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よなよなエール・井手社長語る「40歳でやっと天職に」

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クラフトビール「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイング。代表取締役社長の井手直行氏は、電機メーカー、環境アセスメント会社、広告代理店と、異色のキャリアを歩んできた人物だ。キャリアアップという視点にとらわれず、「やりたいこと」を諦めずに追い求めた仕事人生。その言葉は、行く末を読みづらい時代のキャリア形成に悩む会社員に、勇気を与えてくれる。

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●「ヤッホー」に入社するも「つまらなかったらすぐ辞めます」

社長になるような人物は若くして野心を持ち、寝食を忘れてバリバリ仕事に取り組むようなイメージ。ところが、井手氏は若かりし頃の自分を「まあ、いい加減でしたよ」と評する。

「20代・30代の頃は、そんなに真剣に生きていなかったんですよ(笑)。転職を繰り返すことにも、特に不安はなかった。最初に勤めた中堅の電機メーカーを20代半ばで辞めた後は、仕事も住む場所も転々としていました。プータロー時代もあるし、バイクで北海道を放浪したり、パチンコで生計を立てていたりしましたね。ヤッホーブルーイングも星野リゾートの星野社長がビール事業を始めるときに誘われて、面白そうだから入ったんですが、『とりあえず3年はいますけど、つまらなかったら辞めますから』なんて生意気を言ってました」

今思えば「大したキャリアがなかった」からこそ、職や生き方を変えることへの躊躇もなかったと振り返る。

「唯一キャリアと呼べそうなのは、電機メーカー時代のエンジニアとしての経験が5年。そんなの、べつに大したスキルじゃない。だからこそ新しいことに挑めた。つまらない仕事をやり続けるのがいやだったんです。今でこそ天職と呼べる仕事に巡り合えましたが、20代から30代半ばまでそれをずっと探していた感じですね。ずいぶん遅咲きですねって、よく言われるんですけど(笑)。でも、自分は何がしたいかをしつこく追い求め続けていれば、誰しもいつかは見つかると思うんです」

●「もう釣りをして過ごそう」 諦めかけたとき、どう立ち直った?

“30オトコ”は、転職に踏み出しにくくなる時期。ひとつの道に落ち着きたくなるのが普通だろう。

「それをいうなら、僕なんて今の会社に入ったのが29歳。しかも3年で辞めますよ、なんて調子に乗っていたわけですから。心を入れ替えたのは37歳の時。地ビールブームが去って、酒屋でもスーパーでも『よなよなエール』を取り扱ってもらえなくなりました。会社の業績も右肩下がり。僕は営業の責任者の立場でしたが、社員は次々と離れ、残った人との関係もギスギスして、ひどい状態が続いていたんです。でも、そこまで落ちて初めて、本当に一生懸命やろうと思えた。社長(当時)の星野にも報告せずに勝手にインターネット販売を始めて、とにかく必死でしたね。ネット販売の売上が上向き始めるにつれて仕事がどんどん楽しくなり、40歳を前にしてようやく天職だと思えるようになったんです。30歳なんて、まだまだ楽勝だと思いますけどね」

その後、2008年に井手氏が社長に就任してからは増収増益続き(現在まで11年年連続)。ヤッホーブルーイングは売上日本一のクラフトビールメーカーとなったわけだが、ドン底時代は諦めかけたこともあるという。

「星野に泣きながら電話して、『どうしたらいいか分からない、もう耐えられない』と話しました…。そうしたら『本当にとことんやったのか? まだやれることがあるんじゃないか』と。続けて『本当に駄目だったら、会社を畳んで二人で(星野リゾート内に流れる)湯川の渓流で釣りをして過ごそう』と言われたんです。釣りは僕の趣味で、星野はやったことないんですけど、彼なりの優しさで背中を押してくれたんですね。その言葉で、とことんやろうって思えました。

経営者として尊敬する星野が諦めていないなら、まだチャンスはあるのかもしれないと。僕も人生のすべてをこのビール事業にかけてみよう、大げさかもしれませんが本気でそう思った。腹をくくったら、目の前の景色が変わりました。本当に諦めなくてよかったですね。とことん落ちても、諦めずにいる限りは失敗したことにはなりませんから」

(榎並紀行/やじろべえ)井手直行(いで・なおゆき)
1967年、福岡県生まれ。コンピューター周辺機器のエンジニア、環境アセスメント会社、長野の広告代理店営業などを経て、1996年「ヤッホーブルーイング」に創業メンバーとして参加。2008年、代表取締役就任。社内でのニックネームは「てんちょ」。著書に『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります―くだらないけど面白い戦略で社員もファンもチームになった話』(東洋経済新報社)「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」…。ズラリと並んだ個性的な缶たち
(R25編集部)

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※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
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