、日本の食文化を海外に発信する立役者になっているかもしれない。

(栃尾江美/アバンギャルド)
(R25編集部)

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※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
※一部のコラムを除き、R25では図・表・写真付きのコラムを掲載しております

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